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朱狐
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東京都郊外。かつて工業地帯として栄えたものの、今では深い廃墟と化した工場群。 夜の闇が重く垂れこめる中、その敷地全体を異様な圧迫感と湿り気のある呪力が包み込んでいた
神代翠
高専の制服姿で立ち止まった神代翠は、呆れたように息を吐きながら首を左右に鳴らした。 ハイネックの衿元から覗く首筋に、冷たい夜風が吹き抜ける。翠は手に巻いた医療用包帯の結び目を口で解き、指先でギュッと締め直して戦闘態勢を整えた
そのすぐ隣。背中から大きな黒い刀ケースを外し、静かに刃を抜いたのは乙骨憂太だった。 研ぎ澄まされた刃が月光を反射して青白く輝く。乙骨の瞳には、いつもの気弱な面影はなく、特級呪術師としての冷徹な鋭さが宿っていた
乙骨憂太
そう言って、乙骨が前に踏み出そうとしたその瞬間―― ひょいと伸ばされた華奢な手が、乙骨の白い制服の肩を軽く掴んで引き留めた
神代翠
乙骨憂太
引き留められた乙骨は振り返り、困惑と焦りを混じらせた瞳で翠を見つめる。 しかし翠は、くすっと挑発的に笑ってみせると、掴んでいた肩をぽんと叩いて横に並び立った
神代翠
その瞬間、翠の全身から放たれた呪力の密度が一変した。 だるそうだった雰囲気が吹き飛び、数々の死線を潜り抜けてきた1級呪術師としての洗練された圧が場を支配する。その気配の変貌に、乙骨は思わず息を呑んだ。
神代翠
乙骨憂太
二人は示し合わせたかのように、同時に地を蹴った。
ドカァン―――っ!!
工場の大扉が内側から吹き飛び、闇の中から無数の異形呪霊たちが這い出てくる。無数の目や腕を持つ、禍々しい異形の群れ。 しかし、その前に立ちはだかったのは圧倒的な戦力だった
乙骨憂太
乙骨の叫びに応え、背後の空間が裂けて巨大な怨霊・リカが顕現する。 リカの巨腕が一振されるだけで、数頭の呪霊が肉塊となって壁に叩きつけられ、消滅していく。乙骨自身もまた、呪力を纏わせた刀で流れるような斬撃を繰り出し、群れを切り裂いていった。
神代翠
少し離れた位置で、翠もまた無数の呪霊を相手に立ち回っていた。 長い脚をしなやかに跳ね上げ、襲いかかる呪霊の顎を蹴り上げる。打撃のインパクトの瞬間にのみ呪力を集中させる効率的な体術
だが、死角から忍び寄る影があった。 崩れた天井の隙間から、特級未定型の巨大な蜘蛛型呪霊が、無防備な乙骨の背後を目がけて超高速で毒針を突き出そうとしたのだ
神代翠
乙骨憂太
反応がコンマ数秒遅れた乙骨の視界に、一直線に割り込んできたのは翠だった
神代翠
翠は流れるような動作で呪霊の毒針を拳で払い落とすと、そのまま相手の懐へと深く潜り込む。 逃げ場を失った呪霊が威嚇の声を上げた瞬間、翠は右拳を呪霊の胸腔へと叩きつけた
あえて力を逃がさず、自分の拳の骨にもわずかな反動負荷(自傷リスク)を受ける距離感。 その瞬間、翠の全身に黒銀の呪力が脈動する
神代翠
ドツンッ―――!!
重苦しい衝撃波が空間を跳ねた。 翠の拳にかかった極小の負荷と痛みが『因果の起点』として増幅変換され、そのまま呪霊の内部へと全開放される
グシャアアッ――!!
外傷一つなかった巨大呪霊の内臓と呪力経路が、内側から爆破されたかのように破裂。黒い体液を撒き散らしながら、一瞬で塵となって消滅した
乙骨憂太
鮮やかすぎる体術と、自身にかかる僅かな代償すら破壊力に変える完璧な術式運用。 乙骨は目を奪われつつも、すぐさま翠の背中を守るように背中合わせで刀を構え直した
神代翠
乙骨憂太
背中を預け合う二人。洗練された技量と経験で魅せる4年の翠と、圧倒的な呪力と過保護な集中力で死角を消し去る2年の乙骨。 二人の息の合った共闘は、まさに敵にとっての絶望そのものだった。
広場に群がっていた呪霊たちは、わずか数分のうちに全滅へと追い込まれていく。 だが――すべての残党を一掃し、ふっと空気が緩んだまさにその瞬間
崩れた瓦礫の深い闇の陰から、潜伏していた呪詛師が解き放った『暗殺の呪詛針』が、無防備な乙骨の首筋を狙って音もなく射出された――
コメント
1件
おお、2話も読み終わったわ! 翠先輩と憂太の共闘、めっちゃ熱かった🔥 「前衛と後衛なんて生ぬるい分け方はナシ」って並び立つとこで痺れたわ。それに『傷代弁』の仕組み、自傷リスクを火力に変換ってコンセプトが好みすぎる。わずかな代償を増幅してぶち込むとか解像度高いわ~。暗殺の呪詛針で終わる伏線も気になるし、続き待ってる!