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異常心理犯 VS 未来視探偵

第2話 - 異常心理犯 VS 未来視探偵第2話 -理想の女2-

229

2021年06月26日

#ミステリー

#サスペンス

#殺人

田中静人

恭一

（近い未来、白村は殺される…！）

拓

だ、大丈夫か？

拓

顔が真っ青だけど…

恭一

あ、ああ、すまん…

恭一

ちょっと気分悪いから保健室行くわ…

拓

じゃあ俺も行こうかな

恭一

な、何でだよ

拓

ちょっと俺も用があってね

恭一

…………

拓

失礼しまーす

保健室には、養護教諭の能美がいた。

能美

あら、どうしたの？

拓

コンタクト変えに来たんです

拓

それより高山くんが体調悪そうなんです

能美

あら、大丈夫？

恭一

少し横になれば治るかと…

能美

それなら、ベッドが空いてるから

恭一はベッドに横になり、カーテンを閉めた。

恭一

（白村の奴、コンタクトを変えるために保健室に？）

恭一

（何でわざわざ…？）

恭一

（まあ、今はそんなことより…）

恭一

（さっき見えた、あいつの未来だ…）

『未来視』

それが、恭一の持つ能力だ。

対象に触れることで、その人の未来を見ることができる。

ただし、触れるときは『素手』でなければならない。

恭一

（不意の未来視発動を避けるため）

恭一

（普段は手袋をしているが…）

恭一

（手を洗ったタイミングだったからな…）

未来視は万能ではない。

『いつ、どこで』のように、

見たいタイミングを指定することはできないのだ。

恭一

（これまでの経験から…）

『対象の感情が、大きく動く瞬間の近未来』

恭一

（それが見えることが多い）

恭一

（つまり近い未来、白村は何者かに刺し殺される…）

能美

コンタクト変えたなら教室に戻りなさい

拓

もう少しいいじゃないですかー

拓

先生ともう少し一緒にいたいなーって

能美

先生をからかうのもホドホドにしなさい

能美

ほら、さっさと出てって

拓

はーい

恭一

…………

恭一

（白村拓は、頭も良いし、人当たりも良い）

恭一

（軽薄な感じはするが、悪い奴じゃない）

恭一

（何より、さっき俺を助けてくれた）

恭一

（可能ならば、死なせたくない）

恭一

（だけど…）

『お前は近い将来、殺される。注意しろ』

恭一

（そんな忠告、信じてもらえるはずがない）

恭一

（信じてもらうには）

恭一

（俺の未来視を明かす必要がある…）

恭一

（でも、それだけは絶対にできない）

恭一

（俺の能力は、工夫次第で大金を稼ぐことができる）

恭一

（この能力が世間に知れ渡ったら）

恭一

（俺はもちろん、姉さんも危険に晒すことになる）

恭一

（能力を明かすことなく）

恭一

（あいつを助けることはできるか？）

1時間後

恭一

（ダメだ、思い浮かばない…）

能美

どう、体調は良くなった？

恭一

えっと、はい…

能美

あんまり良さそうじゃないね

恭一

その、悩んでることがあって

能美

私で良かったら相談に乗るけど

恭一

──俺が行動しなかったら

恭一

ある人が大変な目に遭うんです

能美

ふむふむ

恭一

だけど事情があって、行動することはできません

恭一

このままだと、その人を見捨ててしまうことになる

恭一

それで、悩んでいるんです…

能美

なるほどねー

能美

詳しい事情がわからないから

能美

はっきりしたことは言えないけど

能美

私のモットーを教えてあげる

能美

悩んだら即行動、立ち止まるべからず

恭一

つまり、とにかく動けと…

恭一

（それはできない）

恭一

（俺も、姉さんも危険になるから…）

能美

何もせずに後悔するより

能美

必死にあがいて失敗するほうが後悔は少ないよ

能美

私も、そういう経験あるからさ…

能美

だから、頭を必死に働かせて

能美

最善の道を選びなさい

放課後

恭一

白村、ちょっといいか

拓

拓でいいよ

拓

俺も恭一って呼ぶからさ

恭一

何でだよ

拓

俺たちもう友だちだろ？

恭一

（このコミュ力おばけめ…）

恭一

まあいいや──拓

恭一

ちょっと話がある

拓

なんだい、恭一

恭一

お前、ヤベーことに首突っ込もうしてないか

拓

えっ

拓

恭一、君はもしかして

拓

未来が見えるのか？

恭一

なっ──

恭一

（まさかバレた！？）

拓

なんてな

拓

そんなのありえないよな

恭一

（ビックリさせやがって…）

拓

実はな、連続バラバラ殺人について調べてるんだ

恭一

！

恭一

何で素人のお前がそんなことを？

拓

将来、探偵になりたいからだ

恭一

何だよ、それ…

拓

冗談じゃないぜ

拓

それに兄貴が県警の刑事でさ

拓

『女子生徒連続バラバラ殺人』についても捜査中なんだ

拓

俺って天才だろ

拓

兄貴に事件の概要を聞いて

拓

何度も助言してきたことがあるんだ

拓

それがけっこう解決に繋がってね

恭一

（そんなマンガみたいな話、現実にあるのか…）

拓

今回の事件、犯人も賢いみたいで

拓

中々尻尾を掴ませない

拓

そこで、将来探偵を目指す俺の出番ってわけだ

恭一

（なるほど、わかってきたぞ）

恭一

（拓は今回の事件の犯人に殺されるんだ）

恭一

（あのとき見えた部屋には）

恭一

（包丁とか、のこぎりとかあったからな）

恭一

（この事件の被害者はすべて若い女性だから）

恭一

（拓がターゲットにされたわけじゃない）

恭一

（きっと、こいつは実際に犯人を特定してしまい）

恭一

（そのせいで殺されるんだ…）

恭一

（やっぱりこいつは、ただ者じゃない…）

恭一

事情はわかった

恭一

だけど、今の拓は一般人、ただの高校生だ

恭一

危険なことはすべきじゃない

恭一

──このままだと、拓は殺される

恭一

俺の予感は、当たるんだ

恭一

（頼む、思い留まってくれ…！）

拓

心配してくれてありがとな

拓

でも、俺はやめない

恭一

何でそこまでするんだ！

恭一

犠牲者はお前の知り合いか？

拓

そういうわけじゃない

拓

困ってる人、悲しんでいる人がいたら助ける

拓

悪い奴がいたら懲らしめる

拓

俺は、そんな人間になりたいだけさ

恭一

その結果、自分が殺されてもか？

拓

殺されるのは、勘弁だ

拓

でも、覚悟はできてる

拓

正義を執行するには、危険が伴うからな！

恭一

（キラキラした目で語りやがって…）

恭一

（生半可な説得じゃ無理だ…！）

恭一

（やっぱり、見捨てるしかないのか──）

拓

それじゃ、俺は犯人を追う！

拓

またな、恭一

恭一

あ、ああ…

恭一

（またな、か…）

恭一

（もしかしたら、『また』はないかもしれない…）

悩んだら即行動、立ち止まるべからず

恭一

（能美先生…）

恭一

（その言葉、信じます）

恭一

待て、拓！

拓

どうした？

恭一

（未来視能力を明かすことはできない）

恭一

（だけど拓を1人にしなければ）

恭一

（犯人に殺されることはないはずだ）

恭一

俺も、犯人捜しに協力する

拓

お、まじか！

拓

俺の助手になりたいんだな！？

恭一

調子に乗るな

恭一

俺も犯人を捕まえたいだけだ

拓

何でもいいさ

拓

よろしくな、恭一！

ひげ面の男

理想の女、理想の女…

男はブツブツ言いながら包丁を研いでいた。

男は壁に視線を向ける。

ひげ面の男

次のターゲットは…

そこにはたくさんの写真が貼ってあった。

ドスッ

男は写真に包丁を突き立てる。

そこに写っていたのは

白村拓だった。

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田中静人

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