テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

猫屋敷古物商店の事件台帳

一覧ページ

「猫屋敷古物商店の事件台帳」のメインビジュアル

猫屋敷古物商店の事件台帳

31 - 第4話 結末が分からないと死ぬ呪いの原稿 解決編【1】

♥

38

2025年11月29日

シェアするシェアする
報告する

千早

さて、この原稿ですが、ざっとまとめると以下のことが分かります。

千早

まず、A達5人は、誰かが死なないと出られない空間に閉じ込められている――という設定であること。

千早

食糧や水などはなく、いわゆる極限状態であるということ。

千早

そして、逆説的に誰か死んでしまえば、そこから出られるということ。

千早

物語は、この設定をベースに書かれています。

一里之

要するに、誰にでも動機はあるんだよな。

一里之

個人的な恨みとかは必要ない。

一里之

誰かが死にさえすれば、食糧や水のない空間から出ることができる。

一里之

きっと追い詰められたら、誰かを殺すという発想になるのは当たり前で、動機の点から犯人探しをすることはできない。

千早

――はい、一里之君の言う通りです。

千早

動機という点では、誰もが犯人になり得ると言えるでしょう。

千早

その辺りのことについては言及されていません。

それって結局、誰が犯人なのか分からないってことだよね。

情報が限定的すぎるせいで、犯人が絞れないんだよ。

斑目

おっと、その点について、ひとつ気づいたことがありますよ。

斑目

凶器となるであろうナイフについてです。

ここはやはり、刑事と一般人の差を見せてやらねばならない。

斑目は少しばかり得意げに続けた。

斑目

ナイフを見つける場面にいたのはEとA、そして後から来たCだけですよね?

斑目

Eがナイフをしまった後にやって来たBとDには、そもそもナイフの存在を知る機会がない。

斑目

そして、最初の場面でEが第三者に殺されたことは明らかにされているから、つまり犯人は凶器の存在を知っていたAかCということになりませんか?

千早

凶器の存在を知らなければ、そもそもEを殺害しようとは思い立たなかった――ということですよね?

千早

凶器を所持していたのはEですから、隙を見てそれを奪い、犯人は凶行に及んだ。

千早

そう考えると、Eがどこにナイフしまったのか――それを知ってる人物が怪しいということになりますね。

まぁ、ポケットにナイフをしまうのって、どうかと思うけど。

千早

して、斑目様――犯人は誰だと思いますか?

斑目は一度しまった財布を改めて取り出す。

斑目

当てたら査定料を値引きしていただけます?

千早

――検討はいたします。

斑目

(犯人はAかC――。確率で考えても、50%か。ここは当てずっぽうでいこう)

斑目

では、Aで。

千早

その根拠は?

千早

なぜ、そう思ったのですか?

斑目

え、いや――その、ただなんとなく。

斑目

け、刑事の勘ってやつですよ。

一里之

……こういうのが冤罪とかでっち上げるんだな。

う、うん。今時、刑事の勘って……。

斑目

そ、そこ!

斑目

ヒソヒソしない!

千早

つまり、根拠はないのですね?

斑目

はい――残念ながら。

千早

ここで重要となるのが、Eの残したダイイングメッセージなんです。

千早はそう言うと、猫のチョピを抱き上げた。

チョピは少し嫌そうに鳴いたが、まんざらでもなかったらしく、千早の腕の中で大人しくしている。

斑目

確か【犯人はEだ】みたいなメッセージですよね。

斑目

でも、どうして自分の名前を書き残したんでしょうか?

斑目

犯人の名前を書き残すこともできたでしょうに。

千早

実は、あのダイイングメッセージ……内容はなんでもいいんです。

千早

【吾輩は猫である】でも【猫はいいぞ猫は】でも、なんでも構わなかったのです。

一里之

え?

一里之

なんでも良かった?

千早

はい、なぜならダイイングメッセージは犯人によって隠蔽されてしまっているから。

千早

ダイイングメッセージの内容を知っているのは、Eの死の間際の描写を知っている読者と、それを足で揉み消した犯人だけなんです。

千早

つまり、A達がEの死体を発見した時、ダイイングメッセージはすでに隠蔽された後だった――と推測できます。

その部分は描写されてないからね。

一里之

でも、確かに冒頭でEのダイイングメッセージは隠蔽されてるんだよなぁ。

斑目

Eは生前、もし自分が殺されるようなことになったら、犯人の名前を書き残す――と明言していたはずですよね?

斑目

つまり、犯人はダイイングメッセージが残されることをあらかじめ知っていた。

斑目

でも――実際に書き残されたのはEの名前だったのだから、普通に考えたらダイイングメッセージを揉み消す必要なんてないんじゃないですか?

斑目

だって、それが万が一他の人に見られても【犯人はEだ】ってメッセージなんでしょ?

斑目

ならば、AやCが疑われることはない。

斑目

犯人にとって、このダイイングメッセージはマイナスではなくプラスなのでは?

斑目

わざわざ揉み消す必要なんてなくて、そのまま残しておいてもいいも思うんですが。

千早

その通りです。

千早

しかし、実際に犯人はダイイングメッセージを揉み消しました。

千早

これこそがEの残したダイイングメッセージだったんです。

千早

すなわち、犯人はダイイングメッセージを隠蔽せざるを得なかった人物である――そう伝えたかったのです。

――言ってる意味が分からないんだけど。

千早

では、例えを出しましょうか。

千早はそう言うと、いつものメモ帳に手を伸ばす。

千早

これから、私はこのメモ帳に、今回の査定料の金額を暗号で書きます。

千早

それがいくらなのかを、皆さんには考えていただきたいのです。

千早はメモにペンを走らせると、それを斑目達に見せる。

【◯⬜︎◯⭐︎⬜︎】

斑目

え――これですか?

千早

はい、しばらく皆さんで考えてみてください。

唐突に千早から出された暗号。

斑目達はしばらくメモと睨めっこをしていたが、しかし答えは見えてこない。

一里之

――駄目だ、ギブアップ。

全然、意味が分からない。

千早

――斑目様はいかがですか?

斑目

もう少しで答えが見えそうなんですがねぇ。

千早

いいえ……見えるわけがないんです。

千早

なぜなら、それは私が適当に羅列した記号で、それに意味なんてないのですから。

斑目

――はぁ?

一里之

でもこれ、暗号って。

千早

私が【暗号】だと言ったからこそ、皆さんはそれの意味を考えようとしました。

千早

これと同じことが、Eを殺した犯人にも起きたんです。

千早

Eが事前に【犯人の名前を書き残す】なんて言ったものだから、犯人はその場に書き残されたのが【自分の名前】だと思ったのです。

千早

だからこそ、揉み消した。

え、でも残されたメッセージは【犯人はEだ】というものだったんでしょ?

メッセージを見れば、自分の名前が書かれていないことは一目瞭然なんだし、揉み消す必要なんてなかったんじゃ――。

要の言葉に千早はメモを手に取る。

千早

でも、実際に現場に残されたものが、これと同じようなものだったら?

斑目

いや、暗号が残されたのであれば隠蔽しようと思いますが、実際に残されていたのは【犯人はEだ】というメッセージなんだから――。

千早

言い方を変えましょうか。

千早

Eが残したメッセージは、犯人にとっては、この暗号のように見えてしまった。

千早

すなわち、犯人はEが書き残したダイイングメッセージの意味を理解することができなかった。

千早

だからこそ、メッセージの内容など関係なく、ダイイングメッセージを隠蔽せざるを得なかったのです。

千早

Eが犯人の名前を書き残す――なんて宣言をしていたせいで。

一里之

でも、ダイイングメッセージを理解できない人間なんて――。

千早

答えを言ってしまいしょう。

千早

一里之君、もしこれと同じメッセージがハングル文字やアラビア文字で書かれていたら、内容を理解できますか?

一里之

いや、そもそもハングル文字とかアラビア文字なんて読めないし――。

斑目

あ、そう言うことか。

――なるほどね。

一里之

え?

一里之

なんかみんな理解した感じ?

えっとね、つまり犯人は――。

斑目

日本語で残されたダイイングメッセージを読むことができない【外国人】だったってことですよね?

千早

左様でございます。

千早

それらを踏まえると、ある人物が犯人像として浮かびます。

千早

Eを殺害した犯人――。

千早

それは――。

猫屋敷古物商店の事件台帳

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

38

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚