その日の朝、私は目覚ましで 強制的に起こされた。
制服に着替えて ダイニングへ行くと、
お兄ちゃんが コーヒーを飲んでいた。
一都
漫画の締め切りで 徹夜をしたのか、
その目の下には うっすらとクマが できている。
そして、頬には。
私がつけた傷痕が、 まだ消えずに残っていた。
架恋
……おはようを言う気には、 なれなかった。
それは、お兄ちゃんも 同様のようで、
ちらりとこっちを 見ただけで、黙って カップを口に運んでいる。
架恋
二人は、数日前から 旅行に出かけているのだ。
架恋
先生とデートした後、 お兄ちゃんに襲われ かけたのは、
金曜日のこと。
土曜日と日曜日、 そして祝日の月曜日。
私はお兄ちゃんと 一切、言葉を交わさずに 過ごした。
今日は平日の火曜日。 私は登校しなければならない。
――お兄ちゃんの横を 素通りして、玄関へと 向かう。
一都
架恋
私は足を止め振り返る。
お兄ちゃんは、相変わらず コーヒーを口に運んでいたけれど……
私が再び玄関に向かおうと したとき、マグカップを テーブルに置く音がした。
一都
お兄ちゃんはぽつりと、 まるで独り言のように 言った。
架恋
一都
一都
一都
お兄ちゃんは 私を見ることなく、 淡々と告げる。
架恋
架恋
一都
言い募るお兄ちゃんに、 私は何も言わせない。
架恋
一都
強引に会話を 打ち切って、勢いのままに 家を飛び出した。
架恋
架恋
架恋
バス停から降りて、 校門までの通学路を歩く。
一都お兄ちゃんのこと―― 血が繋がっていない とはいえ、
私は兄だと思っていた。
……だから、襲われたのは とてもショックだった。
だけど、先生とのことが 吹き飛んでしまうほどに、
心が重たくなって しまうなんて。
それに、なんだか――
架恋
架恋
――そんな気まで、 してしまう。
架恋
架恋
苑原
架恋
考え事をしながら ぼんやり歩いているうちに、
校門まで辿り着いていた。
門の脇に、苑原先輩が 佇んでいて、
少し離れたところには、 彼の取り巻きの姿もある。
苑原
苑原
架恋
苑原
苑原先輩は少し眉を下げて、 私に尋ねてきた。
架恋
苑原
架恋
架恋
架恋
お兄ちゃんが 心配するのは、わかる。
だけど先輩とは、 まだ知り合ったばかりの 間柄なのだ。
苑原
苑原先輩は曖昧に微笑んで。
だけど、ごまかすことは しなかった。
苑原
苑原
架恋
苑原
苑原
架恋
苑原
苑原
先輩は口の端を歪め、 自嘲気味に笑う。
苑原
苑原
架恋
苑原
苑原
苑原
架恋
私は、今までとは違った 感情を持って、苑原先輩を 見つめる。
……こんな風に、静かに――、
人の不幸な出来事を、 まるで自らの罪のように 語る人を……、
信じないでも、 いいのだろうか?
架恋
苑原
苑原
苑原
架恋
先輩の従妹の気持ちは、 今の私になら、理解 することもできた。
苑原
私の沈黙を どうとったのか、
苑原先輩は明るい声を 作って言った。
苑原
苑原
苑原
苑原先輩が話し終えたとき、 ちょうど予鈴が鳴った。
架恋
私は、目を伏せて 先輩に一礼してから、
自らの教室へ向かった――。
コメント
8件
続きが楽しみすぎてやばぁい!w