七華
私を殺して
栞理
……何言ってるの?
七華
そのまんまだよ
七華
栞理、私を殺して
栞理
……また、なにかあったの?
七華
別に
七華
なにかあった訳じゃないけど
七華
もう疲れたの
七華
生きることに
栞理
七華の事情は昔からよく知ってる
栞理
だけど七華、そう思った事は何度もあったでしょ
栞理
でも七華はそれに耐えて、今日まで生きてきた
栞理
今は疲れとか不安で、死にたいって思ってるかも
しれないけど
しれないけど
栞理
そんな風には思っちゃだめ
栞理
私ももっと七華を支えるからさ
栞理
だから……殺すなんてできない
七華
ねえ、人っていつ死んでも同じだと思わない?
七華
死なない人間なんていないんだよ?
七華
遅かれ早かれ、いつか死ぬ
七華
だったら、何のために生きるの?
七華
終わりが来るって分かってるのに
七華
何に必死になって何を信じて
七華
生きていけばいいの?
七華
どうせ死ねば全て無かったことになるでしょ?
七華
楽しいことも、嬉しいことも、面白いことも
七華
それなら生きていても無意味だよ
七華
ほらね?
七華
人は、いつ死んでも一緒
七華
なーんにも変わらない
栞理
そんなことない
栞理
だったら、七華が生きる意味は私が作る
栞理
私が七華の人生になる
栞理
だから生きてよ
栞理
辛いことも、一緒に背負うから
七華
七華
ごめん
七華
私、本当にもう限界みたいなの
七華
こんなに良くしてくれる栞理のことさえも
七華
鬱陶しいって思ったり
七華
捨てたくなる時がある
栞理
七華
疲れたの。
七華
苦しいの。
七華
物心ついた頃、家族を火事で失って
七華
初めてできた友達も病気で死んで
七華
立ち直らせてくれた恋人も事故で居なくなって
七華
恨まれてんのよ、私は、生きてるだけで。
七華
私はいっつも独りだった。孤独だった
七華
これ以上生きるのは、辛すぎるよ
七華
もう充分でしょ
七華
苦しみを味わうのは、勘弁して欲しい
七華
ねえ、お願い栞理
七華
殺して。殺してよ……
栞理
…………………………ダメ!
栞理
できない
栞理
七華を殺すなんて、できない!
七華
ずっっっっっっと独りだった私を
七華
そこまで必要としてくれる人は初めて
七華
だからね
七華
死ぬ時は栞理に見届けて欲しいの
七華
私の最期は栞理と一緒がいい
七華
こんな私でも、最期まで独りだった訳じゃないって
七華
この世に訴えたいの
栞理
そんなこと言わないでよ
栞理
私は七華を殺さない
栞理
殺せる訳ない
栞理
七華
栞理
私達はまだ18歳
栞理
これから楽しいことが沢山あるんだよ
栞理
今まで辛い思いしてきた分も
栞理
幸せになろうよ
栞理
いつか絶対、生きててよかったって思う日が
くるから!!
くるから!!
栞理
それを七華と見たい!!
七華
七華
るっさいな
七華
そういうとこがウザイんだよ!
七華
栞理に何が分かんの!?
七華
成績もトップクラスでオシャレで美人で
みんなから愛されてさ!
みんなから愛されてさ!
七華
いっつも誰かに守られて、
苦労したこともないくせに!!
苦労したこともないくせに!!
七華
こっちの苦労も知らないでニコニコニコニコ笑って
七華
人生に迷ったことも無くて
七華
これからもキラキラ輝くことが決まってるアンタに
七華
私の何が分かんの!!!!!!!?
七華
生きてて良かったと思う日が来る?
七華
はあ?
七華
いつだよ!
七華
いつ来るんだよ、それは!
七華
こっちはずっと待ってたんだよ!
七華
18年間、それを待ち続けた!
探し続けた!
探し続けた!
七華
でも何ひとつ、幸せの欠片すら見つからなかった!
七華
私は七華のことよく分かってるから
七華
とか簡単に言ってんじゃねぇよ!
七華
こんなしょうもない人生なんて
七華
アンタには一ミリも分かんないだろうよ!
七華
だからもういいんだよ!
七華
私は死ぬから!!
七華
殺せよ、殺せよ!
栞理
七華、ごめんなさい
栞理
私、てっきり七華の力になれてると思ってて
栞理
全然そんなことなかったね。
栞理
苦しくて残酷な世界に閉じ込めてただけだった
栞理
明るい未来、なんて綺麗な言葉つかって
栞理
知らない間に、七華を追い詰めていたんだね……
七華
七華
あ、違う、ごめん栞理
七華
栞理を悪く言ったんじゃない
七華
なんかもう、わかんなくなっちゃって
栞理
ねえ、じゃあ私たち、一緒に行こうよ。
七華
一緒にって……?
栞理
私も犠牲になる。
栞理
心中しよ……。
七華
な、何、言ってんの…
栞理
七華を追い詰めた罰。
栞理
私も七華と一緒に死ぬよ。
栞理
ごめん、七華を失った後に
栞理
今まで通り生きてく自信はない。
栞理
私も一緒なら、怖くないからね
七華
馬鹿なこと言わないでよ!
七華
私のくだらない理由で栞理まで巻き込みたくないよ!
七華
私はこれから生きててもきっと心の傷は癒えない
七華
だから死ぬの。
七華
だけど栞理は違うでしょ!
七華
お世辞じゃなくて、栞理はホントに凄いんだから!
七華
未来を生きていく権利があるの、栞理には!
七華
そんな素晴らしい人生を捨てて
七華
私について来ようなんて思わないで!
七華
もし栞理を巻き込んだら私
七華
生きた価値が本当にゼロになる!
七華
最期くらい、大切な人は守りたいの!!
この世に残したいの!!
この世に残したいの!!
七華
だから栞理は生きて!!
栞理
七華
栞理……
栞理
栞理
私、今、学校の屋上にいるよ。
七華
────!!
栞理
ごめんなさい七華
栞理
希望を与えることができなくて
栞理
私が先に死ぬから。
七華
ヤダ!!
七華
死ぬのは私だけでいい!
栞理
私たちは、最期も一緒。
栞理
私もこれから絶望を味わうから。
栞理
私の人生、めちゃくちゃにする。
栞理
七華
栞理……?
七華
栞理……?
七華
────嘘でしょ
七華
ホントに……行っちゃったの?
七華
やめてよ、栞理
七華
私、栞理の命まで奪ったの……?
七華
ごめん、ごめんね栞理
七華
私も今から、そっちに行くからね──
栞理へ。
ずっと黙ってたことを 栞理だけに教えます。
家族も友人も恋人も 不幸な死で失った話……。
あれは嘘。作り話。
私の大切な人はね
殺されたんだよ。
その真犯人は──