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バグ大 feat 特別企画

第20話 - 【もう一つの京炎戦争】久我虎徹の奔走続編(#2)

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2023年06月16日

#ヒューマンバグ大学

#バグ大

#リクエスト

#天羽組

#京極組

#CODE-EL

小湊早百合

久我虎徹

俺の名前は久我虎徹。

久我虎徹

抗争中という厳重警戒体制の中、

久我虎徹

今日も、最初のシマの見回りに出かけようとしている極道だ。

まだ万全とは言えない状態の六車の兄貴に代わって、

今回俺と共にシマの見回りに出向くのは、上杉の姉貴だ。

上杉玲

久我くん、今日は、駅前からパチンコ屋の間でいいのね?

久我虎徹

はい!

上杉玲

あそこには確か、格安のゲームセンターもあったわね…。

久我虎徹

ええ、あの、増田とか言う男の経営していたところですね。

上杉玲

シマ荒らしもそうだけど、

上杉玲

どこに敵の目が光っているかわからないから、

上杉玲

少しでも怪しいと思ったら報告してね。

久我虎徹

わかりました。

駅前から歩くこと数十分。経営者が代わって、今はすっかり様変わりしたゲームセンターに差し掛かる。

上杉玲

ここね…。

上杉玲

黒焉街の子供たちを手をかけた外道…。

上杉玲

あれは本当に許せない話だったわ。

久我虎徹

まったくです。

久我虎徹

奴を屠ったのは伊集院先生ですが、

久我虎徹

六車の兄貴が護衛の半グレを始末し、

久我虎徹

子供たちを親元へ返しました。

上杉玲

ええ、覚えているわ…。

上杉玲

あの子達が、深い心の傷に負けず、

上杉玲

優しさと、勇気のある大人になってくれればいいけど…。

久我虎徹

そうですね…。

久我虎徹

(上杉の姉貴が、こんなことを言うなんて…)

久我虎徹

(まさかの母性本能…!?)

久我虎徹

(女であることを隠さなくなったせいなのか!?)

ｽﾀﾀｯ…

その時、俺達の背後に、何者かが近づいてくる気配を感じた。

上杉玲

むっ!?

久我虎徹

何者だ!?

???

突然すみません。

???

京極組の、方ですよね。

16歳くらいだろうか。一人の少年が、俺たちを呼び止めた。

久我虎徹

（こいつは…）

久我虎徹

(何かある…）

久我虎徹

何の用だ？

上杉玲

…。

上杉の姉貴がわずかな警戒態勢を見せる。

???

あの、僕、有島涼也といいます。

少年は、橙色の目で俺達をまっすぐに見つめ返すと、こう名乗った。

有島涼也

僕は昔、京極組に命を救われたんです。

有島涼也

僕の父は、いつも遊び歩いているような人でした。

有島涼也

母は、僕が7歳のときに出ていき、

有島涼也

それから家には、別の女性が来るようになりました…。

有島涼也

そんな風でしたので、僕はいつも家に帰らず、

有島涼也

ここのゲームセンターでたむろするようになりました。

有島涼也

ある日僕は、お金が落ちているのを見つけ、

有島涼也

お恥ずかしいながら、それを黙って持ち去ろうとしました。

有島涼也

しかし眼鏡の男に見つかって、

有島涼也

奴の別荘に誘拐されたのです。

久我虎徹

あぁ。お前も、あいつに捕まっていたわけだな。

有島涼也

はい。その時僕は、12歳でした…。

有島涼也

それから１年ほどして、３人の男性が僕たちを助けに来るまで…

有島涼也

僕は他の子どもたちと一緒に、暗い檻に閉じ込められる生活でした…。

久我虎徹

それでお前は、無事に檻から出され、親元に返されたってわけか？

有島涼也

僕の父は、僕がいなくなっても素知らぬ顔。

有島涼也

そのため、京極組の方は、僕に児童養護施設を手配してくださいました。

上杉玲

そうだったの…。

久我虎徹

六車の兄貴は…そこまでしていたのか。

有島涼也

僕は中学を卒業してすぐ、

有島涼也

皆さんを探そうと思い、

有島涼也

あらゆるつてで、今日ここにたどり着きました…。

上杉玲

今まで、よく生きていたね…。

有島涼也

僕は皆さんにお礼をさせていただきたいのです。

久我虎徹

何を言っている。

久我虎徹

これ以上俺達に関わると命はないぞ。

久我虎徹

お前が普通の生活を営む、それが俺達への恩返しだ。

俺は少年を帰らせようとした。しかしその時、やや強い風が吹き、少年の黒髪が僅かに浮き上がった。

少年の襟足から鮮やかな山吹色の毛束が顔を覗かせ、

上杉の姉貴が、エメラルドグリーンの目を鋭く光らせてそれを見た。

上杉玲

…!!

上杉玲

お前…

有島涼也

あぁ。

有島涼也

上杉さん、やはりあなたは見抜いてしまいましたか。

有島涼也

えぇ。僕の父には、

有島涼也

ずっと前に別の女性との間に子供がいました。

上杉玲

その女はヤク中で死んだ。

上杉玲

そう言いたいのだろう？

有島涼也

…あなたは、流石だ。

有島涼也

…そのとおりです。

久我虎徹

（何の話だ!?）

上杉玲

…。

上杉の姉貴が身構える。だが少年は迷わずに続けた。

有島涼也

ですがお願いです！

有島涼也

僕の話を聞いてください!

久我虎徹

なん、だと…

上杉玲

…。

有島涼也

僕はこの間の火事を、向かいの窓から見てました。

有島涼也

あなた方に、重要なことをお教えします。

有島涼也

それは…

有島涼也

あなた方の敵は、まず京極組の舎弟を狙い、

有島涼也

足元から崩し、幹部の首を狙う、ということです。

久我虎徹

そうか。

上杉玲

ふぅん…。

久我虎徹

（浪岡の読みと、ピッタリ合っている）

久我虎徹

（もしかしたらこいつの言うことは、強ち嘘でもないのかもしれない…）

更に少年は、極秘であろう敵の情報を、更に２つ、３つほど付け加えた。

それらは全て、浪岡の残したUSBに保存されていた調査結果と繋がるものだった。

久我虎徹

（信用するのは早いが、聞く価値はある…）

上杉の姉貴も、少年を疑う素振りは見せない。だが、少し周囲を警戒しているようではあった。

久我虎徹

（ん？姉貴、どこを見ているんだ!?）

しかし姉貴が警戒していたのは、自分の背後よりも、少年の背後だった。

有島涼也

そしてもう一つだけ…

有島涼也

今回の戦争で、あなた方の敵組織の人間であるものの、

有島涼也

あなた方には弓を引かないと、はっきりと決めている人がいるんです。

有島涼也

その人の狙いは、羅威刃の再興。あなた方への敵意は毛頭ありません。

有島涼也

だから、その人のお命だけは、どうか…！どうかお願い致します。

上杉玲

…。

有島涼也

上杉さん。僕は知っています。

有島涼也

あなたは、殺す相手を間違えたりしないことを。

上杉玲

もういいか？

上杉玲

お前、欲しいものは手に入っただろう？

上杉玲

早く帰れ。

久我虎徹

（欲しいもの？なんのことだ!?）

有島涼也

えっ…

上杉玲

これ以上

上杉玲

ここにいると危ない…。

そして姉貴は躊躇なく腰にさしていた洋刀を抜くと、少年の首元すれすれを斬り上げた。

有島涼也

…!

姉貴の刀は少年の襟足から覗く、鮮やかな山吹色の髪の毛を一房切り取った。

上杉玲

私は、お前らの欲しい物を与えた。

上杉玲

今日のところの対価はこれくらいでよいだろう。

上杉玲

さあ、帰れ…。

久我虎徹

（あいつの、欲しい物だと？）

久我虎徹

（どういうことだ!?）

このとき俺はまだ姉貴の一連の行動が、何を表すのか理解できなかった。

???

京極組の「男装の麗人」…

???

愛せるねぇ。

???

イタリアンとは、バリューあるじゃん?

???

いくら馬の舎弟を射たところで、

???

この人は死なないだろうね…。

???

でも、この写真、ちょっと暗すぎる…。

???

それに今じゃ、レディの姿だってよ。

???

京極組幹部の一人と、血縁があるって言うけど、誰だろ？

???

もっと顔がクリアにわかる、フォトが欲しいなぁ。

???

有島くん？

有島涼也

はい。

???

京極組の、上杉玲

???

髪や虹彩の色がはっきり分かる写真を撮ってきて。

有島涼也

かしこまりました。

僕はこの組織のスパイ。今日は、京極組幹部の一人の顔を割る仕事を任された。

ただ、僕にそれを命じた男は、僕の生い立ちを知らない…。

久我虎徹

姉貴、今のは、何だったんですか!?

久我虎徹

少年の、「欲しい物」って??

上杉玲

あれは敵のスパイだよ。

上杉玲

話しかけるふりをして、

上杉玲

恐らくは私を写真に撮った。

上杉玲

ただ、あの子の話に、嘘はないだろうね。

久我虎徹

えっ、

久我虎徹

やはり怪しいとは思いましたが、

久我虎徹

ではなぜ、顔を隠さなかったのです?!

久我虎徹

もしくは返り討ちにすることも、できたじゃないですか!

上杉玲

私の目…

上杉玲

エメラルドグリーン

上杉玲

知っての通り、この色は、珍しい。

上杉玲

あんまりいないよね…。

久我虎徹

は、はい…。

久我虎徹

ならばなおさら危険なはず…

久我虎徹

なぜ、わざわざ敵に顔が割れるようなことを自ら…?!

上杉玲

ねぇ久我くん、

上杉玲

こんな文句を知ってる？

上杉玲

京都三条　糸屋の娘

上杉玲

姉は十六、妹は十四

上杉玲

諸国諸大名は弓矢で殺す

上杉玲

糸屋の娘は目で殺す

久我虎徹

ええ…

久我虎徹

確か、起承転結の例として使われる文句ですね。

久我虎徹

ですが、なんの関係が…

上杉玲

あら、良く知ってるじゃない。

上杉玲

それにしても、

上杉玲

部下に命じて、写真を撮らせる…。

上杉玲

私の顔など、知らないほうがいいのに、

上杉玲

あの男も皮肉だね。

久我虎徹

（どういうことだ?）

上杉玲

この世の最後に見るのが、

上杉玲

…と同じ色の目だなんて。

久我虎徹

えっ、姉貴、今なんて…

姉貴は答えず、「京都三条、糸屋の娘」と再び口ずさみ始めた。

俺は姉貴が何を言いたいのか、全く分からなかった。

上杉玲

諸国諸大名は弓矢で殺す

上杉玲

糸屋の娘は、

上杉玲

目で殺す…。

有島涼也

只今戻りました。

???

お帰り。

???

あら〜お疲れちゃん。

有島涼也

こちら、京極の上杉です。

???

仕事が早くて助かるよ。

???

この髪の色、

???

やっぱり六車謙信の親戚だね。

???

右頬に傷かぁ。

???

レディなのに、もったいない。

???

こんなに近くで写真を撮るとは、

???

優秀だよ。

???

そしてこの…

???

目。

???

…。

有島涼也

あの、

有島涼也

どうされました？

有島涼也

何か不備がありましたでしょうか？

???

無いよ、大丈夫。

???

それにしても、

???

珍しい、色…

???

…。

???

エメラルドグリーンかぁ

???

バリューあるねぇ

???

まるで本物のジュエリ…

???

黙れ。

???

（ﾋｴｯ!?）

有島涼也

???

（ど、どうして急に…）

この時僕は、上杉さんの写真を取るのがなぜこんなにも簡単だったのか、知る由もなかった…。

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