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第21話 - 【もう一つの京炎戦争】久我虎徹の奔走 #3 ft.高砂の兄貴-京極組の"こころの泉"

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2023年06月18日

#ヒューマンバグ大学

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#京極組

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小湊早百合

高砂明夫

あら、上杉ちゃん、おかえりなさい。

高砂明夫

虎徹ちゃんから話は聞いているわ。

高砂明夫

あんた、敵に顔が割れたってね。

上杉玲

ええ。

高砂明夫

何をしてるのよこのお馬鹿さん

高砂明夫

って、最初は思ったけど…。

高砂明夫

流石は上杉ちゃんね。

高砂明夫

敵に回したら、おっかないわぁ。

上杉玲

兄貴、口がお上手だこと…。

上杉玲

私はただ、敵にされたことを、三重苦にして返したまでですよ。

上杉玲

しかし、兄貴にそうおっしゃって頂けるなんて、光栄です。

高砂明夫

心の奥深く、一切の光も風も当たらないところで、

高砂明夫

今でも強烈に疼く、もう二度と治らない傷を、

高砂明夫

内側から抉られる感覚…

高砂明夫

想像するだけで、ゾッとしちゃうわ。

上杉玲

流石は兄貴。全てわかっていらっしゃる。

高砂明夫

偶然とはいえ、上杉ちゃんの瞳の色が…

高砂明夫

悲惨な死をとげた、あいつの女と一緒だったとは。

高砂明夫

よく調べたわね。

上杉玲

新しい傷をつけるより、

上杉玲

古傷をえぐる方が簡単。

上杉玲

そしてダメージも、大きいのでね。

上杉玲

嫌な偶然ですが、

上杉玲

せっかくなので、利用したまでです。

高砂明夫

どこまでも、恐ろしい子…。

高砂明夫

ねぇ、でも上杉ちゃん。

高砂明夫

あなた、そのままじゃ諸刃の剣よ。

上杉玲

えっ。

高砂明夫

気づいていないかもしれないけど、

高砂明夫

このままじゃ、敵と共倒れするわ。

上杉玲

なっ…！

高砂明夫

ほら、あたしの行きつけのクラブがあるから、今晩付き合いなさい。

上杉玲

えっ、は、はい…。

上杉玲

（こ、ここは…）

上杉玲

（ニューハーフバーか!?）

上杉玲

（私はそもそも女…）

上杉玲

（昔、男装はしていたものの、オニイではないぞ!?）

高砂明夫

上杉ちゃん。安心して。

高砂明夫

上杉ちゃんが最初っから身体も心も乙女だってことは、

高砂明夫

私も、ここの人たちも、皆わかってるわ。

上杉玲

あっ、はい…。

上杉玲

（ホッ。）

高砂明夫

それでね、上杉ちゃんを、今日ここに連れてきたワケだけど…

高砂の兄貴はゆっくりと本題を切り出した。

高砂明夫

あなた、

高砂明夫

敵の古傷を抉り出すことに躍起だけど、

高砂明夫

あなた自身にも、

高砂明夫

まだ癒えてない傷があるわよね?

上杉玲

なっ…

上杉玲

そ、そんなこと…

高砂明夫

毎日顔を合わせているんだから、そんなの簡単にわかるわ。

高砂明夫

ゆっくりでいいから、教えてほしいの。

高砂明夫

私、力になれるかもしれないわ。

上杉玲

…。

上杉玲

…わかりました。

上杉玲

それでは、お話いたしましょう。

上杉玲

あれは私がまだ、イタリアにいた頃…

私は、女であることを隠したまま、想い人に刃を向けた過去を、高砂の兄貴に全て打ち明けた。

高砂明夫

あら…そうだったのね。

高砂明夫

その方は、どんなお姿だったの?

上杉玲

私より少し長身、

上杉玲

ほぼ金髪に近いような、明るい栗色の髪と…

上杉玲

瞳の色は…

高砂明夫

黄色よね?

上杉玲

えっ…

上杉玲

確かに、かすかに金色がかった、黄色の瞳をしてましたが…

上杉玲

何故それを…!?

高砂明夫

わかるわよ。

高砂明夫

だってあなた、

高砂明夫

作戦会議の時、

高砂明夫

ある人の顔だけ、まっすぐ見ないでしょ?

上杉玲

…‼

高砂明夫

手元の資料に、目を落としたり、

高砂明夫

他の幹部の写真を見たり。

高砂明夫

写真といえど、絶対に目を合わせないわよね。

上杉玲

…‼

高砂明夫

あなた、

高砂明夫

あいつの目を見るたびに、

高砂明夫

もしかして過去を思い出しては、

高砂明夫

自分を責めているの?

上杉玲

あの色…

上杉玲

私が殺した男の瞳が、

上杉玲

死の直前、最後の最後に放った光と

上杉玲

全く同じものでした…。

高砂明夫

分かるわ、その苦しみ…。

高砂明夫

上杉ちゃんと、事情はちょっと違うけど、

高砂明夫

私も、大好きだった人を殺したことがある。

上杉玲

えっ…!

高砂明夫

こんなにも深く、恋をしたのは初めて。

高砂明夫

でも、その男、

高砂明夫

結婚詐欺師だったのよ。

高砂明夫

私個人としては、騙されたって嬉しいくらい、

高砂明夫

好きな人だったわ…。

高砂明夫

でも京極の高砂として、

高砂明夫

シマを荒らしたそいつのことは、

高砂明夫

絶対に、許すわけにはいかなかったの。

上杉玲

そんなことが、あったのですか…。

上杉玲

さぞかし、お辛かったでしょう…。

高砂明夫

ええ、けれど今私が言いたいのは、

高砂明夫

組織の命令で動いたあなたは、

高砂明夫

決して間違っていなかったということ。

高砂明夫

私情を挟まない人は、非道なんかじゃない。

高砂明夫

むしろ逆よ。

高砂明夫

芯が通っていて、動揺しない。その上実は誰よりも、愛情深い。

高砂明夫

だから、これ以上自分を責めないでもらいたいの。

上杉玲

…。

上杉玲

（私に…愛情、だと?）

高砂明夫

それにあなたは、

高砂明夫

勇気を出して、

高砂明夫

うちで、本当の姿をさらけ出した。

高砂明夫

決して遅すぎやしないわ。

高砂明夫

女の姿に戻ったあなたは、

高砂明夫

あの頃とは、別人なのよ。

上杉玲

そうだと、いいのですが…。

高砂明夫

でも注意して。

高砂明夫

女のままで生きていく自由を手にし、

高砂明夫

女ならではの勘を取り戻したあなたは、

高砂明夫

それと引き換えに、男の姿をしていた頃の、

高砂明夫

能力の幾つかを失ったはず。

高砂明夫

ドン・ウエスギのままだと思って、

高砂明夫

そのまま戦場に行ったりしたら、

高砂明夫

身体が思うように動かず、

高砂明夫

そのギャップに苦しむわ。

高砂明夫

だから…約束して。

高砂明夫

絶対に、一人で戦わないこと。

高砂明夫

上杉ちゃんに傷をつける男は、

高砂明夫

私だけじゃなく、

高砂明夫

京極組が、絶対に許さないんだから。

上杉玲

…わかりました。

上杉玲

約束致します。

上杉玲

温かいお言葉、

上杉玲

深く感謝いたします。

この人は、全て見抜いていた。私の強さも、弱さも…。

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