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車を走らせること数時間。

すっかり日はくれて、空には月が高々と昇っていた。

お父さん

さ、新しい家に着いたよ

つばき

着くまで、結構かかったね

つばき

そのせいかな、前住んでいた所とは違って、結構田舎!

つばき

どこを見ても田んぼしかない……

つばき

これじゃあ学校に通えないよ!?

つばき

みんなに会えないよ!?

お父さん

お父さん

それなんだがな

お父さん

つばきには、変な人達がいなくなるまでの間、この近くの学校に通ってもらおうと思うんだ

つばき

ここの!?

つばき

大丈夫なの!?

お父さん

仕方ないだろう、そこしかないんだから

お父さん

向こうの家が落ち着くまで、我慢してくれ

つばき

つばき

わかった

口ではそう言うものの、つばきは全く納得してはいなかった。

つばき

嫌だ、こんなところの学校なんて!

つばき

古かったり汚かったりしたら、どうしてくれるの!?

つばき

服が汚れちゃうじゃん!

つばき

それに、こんな田舎の学校なんて、みんな二軍みたいなのばっかに決まってる!

つばき

友達がグレードダウンしたら、エミリと張り合えない!

つばき

まあ、それでも?

つばき

私の引き立て役には、なってくれるだろうけど……そんなの絶対つまらないじゃん!

お父さん

つばき、ほら

お父さん

家に入ろう

つばき

……はぁい

ムッと唇を真一文字に引き結び、つばきは父親に促されるまま、ボロ屋の中へと入っていった。

お母さん

つばきちゃん!

つばき

お母さん!

居間に入ったつばきの目の前にいたのは、すっかりいつもの調子に戻った母親だった。

嬉しさのあまり、飛びつこうとしたつばきだが……その衝動を、ぐっと堪える。

つばき

お母さんの頭……包帯、どうしたの?

つばき

やっぱり、今朝の変な人にやられたの?

お母さん

聞こえていたのね……そうよ

お母さん

でも大丈夫!

お母さん

もう警察に捕まえてもらったから、心配はいらないわ

つばき

よ、良かった〜!

つばき

お母さんに何かあったら、どうしようって、思ってぇ……!

つばき

ふぐ、っぐ、ぅ〜!!

お母さん

あらあら!泣かないで!

お母さん

本当に、なんて事ないんだから!

つばき

うん

お母さん

心配をかけてごめんなさいね

お母さん

酷い目にあったけど、もうここまで来たなら平気なはずよ!

お母さん

何より、私の可愛いつばきちゃんに、怪我がなくてよかったわ!

頭に触れる、母親の温かな手に、つばきは安心感を覚える。

つばき

なんだろう、あったかくて、落ち着く

SNSで可愛いと言ってもらったことよりも、いいねを貰った時よりも、満たされている感覚。

下心込みの愛情表現とはまるで違うそれに、つばきは自然と笑みを浮かべていた。

お母さん

今日は夜遅いし、新しい学校のことは、また明日話しましょう

お母さん

しばらくは、ゆっくり休まないとね

つばき

うん

お父さん

おーい、部屋片付いたぞ

お母さん

ありがとう!じゃあ、今日は3人で一緒に寝ましょうか!

つばき

はぁい

つばき

みんなで一緒の部屋で寝るなんて、旅行の時以来だね

お母さん

そうね、ふふふ

和やかな会話の中、つばきは静かに決意した。

しばらく、写真の投稿は止めよう。

自分の顔も、私物の写真も。

つばき

フォロワーさんからのいいねが貰えなくなるのは、確かに悲しいけど

つばき

変な人が、私の写真を勝手に使っている方がよっぽど嫌だし

つばき

何より……

つばき

そんな無料で使える程、安い私じゃないんだって、変態野郎共に知らしめてあげないと!

意気込んでガッツポーズをするつばきにつられるように、月明かりが優しく差し込んでくるのであった。

その日から一週間後。

つばき

……ヤバい

つばき

XYZが気になる

つばき

セラーノベルのあの子達、元気かな

つばきの決意は、早速ゆらぎ始めていた。

つばき

やっぱりリアルなんて面白くない

つばき

新しい学校に入ったはいいけど、興味持ってくれたのは最初だけ

つばき

ぶりっ子だとか言われて、途端に三軍扱いされるし

つばき

何よりあいつら、ファッションの話とかぜーんぜん出来ないんだけど!

つばき

色々話しかけてみても、センスないものの話ばっかりだし!

つばき

こっちも、向こうの話に興味持ってあげようとしてるのに!

つばき

こんなダサい子達ばっかりと一緒のクラスだなんて、ホント無理!

つばき

あーあ、今からでもいいから、また街の方に引っ越せないかなあ!

愚痴をこぼしつつも、つばきは両親を心配させまいと、学校には行っていた。

――その教室の中で孤立しようとも。

そうなると、つばきの承認欲求が満たされなくなるのは当然のこと。

今のつばきは、断つと決めたSNSに、手を伸ばす寸前まで来てしまっていた。

つばき

いや、ダメ!自撮りはダメ!

つばき

また変な人が家に来ちゃうかもしれないでしょ!?

つばき

風景の写真も、きっとダメな気がするからナシ!

つばき

物の写真も、特定されちゃうかもしれないからダメ!

つばき

その間にも、エミリはどんどんモデルとして写真出してるし……!

つばき

なんか、妙にあせる!

つばき

ううう!文章しか投稿できないのってキツイ!!

焦燥感に身を任せるまま、つばきがXYZにログインした時だった。

つばき

……何これ

つばきはまたしても、自分の写真を見る羽目になる――

小紅姫?

みんな!私のこと、心配してくれてありがとう!

小紅姫?

住所特定されたのはちょっと焦ったけど……

小紅姫?

でも、もう大丈夫だよ!

小紅姫?

変なおっさん達は、みんな警察に捕まったって!

小紅姫?

だから今度からまた普通に投稿できるから!

小紅姫?

心配かけてごめんね〜!

小紅姫?

今後ともよろしくねっ☆

小紅姫

小紅姫

……どういうこと?

小紅姫

なんで『私』がもう1人……!?

小紅姫

いや、落ち着いて、よく考えて!

小紅姫

これは私じゃない!

小紅姫

なりすましだ!

小紅姫

私が昨日から投稿しなくなったから、チャンスだと思って出てきたんだ!

小紅姫

通報してやる!

小紅姫

通報して、晒して!めちゃくちゃにしてやるんだから!!

晒し上げのために、つばきはなりすましの写真の一覧へと、指を伸ばす。

そこには案の定、以前つばきが見つけた画像サイトに掲載されていた、大量のつばきの写真が表示されていた。

それだけなら、まだマシだった。 なりすましをされているだけなら、まだ良かったのだ。

このアカウントの、最大の問題は――

小紅姫?

宿題しないといけないのに、体が熱いの

小紅姫?

クラスの男の子以上に素敵な男の人、探してます!いいねしてね♡

小紅姫?

連絡先教えるから、誰かいぢめて?

小紅姫

小紅姫

うえ、気持ち悪い

小紅姫

人の写真使って、なんてもの投稿してんの、コイツ!!

小紅姫

返信欄の奴もなんで釣られてんだよっ、こんな、なりすましなんかに!!

小紅姫

そこまでしてモテたいの?コイツ

小紅姫

そんなみっともない人に、自分の写真が使われてるとか……無理なんだけど

なりすましのホーム画面のスクリーンショットを撮り、つばきはムカムカとし始めた腹をさする。

小紅姫

みんなー!

小紅姫

こいつはなりすましです!

小紅姫

ブロックと通報、お願いね!

小紅姫

私はこんな、気持ち悪い出会いなんて求めてないからね!?

フォロワー

フォロワー

やっぱり偽物ですよね!了解です!

フォロワー

なりすましとかマジ頭沸いてんだろ……

フォロワー

小紅姫ちゃん、大丈夫!?

フォロワー

通報してきました!

フォロワー

微力ながら、拡散します!

小紅姫

みんなありがとう!

小紅姫

私だと間違えて、なりすましの投稿にいいねした人、今すぐ取り消してね?

小紅姫

私は自分の周りが落ち着くまで、写真はアップしないから!

小紅姫

偽物に注意ね!!

この注意喚起は、はっきり言って良いものではなかった。

彼女の写真目当てのユーザーが、軒並みフォローを外してしまったのだ。

みるみるうちにフォロワー数は激減し、小紅姫のフォロー欄だけが、以前の数字を記録している。

小紅姫

なぁんだ。結局、私の顔と体目当てだったんだね

小紅姫

ホント無理、最低だよ

小紅姫

病みそう

小紅姫

そんなことするなら、最初からフォローしないで欲しかった

ユーリ

小紅姫さん、お気持ち痛いほど分かります

小紅姫

ユーリさん……

ユーリ

ここでは話しづらいでしょう

ユーリ

ダイレクトメッセージで話しませんか?

ユーリ

さて、小紅姫さん

ユーリ

今はとてもお辛い状況だと思います

ユーリ

私が貴方の傍に行けたなら、どれだけ良かったことか!

ユーリ

住所はバラされ、写真まで変な人に使われて……!

小紅姫

ホントにそうだよ!

小紅姫

もう訳わかんない!

小紅姫

どうして、こんな酷いことするんだろう

ユーリ

さあ

ユーリ

知らなくてもいいじゃないですか、そんな身勝手な人達のことなど

小紅姫

小紅姫

それもそうだね

小紅姫

慰めてくれてありがとう

小紅姫

小紅姫

ユーリさん、まだお話、聞いてくれる?

ユーリ

どうぞ

小紅姫

ありがとう

小紅姫

実は私、特定してきた人から逃げて、今すっごい田舎にいるの

ユーリ

田舎ですか?

ユーリ

環境が変わって、大変でしょう

ユーリ

頼れる人はいますか?

小紅姫

お父さんとお母さんが居てくれるから、そこはまだ大丈夫かも

小紅姫

でも……

小紅姫

クラスのみんなとは馴染めないし、ダサいし、居場所がなくて

小紅姫

もう嫌になってきちゃった……ポロポロ……

小紅姫

家もボロくていたくないし、学校も嫌……ポロポロ

ユーリ

泣かないでください、小紅姫さん

ユーリ

ユーリ

そうだ!

ユーリ

小紅姫さん、私と一緒に、街の方へ行きませんか?

小紅姫

……へ?

小紅姫

どういうこと?

ユーリ

小紅姫さんは、家にも学校にも、いたくないんですよね?

小紅姫

うん。そうだよ

ユーリ

話が合う人が居なくて、毎日辛い思いをしていらっしゃる、そうでしょう?

小紅姫

そう、そうだよ……!ポロポロ!

ユーリ

ですから、私が助けに行きますよ

ユーリ

こんなつまらない所になんかいないで!

ユーリ

私と一緒に、元のきらきらした生活に戻りましょう!

小紅姫

元の……

ユーリ

はい!

ユーリ

沢山のお友達に囲まれて、素敵なお洋服を着て、美味しいものを食べて、ぐっすり寝るんです

ユーリ

どうです?素敵でしょう?

ユーリの言葉は、まるで極上の甘味のようだった。

環境の変化で荒んでいた、つばきの心に「逃げよう」と甘い誘惑がやってくる。

ユーリ

あと少ししたら、私も父と共に、貴方が以前お住いだった県へ行く予定なんです

小紅姫

え!?そうだったの!?

ユーリ

はい

ユーリ

私の用事が済んだら、その時に、貴方をお迎えに行きます

ユーリ

そして、この最悪な環境から救い出してみせましょう!

ユーリ

私を信じてください!!

小紅姫

は……は

小紅姫

小紅姫

はい……っ!

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