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紫陽花って地面にある成分により色が変わるんですよね 桜も下に死体が埋まってればより花が赤くなるって七不思議的な話もありますし、紫陽花のような性質の花はそこまで珍しくないのかもしれません
部屋に入った瞬間に、甘ったるい香りが鼻を刺激する。人工的な"甘さ"の匂い。これは香水か。
重い匂いが喉の奥深くまで侵入し、肺を腐らせていく。苦い。甘すぎて苦いのだ。
不愉快な匂いに、思わず顔を顰める。
気持ち悪い。こんなに不快な気持ち悪さを経験したことがあっただろうか。
だが、吐くほどではない。無理矢理その場にあった香水で吐き気に蓋をした。そうするたびに、吐き気は増していくというのに。
先程の匂いは何かに似ている。放っておくと脳髄まで麻痺させそうな……。
植物の匂いか。
ならなぜ置いているのか?それはおそらく本人に問い詰めても答えは出てこないだろう。諦めるしかない。
直感で判断したが、間違ってはいないと思う。
この男……小鳥遊泉は研究者だ。生まれ持った才能で幼い頃から学者達に注目されていた。
最終的に研究所を建ててそこで研究者を募り、何かに対しての研究を続けている。
極力関わりたくはなかった。関わると友人がうるさくなるのも理由の一つだが…。 同族嫌悪なのかもしれない。
彼が小鳥遊泉を嫌っている理由は何か。
ある日小鳥遊泉は事件を起こした。
そもそも、この研究所は元となる研究所があった。子供を無理矢理拉致し、様々な実験の犠牲にするような残酷な研究所だった。
ある年、その研究所が焼失。そして、小鳥遊泉がその穴を埋めるように新たな研究所を建てた。
その研究所は素晴らしい結果を残した。 高度な技術に、需要に的確な商品。
忽ち商品は人気になり、世界中に広がっていった。
はずだったのだが。
人気となった商品はアンドロイド。そのアンドロイドが忠実に命令を聞き、かつ機械らしからぬ活発な活動をする。
この手の商品はこの研究所のお手の物だったが、研究所で制作された八割のアンドロイドが人間をベースに作られていたことが判明した。
実在の人間をモデルに、ではなく、実在の人間を実際に使用して、アンドロイドを製造していた。
かなりの数の批判がされた。半ば誹謗中傷に近い意見も見られた。
時間が経ち、研究所側も反省したとの事で事件は段々と忘れ去られていった。
元凶は紛れもないこの男、小鳥遊泉である。
これがきっかけで彼は小鳥遊泉が嫌いになった?
違う。
たしかにこの事件は彼にとって思うところがあったであろう。だが、それは関係ない。それが起こるべくして起こったことであるならば尚更。
あの彼なのだから、原因はおそらくアレだろう。彼の本質はそこにある。数多の世界線の中で彼を彼たらしめるもの。
小鳥遊泉が彼のことを「アルベア君」と親しげに呼んでいるあたり、小鳥遊泉が問題を起こすより前に接触があったと考えられる。それも長い間。
小鳥遊泉が高校生の頃。つまり、彼が中学生の頃だ。
この辺りは、執念深く調べれば特定出来るはずだ。
問題はどうやって接触したのか。
可能性を一つ一つ潰していっても、辿り着くことは出来ない。自分の頭に答えがない限り、正解の可能性がない限り、決して当てることは出来ない。
残される選択肢はあと一つだ。