その日、雅哉は教室のドアの前で立ち止まった。
中からは数人のクラスメイトの 笑い声が聞こえてくる。
気配を悟られたくなくて、息を潜めたまま、 その声に耳を澄ませた。
クラスメイト1
クラスメイト2
クラスメイト3
クラスメイト2
クラスメイト1
……その名前が出た瞬間、 胸が強く締め付けられた。
雅哉は、ゆっくりと一歩、後ろに下がった。
――その輪の中に、和人の声があった。
和人
笑ってはいなかった。 でも、否定もしなかった。
和人
ただ静かに、その場にいた。 それだけで、雅哉には十分だった。
雅哉
唇を噛んだ。 心の中で何かが音を立てて崩れていく。
これまで積み上げてきたものも、 和人への想いも、 ぐしゃりと潰されたようだった。
雅哉
そのままドアを開けることなく、 雅哉は踵を返した。
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