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コメント
2件
戻ってよかったぁ…… こさめちゃんも色々抱えてたんだね……らんらんナイス!
主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
主
主
主
第96話『崩れ落ちる声』
空の色は、朝からどこか不安定だった。
細く差し込む光は曇りガラス越しのようにくぐもり、窓を打つ雨粒は、強さを増したり弱まったりを繰り返す。
梅雨の名残を引きずるような湿った空気が、部屋中に張りついていた。
こさめの部屋のドアの前で、らんは小さく息を吐いた。
胸の奥に重い石を抱えたまま、ノックする勇気がなかなか出ない。
拳を握る。
ほんの少し汗ばんだ指先が、冷たい木の表面に触れる。
――行かなきゃ。
その思いだけが、からまった思考の中で唯一濁らずに存在していた。
ドア越しの空気は静かすぎた。
まるで中に誰もいないかのように。
しかし、気配は確かにある。
息づかい。
微かな動き。
気づかぬふりをしているだけだ。
喉が渇いた。
息を飲む音がやけに大きく響く。
そして――中。
同じような重さの空気が、こさめの心の中にも漂っていた。
闇だ。
光は落ちている。
けれど、触れたら溶けてしまいそうな弱々しい光。
部屋の電気は消えていて、カーテンは閉じられ、外からの薄い明かりだけが影を伸ばしている。
布団の上、膝を抱え込んで座り込むこさめ。
青白い額は汗に濡れ、乱れた髪が頬に張りついていた。
唇は噛みしめすぎて赤くなり、震えていた。
そして――耳元。
もうひとりの声が、息を吹きかけるように囁いた。
こさめの影
こさめ
声にならない声。
振り払うように両手で耳を塞ぐ。
こさめ
こさめの影
こさめ
こさめの影
こさめの影
こさめの影
こさめ
こさめの影
こさめの影
こさめ
叫びは震えて、空気の中で掻き消える。
涙がぽたぽたと布団に落ちる音さえ、やけに大きく聞こえた。
こさめの影
こさめの影
こさめの影
こさめ
震える声が、かすれた呼吸と混ざる。
指先が白くなるほど強く耳を塞いでも、声は止まらない。
こさめの影
こさめの肩が痙攣するように揺れた。
こさめの影
こさめ
こさめの影
こさめ
こさめの影
息ができない。
胸の中がきゅっと縮み、喉がつまった。
こさめの影
空気が、音が、温度が、全部ひっくり返るみたいに揺れた。
視界が強く滲んだ瞬間――ふっと意識が遠のいた。
まるで深い海に沈むように。
ノブにかけたらんの手が、微かに震えた。
胸の奥がざわつく。
心臓が嫌な音で鳴り続けている。
影の声が、低く漏れた。
らんの影
らんの影
らん
その言葉に背中を押されるように、らんはドアを開け放った。
らん
薄暗い部屋。
カーテンの隙間を縫うように落ちる光。
ベッドの上、動かず座り込むこさめ。
肩が揺れている。
けれど――顔はまっすぐ前を見たまま、ぴくりとも動かない。
らん
こさめの影
返事はなかった。
らんは慌てて駆け寄る。
息が荒くなる。
らん
らん
その瞬間――
こさめの影
こさめの影
こさめの影
笑い声。
高い声と低い声が、ぐしゃぐしゃに混ざった笑い。
耳を突き刺すような異質な音。
らん
らんは思わず耳を塞ぎ、全身が硬直した。
よく見ればこさめは、笑っている。
……いや、泣きながら、笑っていた。
その瞳は、光を失っていた。
こさめの影
こさめの影
こさめの影
重なる声が吐き出すように言った。
笑いながら、泣きながら。
こさめの影
らん
らんの声が震える。
らん
らん
らん
しかし――
こさめの影
落ちる一言。
そして次の瞬間、
こさめの影
らん
刺さるように突き刺さる叫び。
空気が裂けた。
らんは立ち尽くしたまま目を見開く。
全身が凍り付いたように動けない。
らんの影
らんの影
らん
らん
らんの影
らんの影
らんの影
影がらんにそっと囁いた。
らん
らん
顔が一瞬赤く染まる。
らんの影
らんの影
らんは舌打ちしたい気持ちを飲み込み、足を踏み出した。
一歩。
また一歩。
近づいて――そっと、こさめを抱きしめた。
こさめの影
らん
らん
らんの声は震えて、でも真っ直ぐだった。
らん
らん
らん
ぎゅっと腕に力がこもる。
らん
らん
こさめの影
その瞬間。
ハイライトを失っていた瞳に、ふっと光が戻った。
こさめ
涙が溢れる。
呼吸が崩れ、嗚咽が漏れる。
こさめはらんの肩に顔を埋め、震えながら泣いた。
こさめ
黒い影が、すうっと消えていく。
らんは息を吐き、優しく背を撫でた。
らん
こさめはそのまま泣き疲れて眠ってしまった。
らんはそっとベッドに寝かせ、布団を掛ける。
らん
窓の外、雨は止み、静かに虹が架かり始めていた。
第96話・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡240
主
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