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理仁はコンコン、と扉をノックした。

栗原 理仁

紬希ー

栗原 理仁

起きろ。もう昼だぞ

……

栗原 理仁

休日だからってダラダラするなよ

部屋から返事は無い。

栗原 理仁

(寝坊助……)

栗原 理仁

入るぞ

理仁はため息ついて、部屋の中に足を踏み入れた。

部屋に入ると、

紬希はベットの上で体育座りで座っていた。

栗原 理仁

……紬希?

栗原 紬希

…!

栗原 紬希

あ、お兄ちゃん

栗原 理仁

……起きてたのか

栗原 理仁

俺何度も呼んだけど

栗原 紬希

…そうだっけ?

栗原 紬希

気づかなかったー

紬希はへへっと笑った。

理仁はその様子を怪訝な顔で見つめる。

栗原 理仁

(昨日__)

紬希が善の家に話をするために行ってから

どうも様子がおかしい

父さんも母さんも……俺も

何を話した?とか聞かないようにしてたけど

栗原 理仁

(なにがあったのか気になる…)

栗原 理仁

…………

栗原 理仁

今日、どこか出かけるか?

栗原 紬希

紬希はパッと顔を明るくさせた。

栗原 紬希

そんなこといつも言ってくれないのに!

栗原 理仁

…なんだ?嫌か?

栗原 紬希

ううんっ

紬希はバタバタと理仁の方へ歩み寄った。

栗原 紬希

行こっ

栗原 紬希

ふふっ。嬉しいな

栗原 理仁

…ん

栗原 理仁

(可愛い…)

栗原 紬希

お兄ちゃんっ

栗原 紬希

こっちこっち

紬希は理仁の手を引いて歩いていく。

栗原 紬希

うわぁー!大きい水槽っ

栗原 紬希

大きい魚!大きい海ー!

栗原 理仁

子供か。落ち着け

栗原 紬希

えへへっ

栗原 理仁

(ちゃんと楽しんでるみたいだな、よかった…)

栗原 紬希

お兄ちゃん。水族館に連れてきてくれてありがとう

栗原 理仁

……うん

栗原 理仁

まあ、暇だったし…

栗原 理仁

(本当は、)

紬希にいつも通り笑って欲しかったから。

男性

あのー、そこのカップルのお2人!

女性を連れた男性は理仁たちに話しかける。

栗原 理仁

…?

栗原 理仁

俺らですか?

男性

はい!

栗原 理仁

(カップルじゃないけど…)

男性

写真1枚撮ってもらっていいですかね?

栗原 紬希

撮りますよ!

男性

ありがとうございます!

栗原 理仁

(そうか。俺たちは傍から見れば__)

パシャ、と紬希はカップルの写真を撮った。

男性

2人の写真も撮りますか?

栗原 理仁

あ、俺らは__

栗原 紬希

撮ってもらおうよ!

栗原 理仁

……そ、うだな

理仁と紬希は横に並んだ。

大きな水槽を背景にパシャ、と写真が撮られた。

男性

いいですね、お似合いです

栗原 理仁

……!

栗原 理仁

(だからカップルじゃないんだって……)

栗原 紬希

ありがとうございましたー!

カップルの2人は頭を下げて、歩いていってしまった。

栗原 紬希

ふふっ。優しいカップルだったね

栗原 理仁

だな

栗原 理仁

俺らもカップルって思われたのが癪だけど

栗原 紬希

え?なんで?

栗原 紬希

嬉しいよ!

ドキッ……

栗原 紬希

私、結婚するならお兄ちゃんがいいもんっ

栗原 理仁

っ!

理仁の顔はかぁっと赤く染まる。

栗原 理仁

(……水族館が暗くてよかった)

栗原 理仁

あ、兄なんだから結婚とか無理だろ

栗原 紬希

そっかー

栗原 紬希

じゃあ、来世だね!

栗原 理仁

…………

紬希が俺の気持ちを知れば

俺たちの関係はどうなるんだろうか

血の繋がりがない俺たちを繋いでるのは

"兄妹"という事実だけだ__

栗原 理仁

(でも今はこれで十分)

栗原 理仁

(紬希が隣にいてくれるなら、俺は満足だ)

栗原 理仁

俺は紬希が妹でよかったよ

栗原 紬希

栗原 理仁

これからも__

栗原 理仁

俺の隣に、いてくれ

理仁はハッとした。

栗原 理仁

(やば、めっちゃ恥ずかしいこと言ってしまった……!)

理仁は慌てて紬希の方を見て、息を飲んだ。

紬希は理仁から目を逸らし、どこか焦っている表情を見せた。

栗原 理仁

つ、むぎ……?

栗原 紬希

…………

栗原 紬希

もしもの話だよ?

栗原 理仁

…な、に?

なんだか

嫌な予感がする。

栗原 紬希

もし私が

栗原 紬希

お兄ちゃんと家族を辞めるって言ったら

栗原 紬希

どうする…?

栗原 理仁

家族を

やめる……?

栗原 理仁

……え、と

家族を辞めるなんて

栗原 理仁

想像、できない__

栗原 紬希

……えへへ

栗原 紬希

そうだよね……

栗原 理仁

……紬希

理仁は紬希の肩をガシッと掴んだ。

栗原 理仁

今の話、どういうことだ

栗原 紬希

…………

栗原 紬希

昨日、善くんとお父さんに言われたんだ

栗原 紬希

「家族にならないか」って__

栗原 理仁

栗原 紬希

血の繋がりもある……"本当"の家族に__

栗原 理仁

……

嫌だ

紬希が家族じゃなくなる…?

俺の妹じゃなくなるのなら

俺は紬希にとって、ただの"他人"になる

そんなの嫌だ

紬希を愛してる

女性としても、妹としても

大好きなのに

栗原 理仁

紬希がいなきゃ

栗原 理仁

お、れは__

すると、紬希は背伸びをしてポンポンと優しく理仁の頭を撫でた。

栗原 理仁

栗原 紬希

「もしも」の話だって言ったじゃん!

栗原 紬希

私はお兄ちゃんと、パパとママと家族を辞めるつもりはないよ!

紬希はニコッと微笑んだ。

栗原 理仁

……

栗原 理仁

そうか

嘘が下手だな、紬希は

本当はすごくすごく悩んでること知ってる

理仁は先週の放課後のことを思い出した。

理仁は空き教室の前に立ち、

中から聞こえる紬希と善の会話に耳を澄ましていた。

栗原 理仁

(別れ話してるのか……)

「ぅ……うぅ…」

栗原 理仁

(紬希…泣いてる……)

「私ッ、ひとりぼっちなの」

栗原 理仁

(ひとりぼっち……?)

「家族全員、私と血が繋がってなくて」

「私だけ"本当"の家族じゃない…!」

栗原 理仁

!!

理仁は目を丸くさせた。

栗原 理仁

(紬希…俺たちと血が繋がっていないこと気にしてたのか…!?)

「血の繋がりなんて関係ないって言われたけど」

「関係ないわけないッ」

栗原 理仁

………………

理仁はぎゅ…と拳を握りしめていた。

栗原 紬希

紬希は「どうしたの?」とでも言うように首を傾げた。

栗原 理仁

…なんでもないよ

本当は気にしてるくせに

血の繋がりなんて気にしてない、みたいな顔して。

栗原 理仁

……

血が繋がっていないという事実が、紬希が好きだという気持ちを肯定された気がして

嬉しかった……

……そんなことを考えてた俺、死んでしまえ

紬希は1人だけ血が繋がっていなくて辛くて、苦しい思いをしているのに

何が嬉しいだよ、俺

栗原 理仁

……紬希

理仁は紬希の手を握った。

栗原 紬希

…?

栗原 理仁

一つだけ、約束してほしい

栗原 紬希

なーに?

理仁はコツン、と紬希の肩に額を乗せた。

栗原 理仁

もし俺たちが離れても

栗原 理仁

俺は紬希のお兄ちゃんでいたい__

栗原 紬希

…!

理仁は少し離れ、紬希の顔を見た。

紬希の目からは涙が溢れそうだった。

栗原 理仁

栗原 紬希

……もちろんだよっ

栗原 紬希

栗原理仁は、死ぬまで私のお兄ちゃんなんだよ!

栗原 紬希

それ以外の関係なんていらないもん!

栗原 理仁

……はは

栗原 理仁

ありがとう

死ぬまで俺は紬希の"お兄ちゃん"__

栗原 理仁

(じゃあ、死ぬまで俺のこの気持ちは紬希に伝えられないな)

俺は紬希のお兄ちゃんだから。

私の大好きなお兄ちゃんたち

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コメント

2

ユーザー

やっぱり優しい💞紬希ちゃん、嘘下手な所めちゃ可愛い(*˘︶˘*) 理仁くん、「死ぬまでお兄ちゃん」なんて言われたら嬉しすぎるよね‼️ こういう性格めちゃくちゃ好き!!!

ユーザー

理仁ちょっと素直になってる!

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