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我々怪異研究部!!

第32話 - クチナシ。

422

2025年06月25日

#司類

#冬彰

#ホラー

#ほのぼの

#感動

あかまる🍓🐾໊@イラコン開催

青柳家

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

冬弥の母

はい、青柳です。

冬弥の母

はい…まぁ！分かりました、代わりますね。

冬弥の母

冬弥さん、彰人さんからお電話ですよ。

冬弥

え？

冬弥

(彰人から……わざわざ、家の電話に？)

冬弥

……もしもし、

「もしもし、冬弥？」

冬弥

！

冬弥

(声は彰人だが…)

「今、瓶切町にいるんだよ。」

冬弥

(だが、違う……彰人じゃない…)

「場所言うからさ、迎えに来てくれねぇ？」

冬弥

(絶対に違う…だけど、なら何なんだ…？)

「…来てくんねぇの？」

冬弥

あ、あぁ…すまない。無理そうだ。

冬弥

(本物ならすぐにでも飛んでいくが…)

「ふーん…ま、いいや。」

「自分でそこまで行くから。」

冬弥

え？

プツッ

ツーツーツー…

冬弥

(…な、何だったんだ……？)

翌日

彰人

あ、冬弥。おはよ。

冬弥

彰人！おはよう。

彰人

なぁ、今日雨降るってマジ？

冬弥

あぁ、予報では雨だったな。丁度下校時刻と被るはずだ。

彰人

うわ、マジかよ。油断して傘置いてきた。

冬弥

あぁ、2本あるから1つ使ってくれ。

彰人

え、マジ？

冬弥

普通の傘に加え、折りたたみ傘も持ってきてある。

彰人

用意周到だな。じゃ、帰り降ってたら借りていい？

冬弥

もちろん。

冬弥

…あ、そうだ。昨日なんだが、

冬弥

彰人から家の固定電話に、電話が掛かってきたんだ。

彰人

え？

冬弥

たしかに彰人の声だった。

彰人

え、いや、掛けてねぇけど…？

彰人

つか、わざわざ固定電話なんかに掛けねぇよ。

冬弥

あぁ、分かってる。彰人の声なのに、彰人じゃなかったんだ。

彰人

何それ、怖。最新技術の詐欺とかじゃねぇ？

冬弥

詐欺ではないと思う…

彰人

内容は？

冬弥

えっと…「瓶切町にいるから、迎えに来て欲しい」と。

彰人

はぁ…？瓶切町…？

彰人

って、どこ？この近くじゃねぇよな？

冬弥

後で調べたが、どうやらここから4つ隣の県みたいだ。

彰人

え、遠。

彰人

けど……その県って、たしかお前の実家じゃね？

彰人

あ、いや、曾祖父母の家か。

冬弥

あっ、たしかに……

冬弥

…どうやら、瓶切町は曾祖父母の家がある町に隣接しているらしい。

彰人

ふーん。なら、結構遠いよな。

冬弥

あぁ。車だと……2〜3時間くらいだろうな。

彰人

けど…何なんだろうな。怪異か？

冬弥

さぁ……

彰人

まぁ、気を付けろよ。あと、俺がお前の家の固定電話に掛けることは絶対無いから。

冬弥

あぁ、分かった。

放課後

ザーーーーッ

彰人

……雨ヤッッバ…

冬弥

あぁ、土砂降りだな。

彰人

悪ぃ、折りたたみ貸して。

冬弥

あぁ、折りたたみの方は俺が使うから。

彰人

はぁ？いや、普通逆だろ。

彰人

お前は普通に傘使えよ。

冬弥

この雨をその折りたたみ傘で凌げるとは思えない。

彰人

なら尚更じゃねぇか

冬弥

彰人に風邪を引いて欲しくない。

彰人

俺だってお前に風邪引いて欲しくねぇわ。

冬弥

彰人は頑固だな…

彰人

お前もな。

司

む、2人とも、そこで何をしてるんだ？

冬弥

あ、司先輩。

彰人

聞いてくださいよ〜。冬弥がマジで頑固でー

冬弥

俺は彰人に風邪を引いて欲しくないだけだ。

司

お、おぉ…互いを思う故の争いか…？

司

だが、早く帰った方がいいぞ。この後どんどん強くなるみたいだからな。

類

ねぇねぇ、司くーん。やっぱり傘無かった〜

司

いや、お前今朝カバンに入っとっただろ。見たぞ。

類

えぇ？見間違いじゃないの？

司

むっ、ならカバンを見せてみろ。

類

もう、君ってば本当に察しが悪いねぇ

類

傘入れてよ。やってみたかったんだよね、相合傘。

司

あッッ？！？！

類

ね、やろうよ。

司

せ……狭いだろ。

類

別に僕濡れてもいいよ。

司

良くないわ！！！

彰人

ちょっとぉ、ここでイチャイチャしないでもらえます？

類

おやおや、すまないねぇ

冬弥

(相合傘…って、あれか。二人で同じ傘を使う…)

司

ま、まぁ…お前がやりたいのなら…

類

ふふ、いいの？ありがとう♪

類

じゃあまたね、2人とも。君らも早く帰るんだよ〜

冬弥

はい、さようなら。お気を付けて。

彰人

……俺らも帰るか。

冬弥

あぁ。

ザーーーーッ

冬弥

(結局負けてしまった……)

彰人

マジで雨ヤベェなこれ

冬弥

彰人…やっぱりかなり濡れてるじゃないか。

彰人

どうせすぐ家帰って風呂入るし、大丈夫だって。

冬弥

…

彰人

…なんだよ。

冬弥

いや、髪が濡れてるなと…

彰人

は？いや、まぁ…それが？

冬弥

普段より少し幼く見えて可愛いと思った。

彰人

バーカ。男に可愛いは言わねぇだろ。

冬弥

男というより、彰人にだから言ったんだが…

彰人

余計にやめろ。恥ずい。

冬弥

すまない。

「〇〇駅〜〇〇駅〜」

彰人

あ、お前の駅か。

冬弥

あぁ。彰人、また明日。

彰人

おう、また明日。

「尚、大雨と暴風により、〇〇線をこのまま一時運転停止致します。」

「運転再開はおよそ1〜2時間後を予定しております。」

「ご利用のお客様に多大な迷惑をお掛けすることを、深くお詫び申し上げます。」

冬弥

……運転停止って、

彰人

うわ、マジか。だる。

彰人

母さんに来てもらうか……いやでも、今日いないって言ってたな…

彰人

あー、タクシー…

冬弥

彰人と同じ状況の人がたくさん利用しそうだな。

彰人

だよな〜

彰人

ま、運転再開まで時間潰して待つわ。お前は先に帰れよ。

冬弥

だが、1〜2時間後だぞ。その状態だと風邪を引いてしまう。

彰人

そこまで弱くねぇから大丈夫。

冬弥

いいや、ダメだ。

冬弥

…今日は父さんがいないんだ。泊まりに来ないか？

彰人

えっ、流石にいきなり過ぎだろ。

冬弥

彰人ならいつでも連れてきていいと、許可を貰ってる。

彰人

着替えとかねぇし

冬弥

俺ので良ければ使ってくれ。

彰人

……一応、お前の母さんに聞いてみてもいい？

冬弥

えっ

冬弥

(母さんと彰人が連絡を…なんだか…少し複雑なような…)

彰人

すげぇ、二つ返事でOK出た。

冬弥

は、早いな。

彰人

悪いけど、泊まらせてもらってもいい？

冬弥

あぁ！もちろん！

青柳家

冬弥

ただいま。

冬弥の母

あら！2人とも、おかえりなさい。

彰人

すみません、お邪魔します。

冬弥の母

いいえ、いらっしゃい。

冬弥の母

寒かったでしょう？お風呂が沸いてますよ。

冬弥

ありがとう。

冬弥

彰人、先に入ってくるといい。

彰人

え、いや、冬弥が先入れよ。

冬弥

彰人の方が濡れてる。それに、傘は俺が妥協した。

彰人

あー……

彰人

…分かった。じゃあ先借りる。

冬弥

あぁ。

夕食後

彰人

なんか、冬弥ん家にお邪魔しすぎな気がする。

冬弥

俺は彰人と一緒にいれて嬉しいが…

彰人

いや、それは俺もだけど…

彰人

つか、そろそろお前の父さんにも挨拶はした方がいいだろ。

冬弥

…………

彰人

え、そんなに嫌？

冬弥

あまり会わせたくはない…

彰人

そんなにか……

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

冬弥

！

彰人

あー、固定電話？

冬弥

母さんは今風呂だし…ちょっと出てくる。

彰人

おう。

冬弥

もしもし、青柳です。

「もしもし、冬弥？」

冬弥

！！

「今日、寒いな。雨降ってる。」

冬弥

(また、彰人の声……)

「今、妹沼町まで来た。」

冬弥

(妹沼町…？どこだ…？)

「なぁ、迎えに来てくんねぇの？」

冬弥

(どうする…もし怪異か何かなのだとしたら、返事はしない方がいい…？)

「…そ。ならいい。」

プツッ

ツーツーツー…

冬弥

……本当に何なんだ…？

冬弥

なぁ、彰人……

冬弥

？！

冬弥

(い、いない？！)

冬弥

彰人？！どこだ？！

冬弥

あき…

彰人

あ、悪い…勝手に部屋入った。

冬弥

よ、良かった……いた…

冬弥

部屋に入るのは構わない。ただ、急にいなくならないでくれ…

彰人

悪いな。

冬弥

それにしても、何故急に部屋に？

彰人

……頭痛が、

彰人

お前が電話取った瞬間から、頭がすげぇ痛くなって…モモイさんが、ここなら大丈夫だって言うから、

冬弥

え？モモイさん？

アイリ

こんばんは、冬弥くん。

冬弥

？！

彰人

なぁ、誰からの電話だった？

冬弥

あ、あぁ…昨日と同じく、彰人の声から…

冬弥

だが…やはり、怪異なんだな…

彰人

あぁ、だろうな。

アイリ

それも、結構強大だわ。とんでもないのに目を付けられてるみたいね。

冬弥

そ、そうなんですか？

アイリ

えぇ。何か心当たりは？

冬弥

いえ、全く……

彰人

…電話、今日は何て言われた？

冬弥

あぁ、「妹沼町にいる」と…

彰人

妹沼町……

彰人

えっと、瓶切町から、2つ隣の町らしいな。

彰人

こっちに近付いて来てるって事か。

冬弥

こっちに…

アイリ

それが何なのかはまだ分からないけど…マズイでしょうね。

アイリ

1日でこの移動距離なら……あと1週間って所かしら。

冬弥

い、1週間…

アイリ

彰人くんはしばらく、ここに来ない方がいいわ。

彰人

えっ

アイリ

危ないもの。巻き込まれちゃうわよ。

彰人

けど、冬弥も危ないじゃないですか。

アイリ

悪いけど、私は彰人くん以外に興味無いの。貴方が無事なら他は何だっていいわ。

彰人

……じゃ、冬弥しばらく家来いよ。

冬弥

えっ？

彰人

冬弥の家に向かってきてるんなら、別の場所にいればいいだろ。

アイリ

ダメよ。すぐにバレて、彰人くんの家まで来るわ。

アイリ

わざわざ、自分から巻き込まれに行く必要は無いわ。

彰人

いや、あります。

彰人

冬弥は俺の…友達なんで。

冬弥

！！

アイリ

……そうよね。

アイリ

貴方は全く関係のない私を、身を挺して助けるくらいだもの。

アイリ

お友達なんて…命に代えてでも守りたいわよね…

冬弥

(友達…！！)

アイリ

…2日、時間を頂戴。冬弥くんを狙っているのが何なのか、調べてくるわ。

アイリ

ただ、その間、私は彰人くんの傍にいられない。

アイリ

だから…いい？貴方に任せるわよ。

冬弥

！

冬弥

はい。絶対、何に代えても。

アイリ

……信じるわ。

翌日

友人

お、彰人ー！おはよー

彰人

おぉ、おはよ。

友人

青柳もおはよー

冬弥

あぁ、おはよう。

友人

……なな、1個聞いていい？

彰人

おう。

友人

お前らいつにも増して近くね？

冬弥

そうだろうか？

彰人

まぁ、いつもより5センチくらい近いかもな。

友人

お前らほんと仲良いのな〜

冬弥

あ、彰人！そこは段差があるから気を付けてくれ。

彰人

お、おぉ

彰人

……お前、ちょっと気張り過ぎだぞ。

冬弥

モモイさんに託されたんだ。俺が彰人を守らなければ。

彰人

だからって、そこまで気張り詰める必要はねぇよ。

彰人

お前は隣にいるだけで十分なんだし。この間言っただろ？

冬弥

そうかもしれないが…

冬弥

だが…何があるか分からない。俺のせいで彰人を危険な目に遭わせるわけには、

彰人

心配し過ぎだっての。別に、普段通りでいいと思うぞ。

冬弥

普段通り…

彰人

まぁ、真面目なお前らしいけどな。

友人

…2人だけの世界入ってるとこ悪いんだけど、もうすぐ予鈴なるぞ〜

彰人

あれ、お前いたのかよ

友人

ずっと見せつけられてたわ

冬弥

すまない。そんなつもりは無かったんだが…

彰人

先行ってても良かったんだぞ。

友人

いや、放っておいたらお前ら遅刻しそうだったし

友人

お前らほんと仲良くなったよな〜

彰人

まーな。

更に翌日

東雲家

冬弥

今日はご両親もお姉さんもいないんだな。

彰人

おう。帰りは深夜だとさ。

彰人

風呂と飯、どっち先にする？

冬弥

えっと…

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

冬弥

！！

彰人

！

冬弥

……電話だな、

彰人

あぁ……

冬弥

あの怪異か…だが、普通に客人の可能性も…

彰人

いや、絶対ない。

彰人

……電話線、抜いておいたんだよ。普通鳴らねぇ。

冬弥

！？

彰人

だから、絶対出ねぇぞ。いいな？

冬弥

あ、あぁ。分かった。

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

彰人

先に飯食うか。母さんが作ってくれてるから、すぐ用意できるし。

冬弥

あぁ、手伝う。

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

冬弥

しつこいな…

彰人

だな。まぁ、気にしなきゃいいだろ。

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

彰人

げ、ニンジン入ってる…

冬弥

……1つは頑張ってみたらどうだ？

彰人

えぇ………

彰人

……………………

冬弥

む、無理はしなくていいと思うぞ！

彰人

いや、でも1つくらいは…

彰人

……

冬弥

や、やっぱり、俺がもらおう。そこまで無理して食べる必要はない。

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

彰人

…ﾁｯ、マジでしつこいな。うるせぇ

冬弥

もう20分は経つのに…

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙ…ブチッ

彰人

ん？

冬弥

と……止まった…？

彰人

止まったら止まったで、何か不気味だな…

コンコンッ

冬弥

？！

冬弥

(窓から…？)

彰人

……流石に、あの怪異じゃねぇよな？

冬弥

わ、分からない…

ニャーン

彰人

えっ？

冬弥

(猫？)

彰人

モモイさん？

冬弥

えっ？

ガラッ

アイリ

ふー、ごめんなさいね。驚かせちゃったかしら。

冬弥

！

アイリ

色々調べてきたわよ。

彰人

何か分かりました？

アイリ

えぇ。

アイリ

今、冬弥くんのことを狙ってるのは"クチナシ"っていう怪異みたい。

冬弥

"クチナシ"…？

アイリ

詳しく説明するわね。

アイリ

"クチナシ"とは元々、喜びや幸せを運ぶとして祀られていた神様…

アイリ

の、フリをしていた、ただの低級な怪異だった。

アイリ

けれど人々の信仰により、力を得た"クチナシ"は、人を襲い、喰らう凶悪な怪異へと成り果てたみたい。

彰人

けど…なんで冬弥が…？

アイリ

実を言うと、冬弥くんは全く何も悪くないし、関係ないわ。

アイリ

ただの、"クチナシ"の逆恨みよ。

冬弥

逆恨み？

アイリ

私、冬弥くんの曾祖父母のお家を調べてきたの。きぬちゃん達とね。

冬弥

！

アイリ

交渉は大変だったけれど、書斎へ入れてもらったの。

冬弥

書斎へ？！

アイリ

えぇ、そこで資料を見たところ…

アイリ

「五百扇半蔵(いおぎはんぞう)」という人が、"クチナシ"を祓い、封じたという記述があった。

冬弥

五百扇半蔵…母方の祖先ですか？

アイリ

えぇ。貴方の祓い屋家系の中でも、3番目に力の強かった人みたい。

アイリ

その人が瓶切町の井戸にクチナシを封じた。

アイリ

けど…もう200年近く経ってるからね。最近、封印が古くなってしまって、クチナシが井戸から出てきたの。

彰人

じゃあ…その半蔵って人に封じられた恨みを、子孫である冬弥に向けてるって事ですか？

アイリ

えぇ、そうなるわね。

冬弥

け、けど…たしかに子孫ですが、遠縁も遠縁です。もう血も流れてないような俺に、何故…？

アイリ

この間、帰省したでしょう？

冬弥

は、はい。

アイリ

その時、あの家から出る貴方を見たんでしょうね。そして、微かに面影も感じたんでしょう。

冬弥

じ、じゃあ……何故、彰人の声で電話を…？

アイリ

"クチナシ"には、声がないの。だからクチナシって呼ばれてるんだけど、

アイリ

クチナシは、その人と親しい人の声を真似るのよ。油断させるためにね。

冬弥

なるほど…

彰人

"クチナシ"ってのは分かりましたけど…どうすればいいんですか？

彰人

人を喰う系の怪異なら、結構マズイですよね。

アイリ

アレを消滅させるのは、まず無理ね。長く生きてるだけあって、強大な力を持ってるから。

アイリ

ただ、200年近く封印されていた事もあって、今はだいぶ弱ってる。

アイリ

消滅させられないのなら、もう一度封じ込むしかないでしょう。

冬弥

封じ込む…？

アイリ

封印の仕方も教えてもらってきたわ。まぁ、これは人間にしかできないみたいだから、どちらかにやってもらわなきゃいけないけど。

冬弥

俺がやります。

彰人

即答かよ。

冬弥

俺の家系の問題だからな。

アイリ

それなりに危険だけど、本当にやるの？

冬弥

はい。それしか方法がないのなら。

アイリ

…分かったわ。なら、準備しましょう。

アイリ

"クチナシ"を、もう一度井戸に閉じ込めるの。

冬弥

井戸…って、また瓶切町の？

アイリ

いいえ、遠すぎるわ。

アイリ

貴方たちの学校の、裏山があるでしょう？

彰人

あぁ、ありますね。

アイリ

そこに、古い井戸があるの。だから、そこに封じるわ。

アイリ

ということで、まずは御札から作りましょうか。

冬弥

御札…って、俺たちで作れるものなんですか？

アイリ

えぇ。作り方も教えてもらったから。

アイリ

まず、血を混ぜた墨を作って。

彰人

血？！

冬弥

彰人、包丁かナイフを…

彰人

え、そんなガッツリ？

アイリ

あ〜〜！針で十分よ！2、3滴垂らすくらいでいいから！

冬弥

分かりました。

アイリ

で、その墨で、このお手本そっくりに書いてね。

彰人

…なんか、すごいですね。本格的、

アイリ

陰陽師直伝だもの。

アイリ

それに「五百扇家」って、結構有名な名家なのよ。私も聞いたことあったし。

冬弥

あそこの家系、「五百扇」って言うんですね。

アイリ

えぇ。最後の陰陽師である、「五百扇三吉」さんで、五百扇の名は途絶えてしまったらしいけど。

彰人

4枚書けました。

アイリ

お疲れ様。御札はこれでOKよ。

アイリ

次に、「囮人形」を作るわ。

冬弥

囮人形…？

アイリ

彰人くん。布とお米、それと針と糸を持ってきてくれる？

彰人

分かりました。

アイリ

こうやって人型を作って、中にお米を詰めて縫ったら…

アイリ

はい、お人形さんの完成よ。

アイリ

ここに、さっきの墨で顔を描いてちょうだい。

冬弥

か、顔を…絵は不得意なのですが…

アイリ

目と鼻と口があれば問題ないわ。

冬弥

わ、分かりました。

冬弥

…描けました、

アイリ

……えっと、

アイリ

ちゃんと目と鼻と口があるわね！問題ないわよ！

冬弥

下手ですみません…

彰人

まぁ…一周まわって可愛いんじゃね？

冬弥

無理しなくていいぞ…

アイリ

これで囮人形も完成ね。あとは井戸の蓋だけだわ。

冬弥

井戸の蓋も作るんですか？

アイリ

あぁ、いいえ。もう持ってきたの。

アイリ

はい、これが蓋ね。

彰人

えっ、今どこから出しました？

アイリ

まぁまぁ、企業秘密よ。

アイリ

これに4つの御札をくっつけるの。

アイリ

こういう感じでね。

冬弥

分かりました。

アイリ

さて、これで準備はOKよ。

アイリ

作戦としては、裏山の井戸までクチナシをおびき寄せる。

アイリ

そしてこの囮人形を井戸の中に放り投げる。

アイリ

するときっと、クチナシは囮人形を追いかけて井戸へ入るわ。

アイリ

その隙に、この蓋で井戸を閉じるの。

冬弥

なるほど…作戦は理解しました。

彰人

そんな上手くいきますかね…？

アイリ

もちろん、何かしらのアクシデントが起きる可能性はあるわ。

アイリ

ただ…大丈夫よ。貴方たちのことは守るから。

冬弥

…ありがとうございます。

アイリ

クチナシがこの町にくるのは、恐らく4日後よ。その時に決行しましょう。

冬弥

はい。

4日後

裏山

アイリ

あった、この井戸よ。

彰人

結構複雑な場所にあるんですね。

冬弥

あぁ、人目につかなそうだ。

アイリ

いい？クチナシが来たら、その人形を井戸の中に放り投げて、すぐ蓋をするのよ。

冬弥

はい、分かりました。

冬弥

(クチナシ……どんな姿なんだろう、)

冬弥

(大きいのだろうか？恐ろしい見た目か？)

冬弥

(何でもいいが…彰人の声を使ったのは許せない…)

アイリ

……来る、

冬弥

！

「冬弥。」

冬弥

(っ、また……)

冬弥

？！

冬弥

(め、めちゃくちゃ口あるじゃないか！むしろ口しかない…！)

彰人

クチアリじゃん、

クチナシ

ｱ……アア、

クチナシ

ィ……ユルサナイ……

クチナシ

ハンゾウ……イオギ……

クチナシ

コロス……イオギ…コロス……

冬弥

(物凄い殺気だな…)

アイリ

…大丈夫？流石に怖いかしら？

冬弥

あぁ、全く怖くないと言えば嘘になりますが…でも、大丈夫です。

クチナシ

ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ

そう叫びながら、クチナシがこちらに走ってきた。

冬弥

(っ、今！)

「囮人形」を井戸目掛けて放り投げた。

冬弥

(入るか……？！)

「囮人形」はまるで意志を持ったように、吸い込まれるように井戸の中へと落ちていった。

クチナシは「囮人形」を追いかけ、勢いよく井戸の中へ飛び込んだ。

ドォォンッ

アイリ

蓋っ！蓋して！

冬弥

は、はい！

バンッ！

彰人

……閉じれた？

冬弥

恐らく…？

彰人

これ離すの怖いんだけど、離して大丈夫なやつ？

冬弥

わ、分からないが…御札はちゃんと張り付いてるみたいだ。

彰人

じゃ、離してみるか？とりあえず、せーので。

冬弥

あぁ、分かった。

彰人

せーの

シーン…

冬弥

……大丈夫…か？

彰人

多分…？

ガタッガタガタガタッ

彰人

うわっ？！大丈夫じゃねぇわ！

アイリ

と、とりあえず重しでも乗せましょ！石とか！

冬弥

わ、分かりました！

ガタガタガタッ

彰人

ふー……まだ音鳴ってるけど、流石に弱くなったな。

冬弥

あぁ。流石にこの重さは開けられないらしい。

アイリ

ただ、流石に素人だから不安定ね……10年…良くて20年は持つでしょうけど、

冬弥

良くて20年ですか…

彰人

何かない限りは、まだ生きてる歳だな。

アイリ

もしかしたら、20年後また封じ直さなきゃいけないかもしれないわね。

アイリ

とはいえ、しばらくは大丈夫！お疲れ様。

冬弥

あ…ありがとうございました、色々と…

アイリ

いいのよ。彰人くんのお友達なんだもの。

アイリ

だけど…気を付けなさいね。

アイリ

血はもうほとんど流れてないでしょうけど、一応貴方は五百扇の血筋なの。

アイリ

今後、今回みたいな事が無いことを祈るけど…

冬弥

…はい、気を付けます。

冬弥

(護身だけでなく、封印なんかも学んだ方がいいのだろうか…)

彰人

…ま、とりあえず帰ろうぜ。ここ気味悪いし。

冬弥

あぁ、そうだな。

冬弥

(もう、井戸から音は聞こえないが…)

冬弥

(……気を付けよう。)

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初コメ失礼します！あかまるさんの作品はすっごく怖くてでも面白くて好きです！これからも頑張ってください！！！

わぁ✨️✨️✨️ あかまる様の怖いお話に毎回感激させてもらっています！モモイさんかっこいいですね！彰人くんも冬弥くんもめちゃめちゃ頑張ってて、本当にすごかったです！

続きめっちゃ楽しみです！！！！怖いのに何故か毎回寝る前に見てしまいます笑

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