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季節は春から初夏へと変わる頃。 咲は、ひとりで教室の窓から外を眺めていた。
咲
哲汰はライブのリハーサルで 連日忙しくなっていた。 朝から深夜までダンス、歌、立ち位置、演出、 全てのチェックを繰り返す日々。
哲汰
哲汰
哲汰
咲
哲汰
哲汰
咲
でも、そこには“会話”はなくなっていた。
会えなくなってから、もう2週間近く経つ。
学校帰りにふと、哲汰とよく歩いた道を通る。 手を繋いだこと、くだらないことで笑ったこと、ふとした視線にドキドキしたこと―― 全部、あっという間に過去の景色になっていた。
咲はスマホを見た。 メッセージの履歴には哲汰の優しいスタンプが並んでいたけれど、画面越しでは満たされない。
咲
哲汰は夢に向かって走ってる。 それを応援したい気持ちはある。 でも、心の奥で「置いていかれてる」ような、 不安な感情が膨らんでいた。
次の日の放課後。 教室を出ようとした咲の目の前に、 息を切らした哲汰が現れた。
哲汰
咲
哲汰
不意に、胸がぎゅっとなった。
哲汰
哲汰は申し訳なさそうに言う。
咲は俯いたまま、小さな声でつぶやいた。
咲
その言葉に、哲汰の目が見開かれる。 次の瞬間、優しく咲の頭に手を置いて言った。
哲汰
咲
哲汰
その声が、咲の胸の奥にまっすぐ届く。 そして咲は、少し照れたように小さく頷いた。
哲汰
咲
二人はそのまま、人気のない校庭のベンチに 腰掛けて、ただ、並んで座った。 言葉は少なくても、心は近かった。
忙しい日々の中でも、 確かに「大切」がそこにある。 そんなことを実感する、静かな夕暮れだった。