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ライブまであと1週間。 哲汰はついに、学校にも来れなくなった。

「最後の追い込み」とメッセージには 書いてあったけど、 咲のスマホは静かだった。通知は来ない。

放課後の教室、咲はひとりで 机に突っ伏していた。 教科書は開いたまま、何も頭に入ってこない。

そんな帰り道――

昇降口へ向かう階段の踊り場で、 見覚えのある男が立っていた。

数週間前、何気なく言葉を 交わしただけの同級生。

ちょっと軽くて、けれど妙に距離の詰め方が 上手い男だった。

男子生徒

久しぶり。
最近、元気なさそうじゃん

……別に

男子生徒

そっか。でもさ、
こんなに静かな咲ちゃんって
珍しいし。夜、少し話さない?

咲は迷った。けれど、哲汰とも話せてない今、 誰かと話したい気持ちがあったのかもしれない。

……うん。ちょっとだけなら

夜。待ち合わせの場所は、公園の奥のベンチ。

男は笑いながら、コンビニで買った ジュースを渡してくれた。 最初は他愛のない話だった。学校のこと、 最近の流行り、くだらない噂話。

けれど――

男子生徒

咲ちゃんってさ、
俺のことどう思ってる?

え?

男子生徒

こんなに近くにいるのにさ。
いつも遠いとこ見てる気がして、悔しいんだよね

咲の胸に、不意に冷たい不安が走った。 男の目が、笑っていないことに気づいた。

男子生徒

ちょっとだけでいいから、
こっち向いてよ

手首を掴まれた。 引き寄せられそうになって――

やめて!!

咲は震える声で言った。 でも男の手は離れない。

男子生徒

咲ちゃんってさ、断れないよね。そこが、すごく……いい

逃げなきゃ。そう思った瞬間、 咲は力いっぱい手を振り払って走った。

靴が脱げかけても、後ろの呼びかけを無視して、必死に暗い公園を抜けた。

――胸が苦しい。足がもつれる。涙が滲む。

ようやく明かりのある道に出た時、 咲の心の中に浮かんだのは――哲汰の顔だった。

(どうして私、こんなことに……)

その夜、咲は布団の中で ひとり声を殺して泣いた。

怖くて、悲しくて、情けなくて。 でもそれ以上に、 哲汰に「会いたい」と願っていた。

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