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こよい
63
紅
449
羽海汐遠
13,153
降りしきる雨と、鼻を突く焦げくさい臭い。 路地裏の奥深く、打ち捨てられた廃ビルの内部は、破壊された瓦礫と冷たい沈黙に支配されていた。 少し前まで響き渡っていた怒号も、肉が引き裂かれる不穏な音も、今はもう聞こえない。 (……あついな。僕は何してたんだっけ、?) 赤黒い血だまりの中で、1人の男は意識を失いかけていた。 視界は激しく揺れ、自分がなぜこの場所にいるのか、そもそも何が起きたのかさえわかっていなかった。 覚えているのは自分の年齢、性別、身長ぐらいで、名前も家族の顔も、全てが白いモヤのように消え去っていった。 「隊長、コイツまだ息があります。」 頭の方から低くて、冷ややかな男の声が聞こえた。 そして、足音がどんどん近づいてくる。 「ぁ、?」 「ふん、唯一の生き残りか。」 倒れている男の視界に捉えたのは、 ロングコートを着ており、その下にシャツを着ている隊長と呼ばれる女の姿と、スーツとマフラーをしている最初に声をかけた男の姿だった。 「どうしますか?隊長、コイツ処分しますか?」 まるでゴミの分裂をするかのように、男は淡々と話した。 倒れている男は、その言葉の意味を理解し、震えた。 声は出そうとするが、干からびて、擦れた音しか出ない。 隊長と呼ばれる女は倒れている男の前で、しゃがみ手を顎に当て、悩んだ。 数秒した後に、口を開いた。 「いや、連れて帰ろう。」 「あれ、珍しいじゃないですか。」 「…頭部を激しく損傷している。きっと記憶もなくなっているだろう。」 「__、背負えるか?」 「余裕ですよ。」 そして、容赦なく倒れていた男を背負った。 激しい痛みに倒れていた男が小さな悲鳴をあげた。 女の方の人が口を開いた。 「お前、名前わかる?」 「…ぁ、から…い。」 「…なら、お前は今日から"チアキ"と名乗れ。特に意味なんてない。それでもアタシたちの組織に行くんだ。名前がないと不便だからな。」 それが、チアキと付けられた男の最後に聞いた言葉だった。 視界が急速に暗転し、チアキの意識は深い闇へと落ちていった。 世界を裏から牛耳る超大型組織——【赫月組織】の巨大な影に、呑み込まれていくことも知らずに。
コメント
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うわ、いきなり記憶喪失の現場から始まるの、すごく引き込まれました。雨と焦げ臭い匂いの描写が生々しくて、その場にいるような臨場感がありましたね。「チアキ」という名前も、「辛い」から取ったのかな?って勝手に想像してしまいました。隊長の女が連れて帰る判断をしたのも気になるし、赫月組織という超大型組織の影がどうチアキを呑み込んでいくのか、続きがすごく気になります。