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確かに僕は、この手で両親を殺した

その後は、組織の人間に拾われて、 スパイとして生きることを決めて…… それで、今に至る

だからこそ、そらるさんが僕の両親の 仇っていうのはあり得ないんだ

ニコ

仇っていうのは、そういうことじゃなくて……

真冬

っ……どういうこと?

ニコ

まふに両親を殺させようと仕向けたのが、そいつ

真冬

は……?

僕に殺させるよう、仕向けた?

ニコ

今回願いを叶えるにあたって、渡された一ノ瀬さんの弱みは、“自分の正体がスパイであること”。

ニコ

けど、その後少し調べさせてもらったんだよね。まふの時みたいに、これじゃ足りないから。

ニコ

そしたら出てきたよ。……“相川真冬に両親を殺させるよう仕向けたこと”って弱みが

真冬

……!?

ニコ

本人に話したら口止めされたし、別にまふに言わなきゃいけないわけじゃないから、黙ってたけどね。

ニコ

ほら、高校の時、仲良い人とかいなかった?

真冬

(仲が良かった人……?)

真冬

(……え? いや、まさかっ……)

ニコ

……一ノ瀬さん、流石にまだ死んでませんよね。急所は外してますから。

ニコ

よければ何か応えていただいても?

彼方

っ……

ニコの声に応えるように、地面で 蹲っていたそらるさんが、呻きながら 柱伝いに起き上がる

彼方

……そうだよ、俺が仕向けた

真冬

っ……!

彼方

……。

彼方

……なぁ、真冬

真冬

え……?

不意に、下の名前で呼ばれる

彼方

覚えてる? 俺のこと

この口調と、声色は……

真冬

(やっぱり……?)

真冬

……翔琉、先輩?

僕がそう呼ぶと、 小さく頷いたそらるさん

今、先輩の行動を思い出してみれば、 怪しいところが沢山あった

あんな嘘をついて、銃で僕に殺しを させて、それから音信不通になって

真冬

っ……あの時、友達になったのは……全部、嘘だったんですか……?

彼方

……ごめん

僕とそらるさんの歳は3つ差がある

今の年齢を偽ってないなら、昔は 年齢詐称して高校に潜り込んでて……

あの時の“翔琉先輩”の親役も、 きっとスパイの仲間だったんだろう

彼方

これは、言い訳になるけど……俺は、組織に命令されてやっただけ。“相川真冬に両親を殺させろ”って任務で

真冬

え……? な、何で組織が……

僕は親を殺して、行く宛が なくなったところを、偶然出会った 組織の人に拾われた

真冬

(命の恩人なのに、なんで……??)

彼方

……それは言えない

気まずそうに、 顔を俯かせたそらるさん

ニコ

“相川真冬を組織に引き込む為”、でしたっけ?

彼方

っ……!!

真冬

え……

僕を、組織に引き込む為……?

真冬

じゃあ……僕は、その為に……?

親を殺したこんな僕を、あの組織が 拾ってくれた、必要としてくれた

それはあの時の僕にとって、 唯一の救いだったんだ

たとえそれが、裏のスパイ組織でも

暗殺の任務は、 僕にはさせないでいてくれた

殺人を犯したことも、隠してくれた

同志……スパイの仲間達だって、 みんな仲良くしてくれたのに……

真冬

(っ、なのに……)

本当は全部、組織側の 自作自演だったってこと……?

彼方

っ、けど俺は、元々その目的は知らなかったんだ。

彼方

お前に親を殺させろってことだけ伝えられて、そうさせた後に聞いたから。

彼方

っそうじゃなかったら、こんな悪趣味な任務は蹴ってた

真冬

……僕、裏組織とは無関係の、ただの高校生でしたよね……?

彼方

……あぁ

真冬

なんで、僕だっんですか……?

彼方

それは……

真冬

なんで、父さん達が殺されなきゃいけなかったんですか……??

彼方

っ……

真冬

なんで……なんで、僕が……!

腕の力が抜けて、ずっと構えていた 銃が、重い音を響かせて地面に落ちる

色んな感情がぐちゃぐちゃに 混ざり合って、何が何だか、 もうよく分からなかった

彼方

っ……ニコさん

ニコ

なんですか?

彼方

一つ、聞かせて欲しい。

彼方

組織が与えた任務の内容は、絶対外部に漏れないようになってるはず。ハッキングしたところで、それは変わらない。

彼方

ネット上に、組織関連の情報……特に任務の内容については、一切載せていないから。

彼方

……なのに、何で俺の任務を……それも、そこまで詳しく知ってたんだ?

ニコ

……

ニコが、色々知ってる理由……?

真冬

(たしかに、言われてみればそうだ……。)

真冬

(そらるさんのことだけじゃなくて、昔の僕のことも組織関連のはずなのに、何で……?)

ニコ

ん〜……それは言えません

真冬

っ、じゃあ、もう一つ

2人の会話に、前のめり気味に 口を挟む

ニコ

どうぞ?

真冬

もしかして、『何でも屋』は……。

真冬

……“万屋”は、組織と繋がってるの?

ニコ

……なるほど、そう来るか

普段見えないニコの赤い目が、地下の 暗闇の中で、鋭く光ったように見える

『何でも屋』の正式名称であり、 ニコの本当の肩書き、それが万屋

“万屋ニコ”は、元は裏世界で 暗躍していた殺し屋だった

雇われれば任務は必ず遂行、 失敗例はゼロの、店名通りの 腕を持っているやり手

『何でも屋』と正体を隠して表に出た 今でも、裏ルートで知った人が、 殺しの依頼をしてくることもあった

数年前、俺が“万屋抑圧”の任務を 与えられて、『何でも屋』に客として 潜入したのが、僕とニコとの出会い

そこで、自分の正体…… “スパイであること”を対価に、 ここの社長になることを願った

だけど、さっきのニコの話みたいに、 どこから聞きつけたのか、僕が自分の 両親を殺したことを知られて

弱みのせいで、自分の身はその場に 縛られたけど……組織の為と思えた から、その時はそれでよかった

金銭面は組織が全負担してくれたし、 僕らにできない依頼も、組織に頼めば 粗方こなしてくれていた

真冬

(だけど……もし、ニコと組織がつながってたなら……)

ニコ

……。

ニコ

……答えはイエス。まふの言った通り、『何でも屋』と組織は繋がってる。

ニコ

正確には、繋げられてる、だけど

彼方

繋げられてる……?

ニコ

うちの万屋が『何でも屋』になったのは、まふが組織に入るより前、組織が俺に接触してきてから。

ニコ

“警察に突き出さない、もしくは抹殺しない代わりに、組織の汚れ仕事を担当してくれ”ってね。

ニコ

ほら、2人とも、今まで暗殺の任務とかしたことないんじゃない?

真冬

(そういえば……)

過去のことがあったからら免除 してくれてたんだと思ってたけど…… そう言うわけじゃなかったの?

ニコ

ただ、それだけじゃこっちが不利だから、組織の情報を流してもらうことにしたんだよね。

ニコ

それで、2人の任務の内容を知ってたわけ

真冬

じゃあ、“俺”が『何でも屋』に行った時も……

ニコ

うん、組織の任務で来たんだって知ってたよ。まさか、“社長にさせて欲しい”なんて言われると思わなかったけど。

ニコ

あの時まふは、“『何でも屋』抑圧”って任務で来たんだっけ?

真冬

……そうだよ。組織と繋がってるなんて知らなかったし。その時は、潜入しろとだけ言われて……。

真冬

……それ以降、組織の上から連絡が来なくなった

ニコ

まふは俺のお目付役として送られたんだと思うよ。それで一ノ瀬さんは、そのまふのお目付役?

彼方

“『何でも屋』の相川真冬の動向を探れ”って任務で。……対象の名前を聞いて、すぐに真冬のことだって分かった。

彼方

けどその時は、組織側から『何でも屋』に寝返ったと思ってた

ニコ

そんな中、こうして“一ノ瀬彼方の暗殺”なんて依頼が来た。

ニコ

普段組織からの暗殺任務は俺に直接連絡が来るけど、今回は異例。

ニコ

この任務は、二階堂祐介が個人的に依頼しただけ。……でも組織は、それを知っても止めようとはしなかった。

ニコ

組織から来た俺の任務は、“相川真冬に一ノ瀬彼方を殺させて、相川真冬を殺すこと”。もしくは、“相川真冬と一ノ瀬彼方、両名を抹殺すること”

真冬

は……?

彼方

何だ、それ……

ニコ

これじゃまるで、2人とも組織から切られたみたいな任務内容。けど、組織はそれが狙いだった。

ニコ

つまり2人とも、もう用済みってことでしょ

元から組織に操られてた僕は まだしも、昔からいそらるさんまで、 どうして……??

ニコ

原因は、歌い手活動、もしくは相方として、人と馴れ合いすぎたこと。たとえ裏の世界と無関係な人間であっても、スパイにとってそれは禁忌。

ニコ

誰がターゲットになるか分からないし、いちいち人に情を湧かせてたら、話にならないからね

真冬

そんな、たったそれだけで……?

ニコ

“たったそれだけ”で消されるんだよ。この世界では、常に気を張ってなきゃ殺される。

ニコ

そんな弱肉強食の世界なのに、まふは甘く見過ぎ。

ニコ

前から思ってたけど……ほんと、よくここまで生きて来れたよね

真冬

っ……!

冷たい声色で、 嘲笑うかのように言われる

真冬

っ……そっか。ニコは僕のこと、ずっとそう思ってたんだ

ニコ

うん、そうだよ?

真冬

ニコが知ってることは、これで全部?

ニコ

……多分。知りたいことは知れた?

真冬

知りたくなかったことまで知れたよ

ニコ

なら良かった

そう言った後、ニコが銃口を 下ろして、帯に挟んでいるもう一丁の 銃に手をかけた

真冬

何だっけ、それ……万引き銃メン?

ニコ

よく覚えてるね。そうだよ、2人とも対価無しにうちの“商品”を万引きしてったからね

真冬

そういえばそうだっけ……。

真冬

……ニコ、撃つなら撃てば?

ニコ

……

僕に銃を構えたまま、 黙ってしまったニコ

彼方

……?

彼方

……ニコさん、その銃本物ですか?

不意に、そらるさんがニコの銃を 見て、そう問いかける

ニコ

……一ノ瀬さん、実銃を扱ったことは?

彼方

撃ったことはないけど、見たり持ったりしたことなら

ニコ

そうですか。

ニコ

……流石スパイだ

パンッ

真冬

っ!

真冬

……え?

撃たれたかと思えば、 チクリとした痛みだけ走って……

地面に、BB弾がコロコロと転がった

真冬

え……それ、エアガン……?

ニコ

万引き捕まえるのに、本物使って殺すわけないでしょ。

ニコ

罰はこれくらいにして、罪を償ってもらわなきゃ

そう言って、銃を元の 定位置に戻したニコ

真冬

罪って、僕らのことを殺すんじゃ……

ニコ

殺すよ。それが組織の“願い”だから

彼方

じゃあ、何で殺さないんですか?

少し食い気味に、そらるさんが言う

彼方

そんな悠長に長話して……もしかして、殺す気ないんじゃないですか?

ニコ

……いえ。ただ、何も知らずに死ぬのは、まふが可哀想かなと。

ニコ

ここまでの人生で失ったものが多すぎるので、最期くらい何か与えてもいいと思っただけです

彼方

……真冬を、“可哀想”と?

ニコ

っ……!

真冬

あ……

今ニコ、“可哀想”って言った?

真冬

裏の世界では、“情”は不必要なんじゃなかったの?

ニコ

言葉の綾ってやつ。そんなつもりで言ったんじゃない

僅かだけど、ニコの表情と声に 焦りが見え始める

真冬

……ねぇ、ニコ

もしかして、と思って、落としていた 銃を拾い上げて、ニコのそばへ近づく

それから、ニコの手を 取って銃を握らせた

その銃口を、自分の心臓へ押し当てる

ニコ

っ、何のつもり?

真冬

殺せるなら殺してよ。できるんでしょ?

真っ直ぐニコを見つめて、 その場で留まる

ニコ

っ……!

ニコ

…………。

ニコ

……まふ、この銃じゃ誰も殺せない

カチッ

真冬

え……?

ニコが引き鉄を引いても、 銃はうんともすんとも言わない

彼方

空砲……?

そらるさんを……“谷橋朝陽”を 殺せって、この銃を渡してきたのは ニコなのに、どうして……?

ニコ

っ……殺させられるわけないだろ

真冬

っ!

カタンッ

僕が持たせていた銃を、ニコが 乱暴に床に放り投げる

真冬

ニコ……?

ニコ

2人に話してなかったことが、まだ2つ。

ニコ

1つ目。万屋を立ち上げる前、俺は2人と同じ組織のスパイだった

真冬

え……?

ニコ

2つ目。

ニコ

……組織に入った経緯が、まふとそっくり瓜二つ

かえで

かえでです

かえで

メインでやっていたストーリーが完結したので、こちらもまたゆっくり再始動していきます!

かえで

もう少ししたらまた新しく連載をスタートしようと思っています

かえで

始めるのはこっちが終わったらって言ったけど、まだちょっとかかりそうだなと…w

かえで

明日はそのストーリーの設定とかだけ、先に出そうと思ってます

かえで

と言うわけで、お楽しみに…

かえで

おつえで!

『何でも屋』〜貴方の願い、“何でも”叶えます〜

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