私には6歳と4歳の息子がいる
その日、雑誌編集者の妻は 年末進行のため仕事に出ていて 代わりに私が子供たちの面倒を 見ることになっていた
昼食をとり3人で公園へ出かけた
私は誰もいない公園のベンチに座り
読みかけの新書に目を落とした
縄跳びがリズムよく空を切る音と 一緒に下の息子の声が聞こえる
下の息子
兄ちゃん、貸してよ!
下の息子
ねえ!こっち使っていいから!
上の息子の青い縄跳びが 欲しいのだろう
下の息子のはもっと短い 赤い縄跳びだったからな
せめて同じ色のものを 買うべきだった
また大喧嘩になる
この年頃の男の子が 自分から弟にものを 貸すことは普通無い
この日は兄が無視を 決め込んでいるようだ
となると私に泣きついてくる しかない
下の息子が小走りでやってくる
そらきた
私は本から目を上げた
下の息子
兄ちゃんが冷たいよ
まあ泣いていないだけ偉い
喧嘩もしなかったし
おや、でもこいつは ちゃんと兄の縄跳びを 持っているじゃないか
そこで私は
私
そんなことないよ
私
お兄ちゃんらしく
縄跳びを貸してくれたろ?
縄跳びを貸してくれたろ?
私
ありがとうって言って
もうちょっと
一緒に遊んでおいで
もうちょっと
一緒に遊んでおいで
私は再び本を開いた
弟の足音が遠ざかる
下の息子
兄ちゃん、ありがとう
声の後に幼い手が拙く 縄跳びを回す音が聞こえてきた
ゆゆ茶
「兄ちゃんが冷たいよ」
ゆゆ茶
兄の態度が
冷たいのではなく
冷たいのではなく
ゆゆ茶
兄は死んでしまっている
ゆゆ茶
弟が縄をとる時に
ゆゆ茶
謝って首に
ひっかけて
しまったのか
ひっかけて
しまったのか
ゆゆ茶
それとも故意に
首を閉めたのか
どちらか
首を閉めたのか
どちらか