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野乃子
目の前の客から再び
女性客たち
男性客たち
という言葉が飛び交う。
私は軽く頷いて次の流れに移る。
野乃子
夏下さんはギターを奏でながら
夏下
って言っている。
野乃子
岩井さんもベースを奏でながら
岩井
って言った。
野乃子
キーボードを奏でながら
川根
と自己紹介する川根さん。
野乃子
静かな空気が流れる。
それもそのはず。
私たちの曲に合うようにドラムを叩く音を作り上げたが、自己紹介として彼の声の録音を作ってはなかったのだ。
それでもお客さんは彼に対して拍手をする。その拍手の優しさが心に痛む。
嫌ではなく、嬉しいのだ。彼も含めて私たちのバンドを応援していると感じるのだから。
野乃子
拍手の嵐がまた巻き起こる。
私は仲間たちの伴奏と共に『涙歌待人』を歌い始める。
1.私たちはあなたを待っている この歌に合わせて待ち続ける こうして待人になったんだ 待つんだと思ってなんかない あなたを待ちたいから待つんだ あなたが帰ってくることを信じて 私の目から一筋の涙が こぼれたとしても 歌うよー それが私たち…… 涙歌待人ー
2.私たちは心に決めている たとえあなたが帰って来なくても 待人になり続けるんだ 何日でも何年でも関係ない あなたを待ちたいから待つんだ あなたがいないとだめだから 私の目から一筋の涙が 袖に付いても 歌うよー 私たちの名は…… 涙歌待人ー
(ささやき声で歌う)
私たちは分かっているよ あなたが帰って来ないことなんて 知ってるよ でもあなたの居場所はここだから 私たちは待人として あなたを待つんだ
(普通の歌う声に戻す)
たとえ私のこの涙が 止まらなくても 歌うよー だから私たちは… 涙歌待人ー あなたを待つ… 涙歌待人ー…
曲が終わった。
私は一人の男に目が入ってしまった。
そう、開始前に見つけた宗司だった。
彼は大きく何回も頷き、そして薄らと消え去ってしまった。
そこには何もなかったかのように茶髪のポニーテールの女の子がその場にいた。
いわゆる幽霊って奴か。
夏下
と夏下さんにまた注意を受けてしまった。