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とある研究室

博士

助手君や、ついにすごい発明ができそうだぞ!

助手

ついにぼけたか、じじい?

博士

なんたる口のきき方!

博士

それが雇い主であるワシに対する態度か!

助手

はぁん?

助手

雇い主ってのはな

助手

給料払っている人のことをいんだよ!

助手

今月の給料どうした!

博士

いやあ

博士

この発明に全部つぎ込んでしまってのぉ

助手

くそがぁ!

助手

そこまでして何くだらないものつくってんだ!

博士

媚薬じゃ

博士

惚れ薬ともいうかの?

助手

博士、一生ついていきます

博士

すごい手のひら返し

博士

手のひらを返す風圧で嵐が起きそう

助手

……ん?

助手

でも今出来そう、って言ったか?

助手

完成したわけじゃないのか

博士

効果はこれから確認しないとな

博士

科学とはそういうものじゃよ

助手

インチキ発明家が科学を語るな!

助手

で、成功しそうなんですか、博士?

博士

情緒のジェットコースター

博士

気分の上がり下がりの落差でワシ悲鳴あげそう

博士

それはともかく

博士

成功かどうかを語るには、まず媚薬とは何かから説明する必要があるだろう

博士

一口に媚薬・惚れ薬といっても

博士

実はいろんな意味がある

助手

へぇ

助手

惚れ薬って聞くと、飲むと相手のことを好きになる……

助手

みたいなのを想像しますね

博士

惚れ薬という言い方だと、まずそれが思い浮かぶな

博士

だが、それはなかなか実現が難しい

博士

薬だけで特定の人を好きにさせる、というのは無理だろう

博士

それはもはや魔法の領域じゃ

助手

残念ですが、まあそうだろうなという気はします

博士

ただ、結果的に相手を好きにさせる薬は作れるかもしれん

助手

えっ、そうなんですか?

助手

一体どうやって?

博士

助手君は、吊り橋効果というのは聞いたことがあるかの?

助手

はい

助手

確か、吊り橋のような危険があり、緊張感でドキドキするような場所だと

助手

いっしょにいる相手のことを好きでドキドキしていると錯覚する

助手

とかそういう話ですよね?

博士

その通り

博士

薬でそれと同じようなドキドキ感を生み出すことができるかもしれん

助手

なるほど

助手

つまり、その薬を食事や飲み物にまぜると

助手

薬の効果でドキドキしているのに

助手

相手のことを好きでドキドキしていると錯覚させることができるかもしれない

助手

というわけですね

博士

そういうことじゃな

博士

ただ、これ、例えばその後会ったときにどきどきしなければ

博士

この前好きだと思ったのは勘違いだったかも、と思われるかもしれんし

博士

あるいはそもそもまったく恋愛対象じゃなければ

博士

勘違いすら発生しないかもしれない

博士

そういうわけで薬だけで相手を惚れさせる、というのは難しいわけじゃ

助手

そうすると、最初からもしかしたらいけるかも、くらいの相手に

助手

ワンナイトするくらいの効果しか期待できないわけですね

博士

そういうことになるな

博士

だからもてない男がこの薬でモテモテ

博士

なんてことはないんじゃ

助手

なぁんだぁ

助手

つまんねーの

博士

態度悪!

博士

まあまあ。媚薬の意味はそれだけではないから

助手

あとは、ええっと

助手

セッ・スしたくなる薬とか

助手

感度がよくなる薬とかを媚薬っていいますね

博士

そう!

博士

今回ワシが作ったのはどっちかというとそっちじゃ

助手

マジで?

助手

それは実現可能なんですか?

博士

まあ程度によるかな

博士

ちょっとむらむらするくらいなら

博士

普通の興奮剤とかわらないから十分可能じゃ

助手

でもそれって

助手

逆に言うと普通の興奮剤とかわらないのでは?

助手

媚薬っていうほどでもないような

博士

普通の興奮剤を自作できるなら十分すごいとは思うが

博士

まあ確かに新発明というほどでもないかもな

博士

じゃがワシの作ろうとしているのは、もっとすごいぞ

博士

理性が飛ぶくらい興奮して

博士

しかも依存性がない安全な薬だ!

助手

おお!

博士

じゃが、実験のし過ぎで材料が切れてしまった

博士

ちょっと入手のため出かけてくるので

博士

助手君はその間に研究室を掃除しておいてくれ

助手

いいですけど

助手

その薬が完成したら僕にもくださいね!

博士

わかった、わかった

博士

じゃ行ってくる

助手

さて、片づけるか……

助手

うわぁ、物が散らかりすぎだよ

助手

これじゃ何が何やら……

助手

大切なものや危険なものと

助手

ただのゴミがごちゃぐちゃに混じってるなぁ

助手

どこから片づけようかな……

ガシャン!

助手

ん?

助手

何か落としたぞ

助手

なんだこれ?

助手

金魚鉢みないなものに土がはいっている?

助手

何か特別な土かな?

助手

……ああ、蟻を飼っているのか

助手

ええっと、チリトリ、チリトリっと

サッ サッ

助手

うーん

助手

蟻がほとんどいなくなってしまった

助手

しかたない

助手

代りにそこらへんで拾った蟻を入れとくか

助手

博士のペットか何かかな?

助手

まあ、あのじじい

助手

蟻が入れ替わっててもどうせ見分けつかないだろ!

数時間後――

博士

ただいま!

博士

さあ実験を完成させるぞ!

数日後

助手

博士、媚薬はどうなりました?

博士

いやあ

博士

上手くいかなかったよ

助手

ええっ!?

助手

なんでですか!

博士

それがわからんのじゃ

博士

今回の薬を作るのに、蟻の毒を使っていたんじゃが……

助手

えっ

助手

毒蟻ですか?

博士

そんなに特別なものではなくて

博士

日本に普通にいる蟻じゃよ

博士

蟻というのは 蜂の仲間じゃしな

助手

そうなんだ

博士

れで、さっきその蟻を調べてみたら

博士

特殊な成分がまったくなくなっておった

博士

まるで普通の蟻といれかわったみたいじゃ!

助手

(あれ……それって?)

助手

ちなみに、研究はどこまで完成していたんですか?

博士

薬としてはほぼ完成で

博士

あとは実際の効果を試してみるだけじゃったんじゃが……

助手

いやだなぁ

助手

実験が上手くいった夢でもみてたんじゃないですか?

博士

そんなはずは……

博士

おかしいのう?

助手

(やべえ……)

助手

(蟻を逃がしたことは黙っておこっと)

博士

どうしたんじゃ?

助手

なんでもありません!

その頃、外では――

危険な蟻たちが――

終り

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