陽太
スッ、と君が息を吸った
華恋
華恋
華恋がこっちに走ってきた
優芽
気まずくなって、声が小さくなる
華恋
華恋
容赦なく聞く華恋に、戸惑う
陽太は、何故かニコニコしていた
華恋
華恋
ニコッ、と笑う華恋が、私の手を取った
陽太
陽太
手を振る君の顔が切なくて
つい、足が重くなる
優芽
待って欲しい
君の言葉が聞きたい
こんな別れ方は嫌だ
もう、会えない気がする……
陽太
違うの
そんな言葉は聞きたくなくて
もっと、違う何かが………
優芽
華恋
唖然とする二人
君のせいだよ
君が、『言いたいことは言おう』
って言ったから………
優芽
優芽
やっぱり私に自信は無くて
最後の方は声が小さくなった
華恋
今だけ、好き
真剣な瞳で聞けなかった、言葉の真相
教えてよ………
陽太
陽太
陽太
華恋
優芽
華恋と一緒の反応だ
太陽との生活ってどういうこと?
そんなことを思っていると、君が薄く笑った
陽太
陽太
俯く君は、太陽とは真反対で
優芽
「そんなことないよ」なんて。
咄嗟に言おうとしたけど
そんなことない訳なくて。
言葉に詰まった
陽太
陽太
無力だ。
君を目の前にして、なにもできない
陽太
陽太
陽太
陽太
陽太
嘘みたいだ。
きっと疑っていたと思う
君の真剣な瞳がなければ
優芽
絞り出した、第一声
か細くて、消え入りそうで
私の無力さを物語っていた
陽太
陽太
陽太
『今だけ』
上がっていった花火が、咲く時みたいな
瞼を開けて、目を覚ますような
水溜まりに雫が落ちて、波紋を広げるような
そんな一瞬は、君にとって
『今』でもあるんだね……
優芽
優芽
優芽
本音、言えたよ
君が言ったから
言いたいことは、言おう、って。
君のおかげ。
陽太
陽太
優芽
君につられて笑った
君みたいに、ふわっと笑えたかな
華恋
華恋
華恋
申し訳なさそうに、華恋が言った
優芽
でも、君とも離れたくないや。
陽太
陽太
陽太
記憶はないじゃん
とは、言わなかった
君が、笑っていたからかな
───────────
────────
日が落ちて、夜空が広がって
空が明るくなって、日が昇った
──────────
───────
陽太
陽太
陽太
優芽
あの時と同じように、私は歌った
陽太
陽太
縋るような君の声。
辿らなくても、君を見つけた
優芽
陽太
不安そうな声
ふわふわの黒髪、眠そうな目
君だ。
君みたいにふわっと笑うと、君も綿菓子みたいに笑った
変わらないな、君は。
今日も話そうよ。
話したいこと、いっぱいあるんだ。
君が飽きても、君のせいだよ?
…………なんてね。
この記憶は、君にはないか。
じゃあまず、こんなバカみたいな話、聞いてくれる?
優芽
優芽
陽太
急に話し出す私に、戸惑いもせず君は頷いた
優芽
優芽
ははは、と笑って話すと、君も笑った
陽太
優芽
優芽
優芽
優芽
ジェスチャーと擬音だらけで、自分でも意味が分からない
陽太
陽太
陽太
手のひらを振って、君が聞き流した
優芽
陽太
君が私の顔を覗き込む
顔が近くなって、触れそうだ
優芽
慌てて顔を離すと、
陽太
なんて君が聞いた
優芽
必死で否定すると、君が太陽みたいに笑った
その笑顔が朝日に反射して
本当の太陽みたいに輝いた
もうひとつの太陽って、君のことだったかもね?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
もし、君が太陽と追いかけっこしてたらさ。
私も君を追っても良いかな?
記憶が無くならない君を、太陽と一緒に見ていたいんだ。
そして、いつか太陽を追い越して、
君と平行線で走るから。
次会うときも、君は記憶がないけど
でも、それなら私は───
太陽の先で、君に会いたい。
完