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#ファンタジー
芙月みひろ
94
設楽理沙
1,542
第6話 あの日の湯たんぽ。
小学4年生だったころの話。
その日は朝からずっとお腹が痛かった。
ただの腹痛じゃない。
生理痛だ。
いつもなら我慢できるくらいなのに、その日は立っているだけでも辛かった。
歩くたびにお腹の奥がぎゅっと掴まれているような痛み。
それでも、その頃は
誰にも言いたくなかった。
先生に言うのも。嫌だった。
「お腹が痛いです。」
そう言ったら、みんなに知られてしまう気がして
だから何もないふりをした。
音楽の授業。
先生が教室の前に立って言った。
先生
その瞬間。
Мの心臓が少しだけ重くなった。
立たなきゃいけない。
今?この状態で?
嫌だ。
でも、先生に言う勇気は無かった。
先生
みんなが立ち上がり。
Мも立ち上がる。
M
強い痛みが走った。
思わず机に手をつきそうになる。
でも周りにバレないように耐えた。
大丈夫。大丈夫だから。と
そう自分に言い聞かせた。
立って歌う。
体が重い。
近くにいる女友達に助けを求めようとし、後ろを向く。
M
そう声をかけようとした、その時。
ふと顔を上げると。
なぜか、左斜め後ろにいるSと目があった。
いつもみたいに笑ってるわけじゃない。
Мの顔をじっと見ていた。
そしてSの眉毛が少し下がった。
S
声は聞こえなかった。
でも、口の動きと表情でそう言っているといことが、なんとなくわかった。
まこは小さく頷いた。
ほんとは大丈夫じゃない。
でも、Sに心配されたことが嬉しかった。
だから、大丈夫なふりをした。
なんとか歌い終えて。座る。
座った瞬間、全身から力が抜けた。
痛い。
でもSが見ていたことが気になって仕方がなかった。
授業が終わり、まこは頑張って教室に戻った。
みんなが次の授業の準備を始める。
まこも机の中から教科書を出そうとした。
そのとき。
S
後ろから声がした。
Sだった。
M
手にはなにか持っていた。
S
M
Sが差し出したもの。
それは湯たんぽだった。
M
Мは思わず聞いてしまった。
Sは照れくさそうに笑った
S
M
S
M
S
一瞬、意味がわからなかった。
でもすぐにわかった。
自分のために
わざわざ。保健室に行ってくれたんだ。
M
S
M
S
あまりにも自然に言うから
私は何も言えなかった。
M
それだけ言った。
S
Sはそれだけ言って席に戻って行った。
Mはお腹に湯たんぽを当てて。
じんわりと暖かい。
痛みが少し和らぐ。
でも胸の奥では逆に苦しくなって行った。
どうして、こんな優しくするのだろう。
Sはいつもそう。
くだらない事で笑って
たくさん一緒に遊んで
何気ない話して
そして困っている時は何も言わずに助けてくれる。
そして私には気になる人もいる。
Sとは全然違う人。
だからSを好きじゃない。
そう思っていた。
でも、今日みたいなことがある度
その言葉が少しずつ嘘になっていくのだ。
家に帰ってからでも
私は湯たんぽのことを思い出していた。
保健室までわざわざ行ってくれたS。
あの時の顔、目。
優しく頷いた時。
M
そう呟いて
首を振った
M
ただの友達
仲のいい友達。
それだけ
そう言い聞かせる。
何度も何度も。
でも心の底では分かっていた。
私がSを見る時だけ
少しだけ、特別な気持ちになっていることに。
それでも、私はその気持ちがなんなのか分かろうとしなかった
分かろうとしたら
きっと
今まで通りにいられなくなると思った
楽しい時間がなくなってしまうと思った。
だから、このまま
友達のままでいい。
そう思った。
この時までは。
───────続く
コメント
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**リオン**: 第8話、読み終えました。小学4年生の♡♡♡痛、あの独特の「誰にも言いたくない」気持ちが克明で胸が締め付けられました。Sくんが保健室に行ってくれた湯たんぽ、何気ない仕草の優しさが刺さりますね。でもМちゃんが「好きじゃない」と自分に言い聞かせるほど心が揺れている、そのもどかしさがたまらないです。続きが気になります……!