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今俺の目の前にいるのは、 俺を苦しめている悪の元凶だ。

この悪意たっぷりのこいつを、 今から懲らしめてやらなければならない。

拓斗

そんなに奥出が大事か。そう思うならこんなことさっさとやめちまえ

後輩

こんなこと? あなたを潰すことが会長のためになるんです

拓斗

奥出のためにやってるとでも?

後輩

その通りですよ

あいつはきっと、 そんなこと望んじゃいない。

拓斗

一年生が俺のことを最初から知っているわけがない、俺と直接関わりがあるわけでもないのに、どこで俺と奥出が繋がっていることを知ったんだ?

後輩

教室で仲良さそうに話していたじゃないですか。まるで恋人かのように

拓斗

やっぱり勘違いしてたか。俺たちはそんな関係じゃないぞ。ただの友達だ

相手は明らかに疑っている。

無表情がさらに険しくなり、 眉間にしわが寄る。

後輩

一緒に買い物だって行って、仲良くプレゼント選びするのが、ただの友達ですか

拓斗

お前、どこまで見てんだよ

後輩

私はいつだって会長のことを見ていますよ。どんな時だって、『生徒会』ですから

拓斗

それストーカーじゃねえか。奥出にバレたら嫌われるぞ

いや、奥出にはもうバレているだろう。

あいつが違和感を感じないはずがない。

後輩

会長はそんなことでは怒りません。寛大なお方なので、いつだって私の味方なんです

拓斗

妄想もその辺にしとけよ。奥出は誰か一人に入れ込むようなやつじゃない。『生徒会』だろうが『ばか』だろうが、同じように接してくれるんだよ

後輩

そんなこと許しません。私だけ見ててくれないと困るんです

奥出もこんな奴の世話をしていると思うと、 心配になってくる。

拓斗

だから俺は邪魔なのか

後輩

そうです。やっと理解できましたか。あなたがいなくなれば、会長はまた私だけを見てくれる

拓斗

残念だけどな、俺は奥出と約束があるんだ。そういうわけにはいかない

後輩

まだ懲りてないみたいですね。弟まで使って、本当に目障りな人

これは獲物を狩ろうとする猛獣の目だ。

このままじゃ埒が明かない、 何か考えなければ。

生徒会長の奥出と拓斗の友人は、 まだ生徒会室で戦いを繰り広げていた。

友人

人生ゲームなんて何年ぶりだろうね

奥出

私は意外とやるわよ。自分の人生を見直すのにちょうどいいの

友人

そんな風に使うのはきっと君くらいだよ

初手は友人、 ルーレットを回して、 出た目の数だけマスを進んでいく。

奥出

あなたの人生設計はどんなものなのかしら

友人

僕たちは高校生と言えど、まだ子供さ。簡単に人生設計なんてできるはずがないよ

奥出

私は結婚をして子供を産んで、そういう普通の人生を歩みたいわ

順番にルーレットを回して進んでいく。

友人

せっかくならお金持ちになって勝ちたいね

奥出

でも、お金持ちが勝ちだなんて誰が決めたのかしら

友人

僕はね、お金持ちが勝ちなんじゃなくて、勝者にはお金が寄ってくるってことだと思っているんだけど

今のところ先に進んでいるのは奥出だ。

ただ、お金を多く持っているのは友人。

奥出

確かにそうかもしれないわね。今の状況、私のほうが有利かしら

友人

それはどうだろうね。貯金も資産もなしに歳を取ってしまえば、その後の人生が詰むことぐらい君にも分かるだろう?

奥出

もちろんよ。でも、皮肉なことに、お年寄りと子供は優しくされる運命なのよ

進めば進むほど、 手に入るお金は増え、 出ていくお金も増える。

友人

君はそういうものには頼らないと思っていたよ。全て自分が背負えばどうにかなると、自己犠牲の上に他人の幸せが成り立つ、難しい考え方をしているのだとね

奥出

仮にそうだとして、何が悪いのかしら。人は支え合って生きていると、よく言うじゃない

友人

この考えは支え合いじゃない、助けてやろうというただのエゴにすぎないよ

人生ゲームは佳境に入る。

奥出

厳しいこと言うのね。善意も、誰かにとっては悪なのかしら

友人

そうだね、考えて行動しないといつの間にか誰かに恨まれているかも

奥出

そんな逆恨みみたいなこと、私は経験したくないわね

無事にゴールした二人は、 持っていた資産をお金に換え、 貯金を計算し、 勝敗を決める。

友人

今回は僕の勝ちみたいだね

奥出

ルール上、仕方のないことだわ

友人

まだ、ゲームを続けるかい?

奥出は生徒会室の倉庫から、 また別のゲームを引っ張り出してくるのだった。

俺は一つ疑問に思うことがある。

それはどうやって、 人のカバンに怪文書を入れたかだ。

拓斗

お前にとって、俺はそんなに隙のあるやつだったのか?

後輩

隙どころか、がら空きじゃないですか。まあ、弟の海斗さんのほうが立場的に入れやすかったですけどね

拓斗

基本的に休み時間は教室にいたし、他の三年生だっている。一年生がそう簡単に怪文書を忍ばせるなんてできないだろ。もしかして他に協力者でも……

後輩

ヒントでも差し上げましょうか? 唯一教室から全員いなくなる授業があるじゃないですか

まさかとは思うが、 そこまでして俺と海斗を嵌めるってどうなんだ。

拓斗

体育か……

後輩

さすがに『ばか』でも分かるみたいですね

拓斗

一言余計だ。そもそも、一年生にも授業があるじゃないか

後輩

これは『生徒会』の仕事ですから、授業なんて受けてられないですよ

先生も疑わないということは、 『生徒会』の信頼は相当なものらしいな。

拓斗

横暴な考えだな。そんなにベラベラ喋ってていいのか?

後輩

大丈夫ですよ。特にあなたのことですから、録音や録画などはないでしょうし、それ以上の考えもあなたにはないと思いますから

大変よく分かってるじゃないか。

ここに友人でもいれば、 何かしら仕掛けてくれていたかもしれない。

というか、 あいつ今どこにいるんだ。

友人は何かを感じ取っていた。

友人

誰かが僕のことを考えているかもしれない

奥出

そんなの、貝塚拓斗以外にいるのかしら

友人

きっと、僕の助けを待っているんだろうね

気づいたとしても、 気にも留めない友人であった。

ここには俺とこいつしかいないんだ、 俺がどうにかするしかない。

拓斗

俺だってやるときはやるんだからな

後輩

負け惜しみですか

拓斗

先輩のことを侮っていると痛い目見るぞ

こいつに勝てるのはおそらく友人か奥出だろうな。

でも、あいつらと一緒に過ごしてきた俺なら、 勝てないこともないんじゃないか?

後輩

私が怪文書を入れていたとして、それを私が作ったという証拠はあるんですか? 私より頭の良い人はいくらでもいますし、時間だって『生徒会』に入っていない人のほうがありますよ

拓斗

あの楽譜の怪文書、あれを作れるのはお前しかいない。俺と海斗に向けられた脅迫文、そんなことする奴、お前しか考えられないんだよ

このまま詰めていけば、 勝てるかもしれない。

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