ユキ
そっちじゃないよ

ユキ
こっちだよ

ユキ
ゆっくりでいいよ

ユキ
こっちだからね

ユイ
ユキちゃん?

ユイ
ママに会いに来てくれたの?

ユイ
ユキちゃんお顔見せて

ユキ
お母さん

ユキ
そっちに行っちゃダメだよ

ユキ
死んじゃうよ

ユキ
こっちに戻ってきて

ユイ
ユキちゃん

ユイ
ユキちゃん

ユイ
今そちらに行くからね

乳がんの手術の途中、急変して心臓が停止してしまったユイ。医師たちの必死の蘇生も叶わず、誰もが諦めかけたその時
ユイ


奇跡的に心臓が動き出し、何事もなかったかのように正確な波形を作り続けた
タケシ
ユイ!

医師から緊急で対応中であることを告げられたタケシは廊下で叫び続けた
タケシ
ユイ!

ユキ
お父さん

ユキ
もう大丈夫だよ

ユキ
私が連れてきたからね

ユキ
お母さんもう大丈夫だからね

タケシ
ユキ?

タケシ
ユキなのか?

タケシ
ユキも入院中のはずなのに

ユキ
お母さんの声が頭の中で聞こえたの

ユキ
ユキちゃんって

ユキ
そして

ユキ
どこか遠くへ行こうとしてたから

ユキ
お母さんを呼び止めて

ユキ
連れてきたの

タケシ
なんてこと

医師
ご家族の方ですか?

医師
手術中急変しまして、かなり危険な状態で、我々医師団も諦めかけた時

医師
小さな女の子の声が聞こえたんです

医師
お母さんって

医師
すごく不思議なことを言ってるのは承知してますが

医師
我々も驚いてまして

医師
だって

医師
密室の手術室の中で

医師
全てのスタッフが女の子の声をハッキリと聞き取っていたのです

医師
そして

医師
その後すぐに患者の状態が戻り

医師
脈拍も戻ったのです

医師
もう安心です

医師
乳がんの手術も無事終わりました

タケシ
あ、ありがとうございます

タケシ
本当にありがとうございます…ぅぅぅ

手術室から病室に戻り、意識が戻った妻に優しく語りかけるタケシ
タケシ
ユイ

タケシ
不思議なことが起きたね

タケシ
ユイも聞いたのかい?

ユイ
うん

タケシ
あの声はユキの声

ユイ
そう

ユイ
ユキちゃんの声

ユイ
私に

ユイ
そっちじゃないよ

ユイ
こっちに来てって…

ユイ
あの子が私を助けてくれたんだわ

ユイ
本当に…ありがたい…

タケシ
ホントそうだな

タケシ
ユキにご褒美たくさんあげないとな

タケシ
それでな

タケシ
手術していた先生たちもハッキリ聞こえたらしいんだ

タケシ
ユイ

ユイ
?

タケシ
家族みんなで幸せになろうな!

ユイ
はい
