「気持ち悪りぃ。」 「学校来んなよ。」 ベタないじめっ子ゼリフを投げかけられる、THEいじめられっ子、S君。 S君はあまり顔が良いとは言えない風貌で、それでいて勉学の方も...という感じ。 他はというと基本傍観者。一番最低なポジションともとられる。 とはいえ体格が良くて騒がしい、今でいう陽キャラないじめっ子たちがクラスのカーストをしきる学校という籠の中では、このポジションが一番楽であることは間違い無いのだ。卑怯だが。 田舎のせいか、教育方針もゆるく、いじめに対しても向き合う姿勢のない学校だった。 Sはひどい時には筆箱や給食にミミズを入れられたり、サンドバックとしてサッカー部や野球部からの暴力を振るわれていた。 『このブスの親の顔が見てみたいぜ。』 ある日のHR後、そんなセリフがSに向けて飛ばされた。 『いいよ!!』 クラスがわかりやすく静寂に包まれた。 いじめっ子たちは口をあけてポカンとしている。 あのSが。あの何を言われても無口なS君が、初めていじめっ子たちに返答をした瞬間だった。 とても元気な...大きな返事だった。 「・・・おもしれぇな!家行かせろよ!」 いじめっ子のリーダーAは焚きつけられたようにSに言い寄る。 「おうちは物置っすか?w」 「藁で出来てるかもw」 いつものペースでSはいじめっ子A、B、C君に罵られ始めた。 「掃除終わったらついていくから待ってろよ。」 そう言ってA達は放課後の掃除へ向かった。 学校からの帰り道。 「走って逃げんなよ〜?」 A、B、C君はSにぴったりとくっついてS家に向かう。 田舎だったが、さらに田舎。という表現が似合う辺鄙な土地に景色が変わる。 「まだかよ〜家遠すぎ。」 徒歩でこの距離を登下校してると思うと驚くような距離を4人で歩いた。 気がつけば日が落ち始めていて、畑や森があるだけのこの辺りはすっかり暗くなっていた。 「・・・ついた。」 「はぁ!?これがお前ん家?」 「くそ田舎だとこんな家建てれんだ〜土地安いんだべ。」 木々を抜けた先にあったのは...もはや洋館という見た目の大きな家だった。本当に家というより館という表現が似合う。その規模の建物だった。 「...ひいじいちゃんが元々建てた家。」 Sの曽祖父がこの土地を買ったらしく、辺りの山や畑も曽祖父のものらしい。 「・・・予想外すぎ。まさかの大金持ちかよ」 A君がニヤニヤしながら言う。 「...入っていいよ。」 4人が「家」に入るとまずは大きな玄関ロビー。 「すっげー!!映画かよ!」 A、B、C君はテンションが上がってきたようでまるで修学旅行のホテルに到着したかのような盛り上がりようだった。 建設されてから時は経ているため建物の見た目は古びているものの、リフォームなどで内装は綺麗にされていた。本当に少し高めのホテルのようだった。 「おい!なんか遊ぼうぜ!ゲームとかあんだろ!」 「...あるよ、2階に僕の部屋があるから。」 4人はSの部屋でゲームをして過ごしていた。A達3人はテレビでけー!とか部屋何帖あんだよ!とかで盛り上がりながら4人でできる格闘ゲームを楽しんでいた。 少し時間が経ち、時刻も夜20時になろうとしていた時。 「親とか帰ってきてないの?家静かすぎるけど」 ふと疑問を投げかけるC。確かに、S君、父母、祖父母の5人で暮らしているというにはあまりにも静かすぎた。 「家広すぎるから何も聞こえねえだけじゃね?」 Aが言う。 「てかさ、そろそろここ出ないとやばくね?」 「たしかに」 そう、遠距離を徒歩で来ている上にまだ中学生。近くには街灯もなく一体どうやって帰ったらいいのかすらわからないため3人はそわそわし始めた。 「電話借りても良い?かあちゃんに電話するわ。」 「...いや、大丈夫だよ。」 Aが電話を借りに下へ降りようとすると、Sが会話を始めた。 「大丈夫ってなにが?」 「...うちのお父さんとお母さんが送っていくよ。」 「え、まじ?住所わけわかんなそうだし助かるわ!」 「...じゃあさ、最後にかくれんぼしない?」 Sの提案に3人は少し考えた。時間も時間な上にこの広い家でのかくれんぼ。 「ま、送ってくれるしアリじゃね?」 「だな!てかお前遊んだら良いやつだし、明日から普通に仲良くしようぜ」 「金持ちだしな!スネ夫ポジションってことで笑」 3人は立派な家の高級菓子、立派なテレビゲームに気分も上がったため、S君を仲間に入れようと考えた。そして最後にかくれんぼをすることになった。 「...好きなところに隠れて良いよぼくが鬼ね。」 「よし隠れろー!!」 3人は部屋を飛び出して隠れ場所を探していた。 「どこ隠れる!」 3人は隠れ場所を探していた。 「1階だなやっぱ!」 3人が1階に降りた時だった。 停電が起きた。 「え、何も見えねえ。」 そして壁を伝うように配置されていた蝋燭のような装飾ランプが一斉についた。 絶妙に薄暗い、それでいてだだっ広い家が恐怖の館に豹変した。 「あいつ絶対電気消したよな。」 Aが場を落ち着かせるように言った。その時2階から、 「おっしゃあああ!!探しにいくぞおおお!!!」 Sの聞いたことのない楽しそうな、いや狂ったような叫び声が聞こえた。 「ムード的なやつかな笑 よし隠れるぞ!」 3人はまだ案内されてない、リビングであろう広いスペースをめがけて廊下を走り出した。 「なぁ、あいつへんじゃね?普段ああいうキャラなのかな?」 3人は違和感を覚えながらも長い廊下を走っていた・・・が。 廊下の先に何かが目に入った。 「なにあれ・・・」 廊下の先には人影があった。2つ。 「あれじゃね?洋画とかに出てくる甲冑の置物的な笑」 「面白くねえわ。おかしいだろあれ。」 廊下の先の人影には違和感があった。 明らかにデカイ。そしてリビングを塞ぐように手をつないでいるのだ。 「怖ぇぇ、怖ぇぇんだけど」 3人は薄暗い空間で少しずつパニックになりつつあった。 「いくよ!!!!!」 2階からSが降りてくる音が響き渡る。 「とにかくあそこ隠れないと後ろから来るぞ!」 廊下の後半にいた3人はもうリビングを目指すしかなかった。そして、わざとにでもS君に捕まらなかったことを後悔した。 「!!」 廊下の先、リビングスペースの前にいた2人の表情や姿がはっきり見えた。 身長は250cm...いやもっとあるだろうか。血の通ってなさそうな、縦に細く、青白い顔の男女だった。 「いらっしゃい。」 2人が声を揃えて言う。 「・・・お邪魔してます。」 3人が不気味ながらなんとなくSの両親だろうと挨拶をすると、後ろから走る音が近づいてきた。 「もうやめようぜ捕まって送ってもらおう?」 BがAとCに言った時だった。 「はい、タッチぃぃい!!!!!」 思い切り走ってきたSが最後尾にいたBにタックルのような「タッチ」をした。 瞬間、Bは床にぶっ倒れた。 「い..!!いてぇぇ!!!いてええ!!いあああ!!」 悶えるBは、まるで陸に上がったばかりの魚のようだった。 Bの背中には包丁が突き刺さっていた。 「お前なにしてんだ!!」 AはBとSを交互に見ながらパニックを起こす。 「最初から仲良くしろよ。全部おせえんだよてめぇら。」 Sの人が変わったような態度と口調にAとCは震えた。 「親の顔が見てみたいんだろ!?連れてきたよ!母さん父さん!」 「あああああ!!!!う。。あああ!!」 Bの絶叫が騒がしいBGMになった。 「ダメじゃないかS。包丁をそんな風に使っちゃ。」 Sの父がおっとりと喋りながら近づく。 「ごめん!!いじめててごめんなさい!!」 AとCは後方に後ずさる。Sの父はのたうちまわるBに近づいて包丁を抜いた。 「んがああああ!!!」 Bは自分の流した血の池の上で、激痛のあまりバタバタしていた。 「いいか?包丁は刃を上に向けなさいと教えたじゃないか。」 そう言い、刃を逆にした状態でBの腹に何度も刃を突き立てた。 「よいしょ〜っと・・・よいしょ。」 冷静に刃を振りかざす、まるでバランスよく釘を打つ場所を決める大工のようにSの父がBの腹を裂いていく。Bはもう声が出ないようだった。 「刃が上の方が刺しやすいし痛いんだぞ〜横にすると骨を抜けやすいし・・・」 SにレクチャーのようなものをしながらBを絶命させる様子を見て、二人は玄関めがけて叫びながら走りだした。 「やばい!!まじでやばいって!!」 2人は泣きながら走った。 「頼むわ。」 「はい。」 Sの母がとんでもないスピードと歩幅で走り出した。 「お母さん足早い〜!!」 Sが嬉しそうにはしゃぐ。 数秒の間に距離を詰められ、あっというまにCの髪の毛を掴むと、近くの壁に何度も 顔を叩きつけた。 「お前なんでこんなことすんだよ!!人殺しが!!!」 Aは号泣しながらS一家に怒号を浴びせる。 「あああああああああっ!!!!」 何度も叩きつけられたCの顔は鼻が折れ潰れて、原型がないほど凹み、血みどろになっていた。 「とどめいっくぞ〜!!」 倒れたCめがけて、走ってきたSがジャンプして、そのまま顔面に着地した。 「ぷs〜ふs〜」 空気だけが漏れる音を出すようになったCを見て、 「ぶっさいくだな〜!!親の顔が見てみたいぜい!!」 Sがうれしそうに指をさして笑った。そして顔を上げた。 「でも...お前が一番俺をいじめたなあああ!!????」 AとSの目があった。Aは足が速かったため玄関の扉の近くまできていた。 「通報してやる!!お前ら全員死刑になれよ!!!」 Aは泣き叫びながらドアを開けて外に走り出した。 「しね!!!しねよくそが!!!」 わめきながら通ってきた林道のようなものめがけて走った。街灯もない、普段ならさすがに怖くて通れないような道だったが、今はそれによっぽど勝る恐怖が背後にいる。 「お前が俺に勝てるわけねえんだよ!!ははっ」 振り返ってもS一家は追ってきていなかった。・・・その時だった。 『ガシャン!!』 Aのすねに激痛が走る。 「いってええ!!あああっ!!!」 トラバサミと呼ばれる、ゲームでしか見たことがない狩猟器具が足に食い込んで骨を破壊していた。 「かかった!!」 近くの茂みから150cmくらいの小柄な老人が走ってきた。 「やめろ!!!くるなあああ!!」 悶絶するAをまじまじ見ながら、老人が呼吸を整える。 「おやおや・・・片足を砕かれた若人よ。これではバランスがとれないな」 そう言うと、ゴルフクラブでもう1つの足のすねめがけて思い切りフルスイングした。 『パァン!!!!!!!!』 なんとも形容しがたい音が夜の空気に響いた。 「うわぁぁぁぁ!!!!!」 両足を砕かれたAはそのまま前に倒れた。 「じいちゃんナイス〜!!」 Sがゆっくり近づき、再び家に引きずっていく。 「このまま死なせるわけないじゃん。お前は殺すより辛い思いさせるからね。」 Aは気づくと地下室にいた。手足は縛られてフックのようなもので吊られていた。 「おまた〜!!」 Sが父母を連れて近づく。 「君が一番息子をいじめていたんだってね。いじめの中心だったとか。」 Sの父が大きな鏡をAの前に持ってきながら喋る。 「ごめんなさいいぃ!!許してください...」 「鏡で自分の姿を見てなさいね〜」 優しすぎる口調が余計におぞましかった。Aはこの後にえげつないことをされるのを予見した。地下室にはいろんな器具やら機械が視界に入る。 「のこぎり。」 「はい」 Aには大体予想がついた。手足を切られるんだろう。 「うがあああくぁあ!!!!」 予想は当たった。ノコギリの刃が鋭利ではなく、時間をかけて肉を切られる。これもわざとなのだろう。 「よいしょよいしょ。」 淡々と肉を切るSの父。真顔でAを見るSとSの母。 「あれやろう!いつもの!!」 Sが1階に登っていった。そして塩をキッチンから持ってきた。 「たっぷりいくよ!」 「がぁぁああぁああ!!!」 SがAの四肢の切断面に塩を塗る。 「・・・あぁはっっはっはww」 Aは精神のバランスが崩れたのか笑い始めた。 「お前ら死ねよ・・・なめやがってくそがぁぁ!!」 「おやおや、お口が悪いね。どんな教育をされてきたんだか。」 Sの父は冷静に言い放つと、ニッパーでAの舌を何度もパチパチと挟んだ。 「ぐべぇ!!!おおあぁああ!!」 舌を滅多斬りにされたAはもう日本語の発音が不可能になった。 「なんでもいいや、歯とか取れそうなのちょうだい。」 「はい」 Sの母が旦那に渡したのは、ハンマーと固い高級な釘だった。 「入れ歯とかいれられても困るしね、歯茎とか神経も全部殺しておこう。今後一切言語は話せないと思ってねA君」 『コン、ぐちゃ。コン、ぐちゅ。』 Sの父がAの歯茎ごと口内の肉を削いでいく。ハンマーと釘で的確に歯茎を狙いながら。 「おおぉぉおおあぁあああ!!!!!」 もはやAは宙にぶらさがっている音が出る肉塊のようだった。 「仕上げはSがやりなさいね。」 「はいよ!!!」 Sはスプーンをもってきた。 「今からテコの原理いくよ!」 そう言うとAの眼球と涙袋の間にスプーンをねじこみ、一気に上にテコの原理で持ち上げた。 『びゅ、ぷち。』 Aから眼球が取り出された。 「Oooおおおoooぁああ」 Aはもはや口から出せる音が限られていた。そしてまもなく視界が真っ暗になった。 「あのね、A君。社会のゴミはちゃんと本当に誰にとってもお荷物になるゴミにして社会に戻してあげるからね。喋れないから意思表示もできない、手足がないから苦しくても自殺もできない、視力がないから生涯暗闇。そして最後は、」 「アイスピック」 Sの父は最後にアイスピックでAの耳をかき回した。 Aは聴力も失った。 「林道抜けたところに捨ててこよう、あそこならギリギリ人が通る。」 私有地があまりに広いため、森を抜けないと警察はおろか人も通らないほどの敷地面積だった。Sの父が軽トラックを玄関に寄せるため、出ていった。 「これが最高の復讐。お前が死ぬにはだれかの協力が必要になるね。でもお前はしゃべれないし聞こえないし動けないし見えない。一生苦しめよ。自分だけ幸せなまま他人を不幸にするなんてずるいよ〜、つらいこと500倍にして返してあげたからね。」 Sが捨てられる直前のAに最後に言い放った。 「お前の親が復讐しにきたら返り討ちにしておんなじ目にあわせてやるからよ! ・・・はやくお前の親の顔が見たいよ。」