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雨音ちゃん、大丈夫だろうか
今からでも、連絡をしてみようか?
俺は……
秋斗
秋斗
秋斗
連絡ツールである「SINE」を開き 文字を入力していく
秋斗
秋斗
「今日は本当にありがとう!!」
秋斗
「あの夢のことなんだけど、夢だから何も起こらないっては思うのがいいって話したよね?」
秋斗
「それでも、気を付けてね。俺、なんか嫌な予感がしてるんだ」
秋斗
秋斗
秋斗
ベッドの上でスマホを睨み続けて 自身の文面がおかしいかずっと考える
嫌われないかな
そう思い出すと 不安で仕方がなくなってしまう
こんな書き方で良かったのかな
30分はそうしていた
しかし それでも既読はつかなかった
秋斗
秋斗
秋斗
俺はベッドから起き上がった
晩御飯を食べている間も
風呂に入っている間も
ゲームをしている間も
音楽を聴いている間も
ボーッとしている間も
俺は夢のことが気になった
だから SINEを何度も確認した
しかし 雨音ちゃんから連絡は来なかった
時刻は23時30分だった
秋斗
秋斗
秋斗
秋斗
秋斗
秋斗
秋斗
意を決して 通話ボタンを押してみる
軽快な音が出音口から聞こえる
それが何度も反復する
雨音ちゃんは、出なかった
俺は諦めて通話ボタンを切る
直前
プチッ
秋斗
画面を見ると、通話時間の秒数が増えていっている
これは、相手が電話に出たということだ
俺は慌てて声をかける
秋斗
秋斗
……
何も喋らない
秋斗
秋斗
……
「あ」
一瞬、何かの声が聞こえた
秋斗
「あ」
秋斗
「あはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあは」
ゾッとした
これは、赤ちゃんの笑い声か
明らかに、雨音の声ではなかった
俺は急いで声をかける
秋斗
秋斗
「南無阿弥陀南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
老婆の声だ
低い声で唱え続けている
赤子と老婆の声が交わり 不協和音が通話口から鳴り響く
酷く怖かった
秋斗
秋斗
秋斗
秋斗
俺は必死に呼びかけ続けた
うすぐらくて じめじめとしていて さむい
体も顔も動かせない
ただ、前を見ているだけ
ず、ずる、ず、ずる
遠くの方から音がした
「"はつり"だ!!」
「"はつり"が出たぞー!!」
「うわああああああ!!」
「きゃああああああ!!」
「女子供逃がせー!!」
ダンッダンッダンッダンッ
ピシャ
襖が開く
和服姿の女が赤子を抱きながら 恐怖して逃げていく
真横を通り過ぎて行った
「ぎゃああああああ!!」
「あ……あ……」
声は途絶える
ず、ずる、ず、ずる
音が近付いてくる
すーーっ
ゆっくりと 開かれた続き間の奥の襖
そこから白い手が伸びてきた
手は畳をつかみ
かきむしるようにして 体を押し進めている
そこに現れたのは
顔も見えないほどの長い黒髪
白い皮膚に骨が浮き出るほど ガリガリの肉体
胸の膨らみ
はつりと呼ばれた女だった
はつりは足を動かさず 手だけで進んでいた
体と足を引きずって 畳の上を這っている
ず、ずる、ず、ずる
音の正体は、これだったのだ
吐き気がする
んー、んー、んー
地響きがするほどの低い声
気持ちが悪かった
ず、ずる、ず、ずる
はつりは襖と襖の間を移動して 姿が見えなくなった
すーーっ
手前の襖から手が伸びる
まだ、奥の襖の裏にいるはずなのに
ず、ずる、ず、ずる
んー、んー、んー
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
低い念仏を唱える声がする
低い声と声が交わる
また、吐き気がする
これは、現実に違いない
ず、ずる、ず、ずる
はつりは右から左へと消えた
そこへ
ダンッダンッダンッダンッ
「おい!!あんた!!」
「何してんだ!!早く逃げなっ!!」
和服を着た男が駆け寄ってきた
私に話しかけているのか
いや、私は傍観者だ
ただ、見ているだけ
あれ?
でもこれは現実……
「聞こえてるのか?」
「早くしないと、はつりが…!!」
男の後ろから、ぬっと女が立ち上がる
はつりだった
私は声を出せなかった
男は気付かずに、私の顔を見ている
「おい、あんたってば!!」
はつりが、手を挙げた
次の瞬間
「うわああああああ!!」
男は ものすごい勢いで引きずられて行った
手前の襖の裏まで行き こちら側からでは見えなくなった
「やめてくれ!!助けてくれ!!」
「がぁっっ!!」
血しぶきが飛んだ
何をされたのか分からない
しかし 襖の裏からすごい量の血が飛び上がった
声は聞こえなくなった
雨音
私は、ここにいるのか
こんなところに
どうして?
ず、ずる、ず、ずる
返り血で赤く染まった、はつりがいる
こちらに近付いてくる
ず、ずる、ず、ずる
やめて
ず、ずる、ず、ずる
死にたくない
ず、ずる、ず、ずる
やめて!!
はつりは、目の前まで来ていた
足の関節があらぬ方向に曲がって 立ち上がった
んー、んー、んー
声が間近に聞こえる
んー、んー、んー
嫌だ
んー、んー、んー
助けて!!
「起きろ!!」
声が聞こえた
頭の中に響いた
……誰?
雨音ちゃん!!
起きてくれよ!!
起きる……?
これは、現実……
………
……いや、夢?
そう思った瞬間
すべての記憶が流れ込んできた
そうだ
初理
私が意味をつけてるだけに過ぎない
こんなものは、怖くない
起きなくちゃ!!
ぐっと目を閉じる
静かだった
何も聞こえない
何も怖くなかった
私は
起きられる
私は目を開けた
「あともうちょっとだったのに」
「おきるなよ」
目の前に、はつりがいた
雨音
声を出せた
目の前には 殺されたはずの男、赤子を抱いた女がこちらを睨んでいる
はつりも、顔がのぞけて睨んでいる
目が異様に大きかった
私は急いで逃げた
後ろを振り返って
襖を開く
襖から強烈な光が漏れ出る
私は、また目を瞑った
秋斗
秋斗
声を出し続けた
声は枯れていたが それでも俺は呼び続けた
いつの間にか 赤子や老婆の声は消えていた
通話口から「ううん」と声がする
雨音ちゃんの声だ
秋斗
「秋斗……くん?」
秋斗
秋斗
「わ、私、またあの夢見てて…」
「でも、直前で秋斗くんの声がして」
「それで動けるようになって、助かったの」
「あと少し遅かったら、私……」
雨音の泣き声がする
俺はしばらく無言だった
どうやら、危なかったらしい
でも……
秋斗
「うん!!」
声は明るかった
それから数ヶ月が経った
どうやら あれから夢は見なくなったらしい
「やっと熟睡できるよ」
雨音ちゃんはそう言った
俺も嬉しくなって、あれからはよく話しかけるようになった
今日は、公園に誘ってみた
約束の時間通り、雨音ちゃんは来た
雨音
秋斗
雨音
公園は静かだった
俺達以外には誰もいなかった
何だか不思議な気持ちになる
俺はあのことについて聞いてみた
秋斗
雨音
秋斗
秋斗
雨音
秋斗
秋斗
雨音
秋斗
雨音
秋斗
雨音
秋斗
雨音
雨音
秋斗
雨音
雨音
秋斗
雨音
雨音
秋斗
雨音
秋斗
雨音
秋斗
雨音
秋斗
雨音
雨音
雨音は目を伏せた
雨音
秋斗
雨音
秋斗
雨音
雨音
そんなことは
そんなことはない
俺は語気を強めて言った
秋斗
雨音
秋斗
雨音
秋斗
秋斗
雨音
秋斗
秋斗
雨音
秋斗
雨が降ってきた
パラパラパラパラ
雨の音に乗せて言の葉を咲かせた
すると、雨音ちゃんは笑った
雨音
雨音
秋斗
雨音
雨音
秋斗
雨音
秋斗
秋斗
雨音
雨音
秋斗
風に乗せて、秋の匂いがしてきた
Happy end