TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

 

「クビカリ様」

今、巷を賑わせている殺人鬼。

そのターゲットは、黒髪の若い女とされている。

犠牲者の頭を切断し持ち去り、現場に残した体の周りをそれぞれ違う花で囲うのが手口である。

……「その儀式の意図は、いまだ解明されてない」

いいな、かっこいいな

古今東西の殺人鬼について纏められたサイトをスマホで見ながら

暗い部屋で私は呟いた。

……私も地毛を黒く染めたら

「クビカリ様」に殺してもらえるかな?

生まれつき明るい色の髪をいじりながら、そうやって夢想する。

犠牲者によって花を変えるのも

きっと犠牲者に相応しい花を選んでるからなんだろうな

 

 

 

クビカリ様

よしよし、君はよく頑張ったね

舞台は廃教会、朽ちつつある壇上に座る紫の髪と赤い目を持つ

端正な顔つきの男、クビカリ様。

私の話を神妙な顔で聞いてくれて、私の頭を優しく撫でる。

クビカリ様

最期はボクが弔ってあげるから、安心してお眠り

クビカリ様

君は、なんの花が似合うかな?

顎に人差し指を当てて、思案する。

クビカリ様

清楚で、奥ゆかしくて、それでも存在感を放つ……

クビカリ様

……キンモクセイがいい、そうしよう!

クビカリ様

季節じゃないのが玉に瑕(きず)だけど……

クビカリ様

ある筋から取り寄せて、君をちゃんと見送ってあげるから

何処からか取り出した大鎌を掲げながらクビカリ様は続ける。

クビカリ様

……君の首を、刈らせて欲しい

……はい!

 

おーい、おーい!!

居ないのか、柚!!

……はっ!

都合のいい妄想に浸っていたら、おじいちゃんが呼ぶ声で現実に引き戻されてしまった。

ごめん、今行くね!

胸に抱いていたスマホをベッドに置き

急いでおじいちゃんの部屋へと向かった。

息を弾ませながら扉を開けると

掛け布団の中に入ったままのおじいちゃんがジロリと睨んできた。

ごめんごめん、おじいちゃん

どうしたの?

おじいちゃん

遅い!いつまで待たせるんだ!

おじいちゃん

ウンコだ!片付けろ!

……今日も?

動けるうちはオムツの中じゃなくって

自分の力で行ってくださいって、ヘルパーさんにも言われてるでしょ?

おじいちゃん

こんな寒い中便所に行けんわ!

おじいちゃん

凍え死んでしまうだろう!

おじいちゃん

お前は鬼か!鬼畜か!

そう言っておじいちゃんは麻痺の残っていない方の手で私をバシバシと叩く。

いたっ、痛い!

わかった、わかったから

ほら、新しい紙パンツ準備したから

ズボン下ろすよ?

おじいちゃん

全く……

おじいちゃん

それでいい、我儘言うな

そう憮然としながらぼやくおじいちゃんのズボンを脱がし、足を広げて紙パンツを破く。

股間についているモノを気にしないふりする技能は

数ヶ月前に脳梗塞で倒れたおじいちゃんの介護を、一手に引き受けるうちに身についてしまった。

お金がないから、とヘルパーさんも最低限にしか呼べず

「昔、柚はおじいちゃんが大好きだったろ?」

「そんな柚がお世話するからおじいちゃんは喜ぶんだ」

「散々可愛がって貰ったのよ?恩返しだと思って」

お父さんもお母さんもそう言って、介護にほとんど参加しようとしない。

おじいちゃん

……ふう、さっぱりした

(さっき暴れてたのもあって、汚れ方が酷かったな)

(……うわ、また爪の間に入り込んでる)

(これ洗っても落ちないんだよな)

そう、それは良かった

お休み、また明日ね

おじいちゃん

ぐがー、ぐがーー……

……ありがとう、の一言も無いんだね

(昔はもっと優しかったのに、体が不自由になってから)

(思い通りにならない憂さ晴らしのように気が荒くなった)

(「おじいちゃんだって辛いのよ、わかってあげて?」)

(……とかお母さんは言うけどさ)

なら、私の辛さはどうしたらいいの?

誰も聞くものの居ない、私が溢した言葉は

まるで存在すらしなかったかのように、夜の闇に消えて行ってしまった。

 

 

 次の日 学校の休憩時間

クラスのみんな

…‥うわ、くっさ

クラスのみんな

また三島がすんごい臭いしてる

クラスのみんな

なに?うんこ漏らしてんの?

クラスのみんな

やだーー、やめてほしーい笑

……

クラスメートはいつものように、私を遠巻きに見ながら笑いものにする。

日常的に介護に携わる人には匂いが染み付き、簡単に落ちないと聞く。

みんなの嘲笑は、的外れもいいところなのだ。

でも私には、その悪口を跳ね除ける気の強さは無い。

その空気から逃げるように、スマホを取り出してSNSを開いた。

 

 

私のことを馬鹿にするクラスのみんな

普段はいじめに気づかないくせに、頭髪検査の時だけ

地毛が茶色っぽい事を目ざとく見つけて、文句を言ってくる生活指導の先生

おじいちゃんの介護を押し付ける家族、すぐに怒って叩いてくるおじいちゃん

みんな大嫌い

投稿、っと

 

 

(相互が100人弱いるって言うのに)

(私の呟きに誰も反応してくれない)

「あいつまた浮気してた、まじ信じられなくて鬱」

「死ねやハゲ上司、お前のご機嫌取りなんてもう限界なんだよ」

「みんな私に死ねって言うんですね、りょーかいですーー」

私の投稿にいいねがいつ付くか、やきもきしてる間にも

病み垢繋がりで知り合った相互達の呟きがTLを流れていく。

(きっと皆んな、自分のことを見てもらいたいだけで)

(他の人の苦しみなんてどうでもいいんだろうな)

……

誰の目にも留まらない愚痴をそのままにしていたら惨めな気分になる。

なので先ほどの投稿を消して、また新たな心の叫びをスマホに打ち込む事にした。

 

誰でもいい、私を助けて

この地獄から救って

私を殺して、クビカリ様

……投稿!

 

 

かまってちゃん乙

 

不謹慎です、削除してください

 

親に申し訳ないって思わないの?

 

死ぬ前にワンチャンいいっすか?

 

いくつ?どこ住み?

今までの沈黙が嘘のように

暴言を吐く者、綺麗事を「アドバイス」しにくる者

そして下心を隠そうとしない者が私の投稿に群がってきた。

(何よこれ、私は真剣に悩んでるのに)

(「お説教」したい時じゃないと私にコメントしてくれないんだから)

……もういい、うんざり

アカウント消してやる!

そう思って設定を開こうとすると……

……ん?

メンションだ、誰からだろう?

またお説教なら最後に文句の一つでも言ってやる

そう息巻いてメッセージを見てみると……

 

@kubisama さん、こんにちは

私は巷で言う「クビカリ様」を知っています

DMでお話ししませんか?

「behead」、意味は……

単語の意味がわからなかった為、検索エンジンで単語を検索してみる。

……「斬首」!?

「クビカリ様」を意識してる名前だな……

少し、話してみよう

 

 

beheadとのDM

kubisama

こんにちは、kubisamaです

kubisama

あなたもクビカリ様を信じてるんですか?

behead

メッセージありがとう、嬉しいな

behead

その名前、僕を意識してるの?

kubisama

kubisama

え、僕って

behead

凍結されるのも不便だから、あそこでは他人のふりしてたけど

behead

僕は世間の言う「クビカリ様」だよ

behead

君に会って、話をしてみたいな

behead

会ってくれるかい?

親愛なるクビカリ様

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

101

コメント

3

ユーザー
ユーザー
ユーザー

以前他の方にリクエストした「さつ人鬼とそれを盲信する信者」と言うコンセプトを自分なりに形にしたものになります。本連載もよろしくお願いします。

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚