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〜side kiyo〜
ky
心臓がうるさい
『想いを伝えて関係が崩れるくらいなら、いっそ友達のままで』
何度も、何度も、自分に言い聞かせてきた
逃げたい
笑って誤魔化して、平気なふりして、どうでもいい冗談に逃げてしまいたい
或いは、戸に手をかけて、この場から逃げ出したい
だが、指は動かなかった
『ちゃんと聞く、最後まで』
その真っ直ぐな一言が、瞳が、胸の奥に溜め込んでいたものをぐっと押し上げる
それは、俺が何よりも望んでいたものだった
遮られない
否定されない
それだけで、ここに立っていられる理由がちゃんとできた
ずるい
そんな目で、俺を見つめないでほしい
抑えてこれたものが、抑えられなくなる
ky
自身の喉から紡がれたのは、小さく掠れた声
さらに声が震えているのが、自分でも分かる程だった
ky
ky
ky
言わなくても、隣に居ることができた
自分の気持ちを隠していけば、これからも一緒に居られると思ってた
───でも
ky
今この瞬間、このままでいいと思えなくなってしまった
一瞬の、間
それは、短いようで長いものだった
でも目の前の彼──レトさんは、その間もずっと黙って待っていてくれた
どこまでも優しい彼のやわらかな表情
それは、マスク越しでも分かるほどのあたたかさだった
静かに俺の左手を両手で包み込むように優しく、しかし力強く握っている
俺のなかで崩れかけていた何かを、支えるように
彼の温もりに触れた瞬間、俺の胸に絡みついていた不安が、静かにほどけていった
この場から逃げ出したいと思っていたことが、馬鹿馬鹿しいと感じるほどに
このまま黙ってしまったら、多分もう二度と言えない
彼の優しさを、無下にしたくなどない
だから
ゆっくり息を吸い、ほんの一瞬止めて…
ky
それは、決して冗談などではない
友人としてでもない
ky
ちゃんと、『好き』だということ
ky
冷や汗が背中をつたう
こぼれ落ちた言葉は、もう拾うことはできない
とてつもない恐怖が自身を襲う
拒まれるかもしれない
気まずくなるかもしれない
今までの距離に、戻れなくなるかもしれない
それでも
言わないでいる方がよっぽど辛いと気づいたから
ky
ky
ky
頭を下げ、拳をぎゅっと握る
目頭が熱く、視界がじんわりと滲む
今、自分は一体どんな顔をしているのだろうか
きっと惨めったらしく歪んだ、おかしな表情をしているだろう
重々しい頭をなんとか上げたものの、顔を合わせることができない
足元に目をやるしかできなかった
rt
ビクリと自身の身体がこわばる
なにか言われるのでは、と少し身構えた
rt
しかし、返ってきたのはひどく優しい声だった
ky
ようやく顔を上げる
そこには、真っ直ぐに俺を見つめる真剣な表情の彼
───否
rt
目に溢れんばかりの涙を溜め、静かに微笑む彼の姿があった
まるで、「教えてほしい」「知りたい」という彼の願いが、やっと叶ったとでも言うように
ky
堪えきれなかった
いや、堪えられるわけがなかった
ky
溢れ出る想いは温かな雫となり、静かに頬を濡らした
彼の両手を自身の右手でさらに包み、顔に近づけ祈るような体制になる
神様、これは現実なのだろうか
これが現実で良いのだろうか、と
静かに微笑むレトルトは、キヨの問いに答えるかのように、ただ優しい眼差しを向けるだけだった
今まで逃げてきた過去の自分に、やっと手を差し伸べられた気がした
同時に、自分の気持ちに正直になってもいいんだと思えた瞬間でもあった
To be continued...
コメント
1件
初めまして、ここまで時間を忘れて読み耽ってしまいました。一言いいですか?はい、只今泣いております。 kyさんの悩み、欲、後悔、懺悔、緊張、思慕、覚悟…一つひとつの感情がこちらまで体験させられたように苦しいほど伝わってきました。これほどまでに感情を揺さぶる文章力と構成、ただただ圧倒され、今も余韻に浸っています。 そしてrtさん、彼も彼で起こった事、kyの言葉に思いを巡らせ寄り添う、受け止める、そして知りたいと伝える。プロセスが構築されてて違和感がないし、スッと心に入ってくる…rtさんは大切だからこそ踏み込めない、でも大事な人の本心を知りたい。kyは伝えてしまった後、彼との今後を思ってしまうからこそ伝えられない。2人の思い…どちらにも感情移入出来て泣きました。続きが気になって仕方がありません…これからも応援しています。