サラリーマンの湯川が、安藤と名乗る私立探偵に声をかけられたのは、もう年の瀬が迫った十二月のある日、会社帰りのことだった。
安藤は言った。
安藤
ふつう身元調査というものは、本人に悟られないように、こっそりやるものなのではないだろうか。
それを自分が探偵であることを明かした上で、身元を調べさせてほしいという。
湯川
と湯川は笑った。
安藤
悪い気はしなかった。
安藤
湯川
安藤
湯川
安藤
この男、よく調べている。湯川はわずかに警戒を強めつつ、あえて笑った。
湯川
安藤
この言い方では、依頼人が妻の実家の誰かだと明かしているようなものだ。
正直な男だと湯川は思った。
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