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望まれない妊娠

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望まれない妊娠

1 - 望まれない妊娠 第1話

♥

2,401

2020年07月11日

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由紀子

うっっ、お腹が…

良彦

由紀子、大丈夫か?

良彦

ここを抜けたら村に着くから

由紀子

うん、ちょっと蹴ったの

私はそう答えて、大きなお腹を撫でた

妊娠9ヶ月

由紀子

良彦こそ、ずっと運転してる

良彦

俺はいいんだよ

良彦

初めて皆んなに由紀子を紹介できる

由紀子

でもこれだけ遠いとなかなかね

良彦

やっと奥さんを生まれ故郷に連れて帰れるから──

「千末利村に」

由紀子

ちまつりむら

由紀子

何度きいても凄いけど

良彦

でも、すげーいいとこだから

良彦

あっ、ほら!

由紀子

うわぁ、のどかだね

良彦

こう見えてもブドウの名産地で、ワインを卸してるんだ

良彦

そのうち世界に名が知れる

義母

由紀子さん、いらっしゃい!

義父

由紀子さん、よく来てくれたね

由紀子

お義父さんお義母さん、お久しぶりです

義母

自分の家だと思って寛いで

義父

早速、飯にしよう!

由紀子

あっ、手伝います!

義母

いいのいいの!妊婦さんは座ってて!

義父

由紀子さん、お酒はいける口かい?

義母

お父さん!なに馬鹿なこと言ってるの!早く手伝って下さい!

その時、縁側から初老の女性が──

義母

マっ、『マザー!』

由紀子

(『マザー』…?)

義父

マザー!どうぞこちらに!

マザー

良彦の奥さんをひと目拝もうとね

マザー

これは見目麗しいお嬢さんだこと

由紀子

お嬢さんだなんて…

良彦

嫁の由紀子です

マザー

ご長男も誕生するし、これで村も安泰だわ

由紀子

…長男?

村人

こんにちは!

村人

こんにちは!

由紀子

こんにちはー

由紀子

(良彦が気晴らしに散歩してこいって言うから)

由紀子

(ひとりで歩いてるけど…のどかでいい村だな)

由紀子

(お義母さんも村の人たちも良い感じ)

由紀子

(マザー?てお婆さんには凄く気を遣ってたけど…)

あ、赤ちゃん?

由紀子

えっ?

赤ちゃん!?

小汚い女がいきなり飛び出してきた!

由紀子

ちょっと!?

私の赤ちゃん…

私のお腹に手を伸ばして──…

由紀子

や、やめてっ

???

やめなさい!

お、お前は──

『マザー』の犬!!

???

向こうに行きなさい!!

なんで止めるの…?

お前なら私の気持ちが分かるでしょ…?

赤ちゃんを…

???

うるさいっ!向こうに行けっ!!

由紀子

あ、あの…

???

あなたが由紀子さんね?

タミコ

私は、タミコよ

タミコ

さっきの人は気にしないで!

タミコ

あなたのことは聞いてるわ

由紀子

そうなんですか?

タミコ

ええ、年も近いし

タミコ

ちょうどマザーに、村を案内するように言われてたの!

タミコ

千末利村の神様が宿る神社よ

由紀子

随分と格式があるみたい

タミコ

昔からある神社だからね

タミコ

この村自体もかなり歴史の古い村なのよ

由紀子

…すこし、変わった村ですよね

タミコ

そう思うのも無理はないわ

タミコ

マザーみたいな人、普通の村にはいないものね

由紀子

マザー‥

由紀子

あの人って…?

タミコ

マザーは…

「予言者よ」

タミコ

未来を予言できるの

由紀子

へぇー

タミコ

あっ、信じてないでしょ?

由紀子

いや、そんなこと…

由紀子

でも、長男が誕生するとか…

由紀子

赤ん坊の性別は女の子なのに

タミコ

ふふふ、きっとそっちが間違ってるのよ

タミコ

私はマザーのお世話をしてるんだけど

タミコ

マザーの予言はびっくりするくらい当たるんだから

由紀子

そんなに?

タミコ

この後、由紀子さんたちを歓迎するお祭りがあるのよ

タミコ

そこでマザーが未来を予言してくれるはずだから

由紀子

楽しみにしてる

由紀子

(でも未来を予言なんて…)

タミコ

さ、行きましょ!

多勢の村人たちがひざまずいていた

由紀子

(全員が白いローブを着ている)

由紀子

(もしかして、村人全員が出てきてるのかも)

タミコ

さぁ、この道を真っ直ぐよ

タミコ

そこでマザーがお待ちだから

タミコに背を押され、私は歩き出した

由紀子

(みんな、微笑んでる)

由紀子

(私を祝福するように)

良彦

由紀子っ

少し離れたところから、良彦が手を振った

由紀子

(まるで結婚式みたい)

由紀子

(あっ、そっか)

由紀子

(できちゃった婚だから、正式な結婚式してないし)

由紀子

(それで良彦が…?)

マザー

よくぞおいでくださいました

由紀子

あっ、どうも

マザー

これから血の儀式を交わします

由紀子

血?

マザー

怖がらなくていいのよ

マザー

あなたの大切な赤ちゃんの、未来を予言するだけだから

そう言ってマザーが取り出したのは──

由紀子

えっ!?

良彦

由紀子、大丈夫だから!

由紀子

でも…

マザー

指を少しだけね

マザーが私の指に刃を滑らせる

由紀子

痛っ!

そして血が出ている指先を、自分の額に押し当てた

マザー

これでいいわ

マザー

これであなたも、あなたのお子さんも千末利村に歓迎されるの

由紀子

(な、なんか怖いけど…)

マザー

さぁ、いらっしゃい

マザーが、私の出っ張ったお腹にそっと手を乗せた──…

その瞬間!

マザーの顔が豹変した!

マザー

あ、あああっ、あああ!

由紀子

えっ、ちょっと!?

マザー

あああっ!ああああー!

白目を剥いて顔を震わせるマザー

由紀子

は、離してっ!

私が手を振り払うと、黒目に戻ったマザーは、鬼の形相で私を──

いや、私のお腹を指差して叫んだ

マザー

あ、ああっ!

「悪魔の子だ!」

マザー

悪魔の子だった!

由紀子

な、なにを言ってるの!?

マザー

このお腹の中の子は悪魔だ!

マザー

村が、滅びてしまう!

マザー

絶対に生ましてはならん!

マザー

絶対にっ!

そう叫んで、マザーが私のお腹めがけてナイフを振り下ろす──…

由紀子

こ、来ないで!

ドンっ

マザー

ぐっ、ぐ…

由紀子

ちょ、ちょっと!?

マザー

あ、あくっ、ま…

石に頭を打ちつけたマザーの顔が、血で赤く染まった

マザー

あぁああああー!

「絶対に子どもを生ませるな!なにがなんでも殺せ!」

「殺せ殺せ殺せぇええええー!」

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コメント

30

ユーザー
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マザーが言ったら、村人全員敵じゃん

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