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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

ヴィッテとスライが 我が家に来た翌日。

私の仕事はお休み。

…ってなわけで早速、 “スライム同士の通信”を 試してみることにした!

マキリ

『パソコン』や『スマホ』の
役割を『スライム』に
担当してもらう――

マキリ

――今のとこ
これしか
決まってないし、

マキリ

やっぱり、まずは
実際にテストするのが
近道だよね!

ヴィッテ

わくわくっ♪

スライ

……

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>…まずは何から実験しますか?
・・・・・・・・・・

マキリ

そうだなぁ…

マキリ

第一段階のテストは、
家の中での“チャット”を
試してみよっか

ヴィッテ

あたしも
やるっ!

マキリ

ならヴィッテちゃんと
スライは、2階で
待機しててくれる?

マキリ

私と2号が
1階から“チャット”を
飛ばすから、

マキリ

うまく文字が
表示されるかどうか
教えてほしいんだ

ヴィッテ

おっけ~

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>承知しました。
・・・・・・・・・・

ヴィッテ&スライは 2階の寝室に向かった。

そして、私と 2号(スライ分裂体)は、 1階キッチンで待機中。

マキリ

ふぅ…

スライ2号

……

マキリ

…2号、
準備はいい?

文字表示(スライ2号)

・・・・・・・・・・
>いつでも構いません。
・・・・・・・・・・

マキリ

じゃあいくよ

マキリ

『トーク開始』

マキリ

……こちら
1階のマキリ

マキリ

ヴィッテちゃん、
文字は表示されて
いますか?

マキリ

『どうぞ』

“チャット”時の喋り方は、 無線インカムのルールを 参考にした。

学生の時、バイト先で 使ったことがあったんだよね。

文字表示(スライ2号)

・・・・・・・・・・
■マキリ

>こちら1階のマキリ。

文字表示(スライ2号)

>ヴィッテちゃん、文字は表示されていますか?
・・・・・・・・・・

まずは2号の体に “私が喋った内容” が 表示される。

スライ&2号に伝えた通り、 喋り始めの『トーク開始』と 終わりの『どうぞ』は 省略されてるし、

肝心の内容も ちゃんと合ってるね!

マキリ

問題は
ここからだけど…

固唾を飲むこと 数秒。

文字表示(スライ2号)

・・・・・・・・・・
■ヴィテッロ様

>こちら 2かいの ヴィッテよ。

文字表示(スライ2号)

>マキリ、もじは ちゃんと ひょーじされてるわ。
・・・・・・・・・・

マキリ

よしッ!!

思わず立ち上がる私。

ヴィッテ

ねぇねぇ
どうだった⁈

パタパタ急いで 階段を駆け降りてきたのは、 瞳をきらきらさせたヴィッテ。

スライ

……

その後ろからスライが ぴょこぴょこ降りてくる。

マキリ

こっちも
ちゃんと文字が
表示されてたから、

マキリ

第1段階のテスト
成功だよ!

ヴィッテ

やったぁ~~♪

手を取り合って 大喜びする 私とヴィッテ。

初めてのチャットは、 たった1文ずつのやり取り だった。

完成形には、ほど遠い。

でも間違いなく、私が知ってる “インターネットの断片” そのもの。

それが…とても、 うれしかったんだ!

マキリ

じゃあ見事に
通信テスト第1段階が
成功したってことで、

マキリ

そのまま第2段階に
入ってもいいかな?

ヴィッテ

もちろんよっ!

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>内容によります。

文字表示(スライ)

>第2段階はどのような検証を予定していますか?
・・・・・・・・・

マキリ

やっぱりテスト範囲は
少しずつ広げるのが
無難だよね

マキリ

だから今度は、
通信する距離を
少し伸ばすのはどう?

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>距離を伸ばす、ですか?
・・・・・・・・・・

マキリ

さっきの第1段階は
室内での近距離の
通信テストだったよね

マキリ

だから今度はスライと
ヴィッテちゃんには
家で待っててもらって、

マキリ

私と2号は家の外から
呼びかける形で
通信を試したいんだ

スライ

……

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>……承知しました。

文字表示(スライ)

>ならばマキリは「ある程度ヒトが多い地点」に行ってから、2号に呼びかけてください。

文字表示(スライ)

>現在時刻なら『エイバス中心街』周辺が望ましいです。
・・・・・・・・・・・

マキリ

なんで?

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>実行すれば理解できます。
・・・・・・・・・・

マキリ

確かに
“論より証拠”
だよね

マキリ

わかった、
やってみるよ!

理由はわかんないけど、 スライなりに 考えがあるっぽい。

指示に従ってみるか。

30分後。

出かける準備をした私が 玄関のドアを開けようと したところ――

マキリ

それじゃ、
いってきま――

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・

> 『 沈黙 は 金 』

・・・・・・・・・・

――滑り駆け寄ってきたスライが 体に “大きな文字” を 表示した。

マキリ

えっと…

マキリ

…急に
どうしたの?

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>これは以前に私が耳にした言葉で、『何処かの国の格言』とのことです。

文字表示(スライ)

>今のマキリに最も必要な言葉だと考えます。
・・・・・・・・・・

マキリ

そ、そっか…

脈略が全く 理解できないんだけど…

…もしかしてスライ、 意外と“不思議ちゃん”系 だったりする?

マキリ

…とにかく、
いってくるね!

ヴィッテ

いってらっしゃーい

スライ

……

ヴィッテ達に見送られ、 私と2号は家を出た。

マキリ

さて、せっかく
出かけることだし、

マキリ

中心街に行く
わけだから、

マキリ

テストついでに
買い物でも
してこよっかな?

スライ2号

……

マキリ

ヴィッテちゃん達が
しばらく我が家に
泊まるわけだし、

マキリ

食材とか、お皿とか
スプーンとかも
買い足したいよね

マキリ

うち、1人暮らし
始めたばっかで
食器少ないんだよなぁ…

マキリ

…手頃な値段で
良さげなのが
あるといいけど――

――ドドドッ ドドドォッ!

――ドカドカ ドタドタッ!

道の向こうから 凄い勢いで、5人の男達が 猛ダッシュしてきた!?

マキリ

な、何事ッ!?

マキリ

みんな
目が血走ってて
怖いんだけどッ!?!?

私は、慌てて 道の端へと逃げた。

マキリ

こ、ここだったら
邪魔にならないはず…!

マキリ

ねぇ2号、
あれ何だと思う?

何気なく振り返って スライ2号に話しかけるが――

マキリ

…おや?
2号がいない?

マキリ

2号って、家を出た時から
ぴょこぴょこ私の後ろを
付いてきてたはずだよね?

マキリ

どこで
はぐれたんだろ??

きょろきょろ辺りを 見回すと――

――2号ってば、 道の真ん中で 止まってるんだけど!?

走る人々が 止まることなく 2号へ近づく。

マキリ

やばッ、
踏みつぶされちゃう!

とっさに、私は 2号に声をかけよう としたが――

傷だらけの大男

おりゃァッ!!!!

走る集団から 1人の男が飛び出して、 特大の剣を振るった。

――ズザァッ!

マキリ

男の剣が、2号の体を 真っ二つに切り裂く。

左右に分割された ゼリー状のスライムは 粒子に姿を変え、消滅。

全ては、一瞬の、 出来事だった。

傷だらけの大男

…おい姉ちゃん、
怪我は無ェかッ?

私のほうへ 野太い声で呼びかけたのは、 筋肉ムキムキで傷だらけの大男。

彼の手に 握られているのは――

――さっき 2号を殺した “大剣” 。

マキリ

ヒッ…!?

瞬間、“何か”を 叫びそうになった。

同時に私の頭をよぎったのは――

・・・・・・・・・・ >『 沈黙 は 金 』 ・・・・・・・・・・

――さっきスライが 表示した“格言”。

声にならない声と ともに、

私の顔から 血の気が引いていった のだった。

マキリ

……

マキリ

………………

マキリ

……え?

青かったはずの空が、 いつの間にか、 オレンジ色に染まっていた。

マキリ

い、意味
わかんない…

マキリ

…ちょっと整理しよう

混乱する頭を落ち着かせつつ、 状況を思い返してみる。

マキリ

通信テストするために
外出して、

マキリ

買い物がてら
エイバス中心街のほうに
向かって歩いてたら、

マキリ

急に走ってきた人達に
2号が攻撃されて…

マキリ

…そうだ

マキリ

あの時、私、
走って逃げたんだ…

2号が殺され動揺した私は、 その場から思わず 全力で走り去ってしまった。

ふらふら放心状態で歩くうち、 いつの間にか夕方に なっていたのだろう。

マキリ

…2号って
スライの分裂体
なんだよね?

マキリ

分裂体が消えたら、
本体のスライは
どうなっちゃうのかな…

“脳裏に焼き付く光景”が フラッシュバックすると ともに、

“最悪な想像”が 頭をよぎる。

それまで元気だった2号が 真っ二つになった瞬間。

スライムを瞬殺した 大剣男の、 鬼気迫る表情。

マキリ

…………

思い出すだけで、ガタガタと 体の震えが止まらない。

マキリ

…だけど

マキリ

震えてばかりも
いられない……か

現在、 私が立っているのは 我が家の玄関前。

…そう。

今朝、ヴィッテとスライが 送り出してくれた場所。

マキリ

さっきの出来事を
ヴィッテちゃんに
伝えなきゃだよね…

マキリ

スライのことも
心配だし、

マキリ

このまま
逃げるわけには
いかないし…

マキリ

…そもそも
逃げたところで
行く当てはないもの

私は、意を決して 玄関のドアを開けた。

ヴィッテ

あっ!

ヴィッテ

おかえり~♪

マキリ

た、ただいま――

文字表示(スライ)

・・・・・・・・・・
>随分遅かったですね。
・・・・・・・・・・

マキリ

――スライ!

マキリ

無事だったんだ…
よかったぁ……

いつも通りの元気なスライに、 私の中で張り詰めていたものが 一気にゆるんだ。

黎明のスラピュータ~おやつ係と異世界幼女のスライムなインターネット構築計画【第2回テノコン特別賞】

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