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あの日失った声を、キミがみつけてくれた

第3話 - あの日失った声を、キミがみつけてくれた第3話 -スケッチブックと少女-

142

2022年06月15日

#青春恋愛

#学園

#同級生

テラーノベル

街中

お婆ちゃんを見送ると、女の子は持っていたスケッチブックを俺に見せた。

女の子

『ありがとうございました！』

真島正志

（なんでスケッチブック…？）

真島正志

（もしかして…）

真島正志

声、出ないのか？

俺の問いに、女の子はこくこく頷いて答える。

女の子

『かわりに呼び止めてくれて助かりました』

女の子

『本当にありがとう』

真島正志

別に…

女の子

（でも、なんで気づいてくれたんだろう…）

女の子

（そんなに顔に出てたのかな…？）

真島正志

（顔というか、心の声に出てただけだけど…）

女の子

（わざわざ駆けつけてくれて、優しい人だなぁ）

女の子

（この人がいてくれてよかった）

真島正志

…っ

真島正志

（裏表のない子だな…今時珍しい）

真島正志

…じゃ、じゃあ俺行くから

真島家/19:03

父

今日はおかずの種類が多いなぁ

母

喜んでもらいたくて、頑張ったの

母

今朝は家事も手伝わせちゃったし

母

（“今日は”って何よ。嫌味かしら？）

父

（疲れて帰ってきてるのに…）

父

（こんなに食えるわけないだろ…）

父

母さんはすごいな、正志

真島正志

…

真島正志

（ほんといい加減にしてくれよ…）

真島正志

（言いたいことがあるなら自分で言えよな）

父

正志？

真島正志

悪い、食欲ねーわ

真島正志

後はふたりで楽しめば？

母

…

正志の部屋

真島正志

（昔は、こんなんじゃなかったのに…）

真島正志

（いや、俺が気づいてなかっただけか…）

人の心の声を聞いたのは、両親のが最初だった。

真島正志

（小学生の頃、親父たちが、俺にお互いの愚痴を話してて…）

真島正志

（ああ、実は仲が悪いんだって気づいて…）

真島正志

（それからだっけ…心の声が聞こえるようになったの）

真島正志

（正直こんな力、あっても困る）

真島正志

（――と思ってたけど…）

真島正志

……

真島正志

あの子、喜んでたな…

脳裏に、スケッチブックを抱えた彼女の笑顔が浮かぶ。

真島正志

（今日だけは、この力があって良かったかも…）

真島正志

（なんて、俺の柄じゃねぇか）

数日後

真島家/玄関

母

正志、これ

真島正志

なにこの500円

母

今日のお昼ご飯はこれで買ってちょうだい

母

ごめんね、お弁当作れなくて

父

体調悪いのかい？

母

少し疲れてるだけよ

父

でも、お弁当も作れないくらいしんどいんだろう

父

今日はちゃんとゆっくり休んだほうがいい

母

（“お弁当も”って…何よ、その言い方…）

母

（あなたは作ったことがなくてわからないだろうけど）

母

（お弁当作るのだって結構大変なんだから）

母

ごめんね、正志

真島正志

別に。弁当にも飽きてたし、ちょうどいい

父

正志、そんな言い方ないだろ

母

いいのよ

母

いつも同じような内容じゃ飽きちゃうわよね

母

あなたは、いつも病院の美味しいご飯食べてるから正志の気持ちがわからないのよ

父

ははっ、ひどいなぁ

父

僕は病院のご飯より、母さんのお弁当のほうがうれしいけど

父

愛妻弁当のほうが格好がつくし

母

（勘弁してちょうだいよ）

母

（病院の他のお医者さんたちに見られると思うと、栄養とか気にして作らないといけないじゃない）

真島正志

あのさ

真島正志

俺もう行くから

母

え、ええ、いってらっしゃい

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