コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
雨音ちゃん、大丈夫だろうか
今からでも、連絡をしてみようか?
俺は……
秋斗
中村雨音
この言葉が心の中を渦巻く
無性にどこかへ連れて行きたくなる
いや、連れて行かなくては!!
そうだ、なにをしている
彼女を招待しよう
あの世界に
秋斗
すぐに電話をした
雨音はすぐに出てくれた
「もしもし?秋斗くん?」
秋斗
「え!?どういうこと?」
秋斗
「そ、そんなこと言われても」
「……住所を教えればいいの?」
秋斗
「分かった。じゃあ、送っておくね」
電話は切れた
急がないと
俺の頭の中の声が、そう指示する
やらなくては
俺は家を出た
送られた住所まで走って行った
多分、ここだろう
チャイムを押す
すると、すぐに雨音ちゃんが出てきた
雨音
雨音
雨音
俺は手を引っ張って走り出した
急がないと
雨音
秋斗
目的地は
"橘邸"だ
様々な公共機関を乗り継ぐ
その間、雨音は不安そうだった
不審な目でこちらを見て 景色を注意深く見ている
山深くなってくると 「降ろして」 と必死に懇願した
しかし 俺には指令があるのだから
仕方がない
目的の駅で降りた
雨音
中村雨音は手を振り解いた
雨音
雨音
秋斗
俺は電話をする
「了解」
たった一言、相手は言った
俺は相手が誰なのか知らない
全く知らない
雨音
しかし
まだ、やることがあった
俺は、中村雨音に向き直り近付いた
中村雨音は後ずさる
雨音
雨音
秋斗
俺はポケットからハンカチを出し
中村雨音の顔に押し当てた
雨音
中村雨音は倒れた
……と、ちょうどその時 一台の車がやってきた
電話の相手だ
黒い車から一人の人間が降りる
「よくやった」
「後はもう、帰ってくれて結構」
人間は中村雨音を後部座席に乗せ 山中へと消えて行った
視界が突然、暗くなった
……
秋斗
俺はいつの間にか、街中に佇んでいた
ここはよく通る
見慣れた光景
でも、俺は何をしていたんだ?
思い出せない
数日は経ったような気がする
確か、雨音ちゃんが……。
雨音ちゃんが行方不明になったのち 山奥の館で亡くなったと聞いたのはいつ頃だったか
風の噂では、事件に巻き込まれたらしい
事件の詳細はよく分からない
ただ、いつの間にか訃報を知った
そしていま ようやく魂が戻ったように、そのことを認識したように思う
一体、何が?
誰がそんなことを……?
そもそも 雨音ちゃんは"なぜそんなところに行った"んだ?
わからない
わからないし、思い出せない
何となく、一緒だったような…?
「心って、美しいわね」
耳元を通り過ぎる声
誰かがすれ違いざまにそう言ったのだ
俺は必死に声の主を探した
しかし もう人混みに溶けてしまっていた
俺は、人混みのなかで静かに泣いた
IF STORY