幼馴染の恋が始まっているのを感じた
俺
(俺に協力出来ることは何かあるだろうか)
雨の降る帰路を軽い足取りで俺は通っていった
俺
母ちゃん!ただいま!
母ちゃん
おかえり〜
母ちゃん
…って!朔!びしょ濡れじゃない!
母ちゃん
傘はどうしたの!?
俺
あ〜…実はさ…
俺は事情を母ちゃんの青春センサーに盛大に引っかかるように話した
母ちゃん
あら〜 そうなの?
母ちゃん
良いわね青春してるわ〜
母ちゃん
朔と違って…
俺
一言多いっての!
母ちゃん
事実でしょ!
母ちゃん
取り敢えず風呂入ってきな!風邪ひくよ!
俺
はーい!
母ちゃんに怒られるのは何とか回避できた
俺
(紅の恋を応援できるなら、してやりたい。)
俺
(これでも幼馴染なんだからな)
母ちゃん
にしても朔から紅君の話聞くの久々だねぇ…
母ちゃん
始めてあった時はお互い人見知りしてたの懐かしいわ
俺
紅とはクラスも部活も別だからな〜…
俺
家も凄く近い訳じゃないし、忙しいからな〜
母ちゃん
そうねぇ…
そんな会話を交わしつつ、俺は風呂場に向かって歩き始めた
紅と出会いは、記憶が正しければ幼稚園生ぐらいだったと思う
俺
正直、ここまで仲良くなるとは思わなかったな
ちょうどこのくらいの時期に母ちゃんと紫陽花がとても綺麗な公園に行ったのが初対面だった
俺
母ちゃん!早く!早く!
母ちゃん
朔〜!そんなに急いだら転ぶわよ~!
お気に入りの遊具に向かって俺は全力疾走していた
俺
誰かいる…?
遊具には既に同じくらいの年頃の少年とそのお母さんらしき人がいた
母ちゃん
あっ!千日さんじゃないですか〜!こんにちわ〜
紅の母ちゃん
葉々小さん!朔君も!こんにちわ〜
母ちゃんと少年の母ちゃんらしき人が急に話しだしたので、俺と少年は驚いた
多分、同じ顔していたと思う
俺
…誰?
紅
ママ、この人達は誰…?
母ちゃん
朔と同じ幼稚園の子よ。組は一緒になった事ないけど…
母ちゃん
せっかくだから、名前言いってあげな
紅の母ちゃん
紅、この公園の近くに住んでいる葉々小さんの子よ
紅の母ちゃん
お名前教えてあげて?
俺達はそれぞれの母ちゃんに促されて恥ずかしがりながら挨拶した
俺
俺は…葉々小朔、です
俺
よろしく…
紅
ぼっ、僕は…!千日紅で…す
紅
よろし、く…
俺達は名前を言った後、恥ずかしくなって母ちゃんの裏に隠れた
母ちゃん
朔!恥ずかしがりすぎ!
紅の母ちゃん
うちの子も恥ずかしがってるみたいです…
母ちゃん
普段は元気なんだけどねぇ
紅の母ちゃん
確かに朔君、元気ですよね
母ちゃん
元気過ぎて困るくらいよ〜
母ちゃん達の雑談で暇になった俺達はお気に入りの遊具で遊び始めた
俺
…紅君もこの遊具好き?
紅
う、うん…好き
俺
俺も好き!
俺
一緒!
紅
一緒…
俺
何組なの?
紅
さくら組
俺
俺ひまわり!
紅
…隣だね
俺
だね!
遊んでる内に仲良くなっていった
俺
お友達になろ!
紅
…うん!なろう!
俺
新しいお友達できたー!
今では互いにかけがいのない親友だ
俺
…そう考えるとなんだか感慨深くなってきたな〜
あの公園がぼんやりと浮かぶ
俺
あの時の紫陽花は本当に綺麗だったな…
俺
…もう出るか
昔の思い出を記憶から掘り出した俺は、ようやく長風呂から出た
昔の事を思い出しながら風呂を終え、自分の部屋に小走りで戻った
俺
何処にあったかな〜…
部屋に入り、棚の奥に仕舞っていた少し色褪せたアルバムを取り出し、ページを捲った
俺
懐かしいな…ん?これ…
小6の頃の写真を見た時、俺は紅があの時起こしてしまった事件を思い出した