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君と夏

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君と夏

6 - 3話 初恋と雨降花

♥

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2024年08月04日

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小6の時

紅の性格がよく出た出来事があった

(あの時の俺は途方もなく無力だった)

俺にとっても忘れられない事件だった

思春期に入り始めた俺らは身体の変化だの恋愛だのに夢中になって、大人ぶっていた

(男子の恋愛ってこんなに盛り上がるもんだったか?)

勿論、女子の方が盛んだった。だけど、この時期の男子にしては本当に盛り上がってたと思う

(紅はそんなの興味無いらしいが、モテる)

(悔しい)

ある日の放課後のことだった

お前告白されたのか!?

うん、近くの席の子から

いーなー!羨ましい!

紅は男子からハーフで金髪が可愛いと評判の女子に、告白された

どんな感じで告白されたんだ!?気になる!

誰も居ない空き教室に呼び出されて…

呼び出した子

急に呼び出してごめんね…

大丈夫だよ

呼び出した子

私ね、紅君が好きなの

呼び出した子

初恋なの!

…初恋?

呼び出した子

う、うん…

そう言うとその子は俯いた。そして…

呼び出した子

へ、返事は後で良いから!

あっ…

告白してきた子は、そのまま走り去ってしまった

…って感じだったね

初恋も掻っ攫ったのかよ。モテ男め

てか、返事はどうすんだ?

断ろうと思う

せっかく可愛い子と付き合えるチャンスなのに?

好きでも無いのに付き合うのは、相手に失礼な気がするからね

なるほどな…まぁ、お前がそうゆうなら反対はしない

これだけだったら、ただ紅のモテエピソードを語っているだけで終わったが問題はここからだった

告白してきた女子はクラスの中心にいる奴の好きな人であったのだ

(クラスの中心というのはは良い奴に失礼か)

力で物言わせている奴であり、紅が告白され、振ったことを知ったそいつは紅に嫌がらせをした

また、授業中に手紙渡された…暇なのかな

どうせ書いてある事はロクでもないんだから捨てとけ

あと、物全部あるか?盗まれてないか確認するぞ

えっと…あっ、筆箱が無いみたい。どこだ…

前はゴミ箱だったから、掃除ロッカーかもな

確認してみる

…ありがとう。ごめんよ

紅が謝る必要ないだろ…

朔がいった通り、掃除ロッカーに入ってたよ…

…大丈夫か?

大丈夫。気にしてないから

…そうか

(逆恨みだけでこんなにやるって…暇かよ)

紅は気にしている素振りを全く見せなかった

(紅の近くを離れるの不安だな…監視するのも大変だ)

…気にしてなさそうだし、大丈夫なのか?物凄く心配だ

俺は紅の様子を見てまだ大丈夫だと思っていた。

毎日毎日、やってて悲しくないのかな

そのまま気にせずに過せ…時間が何とかしてくれるさ

うん…

毎日のように行われる嫌がらせに紅の心が擦り減っているとも知らずに。

……

(最近口数減ったな)

紅は前より喋らなくなってしまった

(何か話かけずらいな)

(そっとしておくのが良いのだろうか…)

俺はその場から離れた

(大丈夫。大丈夫。紅は気にしてないんだから)

俺は何もしなかった。紅のSOSに気づいてやれなかった。何かすれば変わったかもしれないのに

それは突然だった。紅が嫌がらせをしてきたあいつを急にぶん殴ったのだ

…紅!?

(先生は…クソっ!昼休みだから居ねぇ!)

とても鈍い、嫌な音が聴こえて、振り返ってみると、あいつが頬を押さえ、尻餅をついていた

(殴ったのか!)

次に聴こえてきたのは煩い悲鳴だった。大方、現場を見ていたクラスメイトの女子のものだろう

(煩ぇな…口縫い付けてやりてぇ)

(…一体どうしたんだ。紅)

その場は悍ましい程、静かになった。さっきの悲鳴が嘘のようであった

……

…泣いてる、のか?

昼休みはそのまま終わった。先生が教室に来るなり、あいつは半泣きで先生に何か言い始めた

何故だ…?

どうして…紅が…

脳みそが整理出来ないまま、あいつと紅は先生と一緒に教室を出ていった。残された俺達は自習になった

(限界だったのか?俺は気づけなかったのか?)

(何も手につかない)

少しすると話し声が聞こえ始めた。事件の詳細や紅、あいつの事を話している人だ

吉田

紅君、何であんな事したんだろうね?

中田

何か嫌がらせされてたらしいよ?

吉田

そうなの?

中田

殴られた人、好きな子がいたらしくて…

中田

その好きな人が紅君に告白したって聞いたよ

吉田

もしかして、その腹いせで紅君をいじめてたの!?

中田

みたいだね

吉田

え〜!それじゃあ紅君悪くないじゃん!

近くで聞こえたそんな声に俺はいつの間にか苛ついていた。何に苛ついるのか分からなかった

(何も知らないくせに騒いでる奴らも苛々する…)

(だけど、近くにいた癖に何も出来なかった自分が一番ムカつく)

6時間目になり、紅とあいつは戻ってきた。どちらも目に涙が浮かんでいた

(あいつは、自業自得だからどうでも良いが…)

(紅…)

心配だった。紅があんな行動をするのを俺は今日始めて見た。嫌なものが俺の胸を蠢いていた

俺達は一言も喋らずに雨降花の咲く道を帰り始めた

(何を言えば良いんだろう。何が正解なんだ)

俯きながら歩く紅に声をかけようとしても中々、出来なかった

雰囲気が全く違った。優しくて、真面目な紅が何処かへ行ってしまったようだった

(いつもの紅じゃない…)

このままじゃ、何かが駄目だと思った。俺は勇気を振り絞り何とか紅に声をかけた

紅…先生と何話したんだ?

別に。僕が悪いってことで話がついた

はぁ!?

紅が悪いだなんておかしい。嫌がらせをしたあいつの自業自得だ

あいつ、何て言ってたんだ!?

急に殴ってきたって先生に言ってた

…恨みを晴らせたから僕は満足だよ

…ごめん。本当にごめん

込み上がる感情のままに俺は謝った。謝ることしか出来なかった

何も気付けなかった自分があまりにも不甲斐なかった

謝んなくて良いよ。これからは多分何もしてこないよ

諦めるように言う紅に、俺は思いの丈全てをぶつけた。怒りなのか悲しみなのか分からなくなるくらいに

馬鹿野郎!一番辛かったのは紅だろ !

俺もあいつもクラスの奴らもお前に責められたって文句は言えないんだぞ!

朔…?

感情をそのまま、支離滅裂だろうが関係なく俺は言い続けた

何にも悪くないだろ!あいつが被害者ヅラするのは一番駄目だろ!

俺は明日、先生に何があったか全部話す!

えぇ!?良いよ言わなくて!もう過ぎた事だよ!

紅が咄嗟に否定したが、その時の俺はあいつを罰したい気持ちでいっぱいだった

そして、自分を責めないでほしかった

頼む紅…!助けられないかった俺の贖罪でもあるんだ!

先生に言わせてくれ!

顔をぐちゃぐちゃにしながら俺は言った。昼休みから蠢いていた感情が言葉として、涙として出てきた

朔…

ごめん。こんなに頼もしい親友が居るのに何も言わなくて…ありがとう

気づいたら、紅の顔も涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた

多分、あいつをぶん殴っても無くなら無かった負の感情が一気に出たのだろう

次あったら絶対!言えよ!

必ず力になるからな!

俺達はひとしきり泣いた後、それぞれの家に向かって帰っていった

ちゃんと親に言って、先生に伝えたよ

伝えられてよかったな

うん。相手の親にも謝ってもらったよ

しっかり制裁できたみたいで安心したわ…

その後、俺やその時現場にいた奴らも先生が当時の状況を知るために少し呼び出された

ハッキリとあいつの悪行を覚えている限り話した

(これで少しは贖罪できただろうか)

俺達はとてつもなく必死だった。だからだろうか

余りにも強烈なこの出来事は、どちらもこの事件の前後の事は全く覚えていないくらいである

「千日紅」という存在を分からされた気がするな…

紅はネガティブな感情でいっぱいになると諦めたり、一人で抱え込んだりする

そして自分の事を疎かにして卑下してしまう

(あの日、そんな性格を俺は思い知らされた)

俺は紅がまたこんな状態にならないようにする。なったら絶対に止める。俺はひっそり心に誓った。

思い出すのも疲れるな〜…

俺は、ため息をつきながら雨の止まない外をチラリと見てみる

あれって…

そこには、あの時の帰り道と同じぼんやりとした桃色の雨降花が咲き乱れていた

この作品はいかがでしたか?

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コメント

11

ユーザー

やっとみつけたー!!!!!!✨ ノベル版じゃなくて、こっちだったか!!! 探した甲斐があったー!とりあえず、「君と夏」の方では見つけられて満足!! でもまさか、そんな最初の方に登場して居る上に、紅くんと朔くんと同じ小学校とは、、、 あれ?でももし、マリーちゃんが紅くんのことをまだ好きだったら、藤花ちゃんヤバいのでは!? 恋のライバル出来ちゃう!?

ユーザー

作者のゆゆです。読んでくださりありがとうございます。今回も豆知識です。紅は怒らせちゃいけないタイプですが、怒る前に呆れや諦めが先にくることが意外とあるそうです。

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