感情を失くした俺は

疲れたな

これ以上周りに迷惑かけるんやったら

俺なんていない方がいいよな

アイツは誰なのか

考えている余裕もなかった

軽く舌打ちをした後、ベットから起き上がり病室を出る

前までちゃんと笑えてた、はずなのに

今は皆といるのも苦しくて、

足早に去ろうとすると俺の手首をzmは強く掴む

目の前にいるzmは目に光を灯していなかった

徐々にzmの顔に霧がかかっていくように

誰か見えなくなっていく

酸素が薄くなったように

息がしずらくなっていく

嬉しい

嬉しかったけど

さっきのzmの言葉がどうも脳内に響いて

残ってて

"なんで逃げるん"

なんでだろ

記憶も感情も取り戻したらいいことしかなくて

みんなとの関係性も戻って

もっと幸せになれるはずなのに

心のどこかでそれを拒否してる自分がいる

…取り戻した所で、本当に元に戻れるのだろうか

知りたくない事実もあるんじゃないかって…

知らない方がいいこともあるんじゃないかって…

考えれば考えるほど分からなくなっていく

俺の頬をツンと指でつついてくる

話すのを強制しないで、人の気持ちに敏感な大先生

言いたくないよ

今更

"記憶を取り戻したくない"なんて

俺は立ち上がりすぐに皆の元へ向かった

皆が渡してきたのは

大きな黄色い花束だった

俺の頬をゆっくりと涙が伝っていく

大先生が俺の肩に手を置く

後々調べると、その花はフクジュソウと言うらしい

見た目は薄い花びらが何枚も重なっており

美しく黄金のように見えた

花瓶に水を入れ花をそっと入れる

この花が枯れるまで俺達の関係が続けばいいな、なんて

そう思ってしまった