この声は届かない

そう言うと

綺麗な白い髪を揺らして答える

…正直な気持ち…

好き

そう言うと

目を大きく開いて驚いた

照れたり

顔を緩めて笑ったり

急に黙ったり

でも1度だけ

綺麗な顔を歪ませて

悲しそうに笑った

どうして悲しんだのだろう

さっきまで普通に笑っていた

わからない

わからない

どうして初兎は悲しい顔をした？

ふと、1つの考えが頭に浮かぶ

俺のせい？

俺が悪かったのか？

今も悲しい顔をしている君

なんで？

俺のせい？

俺が…

耳が聞こえないから？

話すことができないから？

…あぁ…

きっとそうなんだな

ごめん

ごめんな

"ごめん"

その言葉を伝えたかった

最後の文字を伝えようとしたとき

初兎は

俺の手が動かないようにおさえた

手を、握った

…顔をみる限り

怒っているような

悲しんでいるかのような

そんな顔をしていた

こんな顔をさせるのも、俺のせい

その声も聞こえない

ごめんな、

ごめん、初兎。

その顔のまま続ける指文字

混乱しているんだろう

焦っているんだろう

…

ごめん、初兎

ごめんなさい

俺の耳が聞こえれば

俺が声が出せたら

貴方はどんなに幸せだっただろう

…ごめんなさい

ごめん、初兎

そう伝え、俺は顔を歪ませた

静かに抱きついてくる初兎

指文字疲れてん

疲れた

俺はもう、

ごめん、初兎

そんな顔せんといて

ほら、笑って

そんな言葉も出せない

声が出たら

声が聞こえたら

君は

どんなに幸せだっただろう

ただの興味本位だった

僕はまろちゃんが好き

恋愛ともいえるし、友達としてともいえる

そうしたら

好き

そう返ってきた

そりゃあ気分は上がるだろう

そう

この時、嬉しすぎて 指文字使ってなかった

そういえばまろちゃん、

こえ、聞こえないんだった

…悲しかった

今まで当たり前だったこと

それが急に悲しくなった

でもまろちゃんを傷つけるにはいかない

笑おう

そう思って笑った

けど、

やっぱり声が届かないのは悲しくて

もう慣れてきたことなのに

ずっとしてきた 当たり前のことが悲しくて

何度も声をかけるけど

悲しそうにこっちを見てるだけで

やっぱり

声は聞こえないんだ

そう、思っていたら

まろちゃんの指が動いた

しょう

ご

め

　ごめ　まできて気付いた

謝ってるんだ

だめ

だめ

謝ったら駄目

すぐにまろちゃんの手を握った

でもその言葉も届くはずはなくて

必死で指文字をした

悪くないまろちゃんが謝るのが嫌で

必死だった

ゆっくりと動く指

まろちゃん

駄目って言ったでしょ、

謝らんといて

僕が謝るべきなんや

まろちゃんは 顔を苦しそうに歪ませた

ごめんね

ごめん、まろちゃん

抱きつくことしかできない

あぁ、

まろちゃんの 相手が僕じゃなければ

まろちゃんが 耳が聞こえることができたら

貴方は

どんなに幸せだっただろう