俺は何のために生きてるんだろう
この春、坂野宮高校に入学をした
何にもやる気などない、ただ過ぎ去って行く時を過ごしていた
本城 司
おい蓮!
城井 蓮
ん
本城 司
今日もまた病院か?
城井 蓮
おう、行ってくるわ
本城 司
...まだ治らないのか
城井 蓮
もう治んねーよ笑
俺は生まれつき肺の調子が悪く、中学の頃にいよいよ病状が悪化し、肺を片方手術で無くした
その様子を、週に1回ほど検査しなければならない
別になんとも思わないし、平凡には変わらない
だから肺が片方ないことなんて、別に苦でもなかった
松井先生
何も問題はなさそうだね
城井 蓮
だから最初から言ってんだろ。何ともないって
松井先生
だって君、昔からすぐに無理するじゃないか
松井先生
だから小学生の頃なんて大変だったんだよ?
松井先生
隙をついて走ったりするし...だから度々入院もさせてた...
城井 蓮
帰る
松井先生
まったく...気をつけて帰れよ
俺は松井先生の机の上にあった患者のカルテに目がいった
城井 蓮
新しい患者か...?
城井 蓮
心筋梗塞...助からねぇな
松井先生
これだけ病状が進んでれば...ってそんなこと言うな、蓮
城井 蓮
だって病状が進みすぎだろ。よくここまでほっといたもんだ
松井先生
昨日まで何も無かったそうなんだ。違う病気かとも思ったが、心筋梗塞の病状とかなり近かったもんでな
城井 蓮
アンタそれ、別の病状だったらどう収集つける気だよ
松井先生
いや、ほぼ間違いないよ、心筋梗塞で
城井 蓮
...ま、アンタの手は確かだからな
城井 蓮
じゃ、本当に帰るわ
松井先生
お大事にね。くれぐれも、気をつけてよな
城井 蓮
わかってるよ、何もしねぇよ
城井 蓮
(まったく...いつまで経っても親気分だな...)
城井 蓮
(たかが幼稚園からのつきっきり患者なだけだろ...)
城井 蓮
(ん?)
とてもでかいこの病院を、出口に向かって長い廊下を進んでいる最中のことだった
廊下のど真ん中に、本が1冊落ちていた
城井 蓮
(春永 凜々...)
ご丁寧に本には名前が書いてあった
城井 蓮
(春永 凜々って確か...松井先生の新しい患者か...)
俺は松井先生のところにこの本を返しに行こうとした時だった
春永 凜々
あ、あの...!!
後ろから女の子が声をかけてきた
後ろを見ると背の低い女の子が少し怯えた表情をして、こちらを見ていた
城井 蓮
なに?
春永 凜々
そ、その本...私のなんです...
震える指で、俺が拾った本を指さした
城井 蓮
あ、じゃあ返すわ
本を返すと体が少し震えていた
城井 蓮
...そんなに震えて...俺なんかした?
自分が何をしたか身に覚えがなく、唐突に聞いてしまった
春永 凜々
あ、!ち、違うんです!
顔を赤らめてから、その子はほんで顔を隠し、こう答えた
春永 凜々
あ、あまりにも綺麗な顔をしていて...びっくりしたっていうか...!
春永 凜々
私が話しかけるなんて恐れ多くて...すみません...!
これが、春永 凜々との初めての出会いだった
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