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蝶屋敷の奥の部屋
芙梛の部屋には、淡い灯りが灯っていた
静かすぎる程の静寂の中で 芙梛と無一郎は向かい合って座っている
暫く言葉も交わさず、 芙梛は膝の上で指をぎゅっと握っていた
そして、やがて意を決したように口を開く
芙 梛
芙 梛
芙 梛
時 透
無一郎は静かに頷いた
彼の目は、真っ直ぐ芙梛を見ている
芙 梛
芙 梛
時間が止まったように、 部屋の空気が一瞬にして重くなる
外からは虫の声すらも聞こえない
無一郎は、少しだけ視線を落としてから、目を閉じた
まるで、その事実を静か に自分の中に落とし込もうとしているように
やがて彼は、目を開いて言った
時 透
その言葉は予想とは違って、驚きや怒りではなかった
何処までも、静かで、優しかった
時 透
時 透
時 透
芙梛はその場に俯きそうになるのを堪えて、 唇を噛み締める
芙 梛
芙 梛
時 透
そう言って、無一郎は芙梛を真っ直ぐ見つめた
時 透
時 透
時 透
言葉の一つ一つが、芙梛の胸の奥に刺さってゆく
そして心の何処かが、じんわりと温かくなる
芙 梛
芙 梛
芙 梛
時 透
時 透
芙梛は何も言えなかった
ただ、涙が勝手に零れ落ちた
無一郎はそっと、芙梛の手を握る
その手はまだ震えていたけれど、少しだけ温かかった
コメント
2件
好き…続き出す予定ありますか????