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あの連絡があってから数ヶ月後。
ついに今日はドラマ初回放送の日。 夕飯を終えて、咲と哲汰はリビングの ソファに並んで座っていた。 テレビの前、スナック菓子と咲が入れた あったかい紅茶。 リラックスした空気の中で、 いよいよ番組が始まる。
画面には、オープニングでキャスト紹介―― 「関 哲汰」の名前が映ると、 咲は小さく拍手して笑った
咲
哲汰
画面が切り替わり、ストーリーが進みはじめる。 舞台は男子校。青春の空気の中に、 じわじわとふたりの関係がにじみ出していく。
そして―― 画面に映ったのは、 哲汰が演じるキャラクターが、 もう一人の男子キャラの顎をそっと持ち上げ、 距離を詰めていくシーン。
「……なあ、俺のこと、もっとちゃんと見ろよ」
低い声、少し照れた笑顔、そして―― そのままの流れで、キス寸前まで顔が近づく。
……そして唇が触れた。
画面の中では、切ない音楽が流れている。 けれど――咲の中に走ったのは、 キュッと胸をつかまれるような、 予期せぬ感情だった。
咲
でも、 でも、どこかザワザワしてしまう。
そのシーンが終わったあとも、 咲は言葉少なになった。 目はテレビを向いているけど、 まるで心ここにあらずのように。
すると――哲汰が、 ちらっと咲の横顔を見て言った。
哲汰
咲
咲は一瞬驚いたように目を開いたけど、 否定はしなかった。
哲汰
哲汰はテレビのリモコンを手に取って、 一旦音を下げた。
哲汰
咲
哲汰
哲汰は咲の手をそっと握った。
咲
哲汰
咲
咲は少しだけ目を潤ませながら、でも笑った。
哲汰
手を繋いだまま、咲はテレビに もう一度目を向けた。 画面の中で役を演じる彼も好きだけど、 今、隣で自分だけを見てくれるこの哲汰が、 何よりも特別だと思った。