この作品はいかがでしたか?
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そう言って、小首を傾げる、 隣に座る美青年。
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『なんで僕が悩んでいること が分かったの、、?』
『なんで初対面の、名前も 知らない僕に優しく してくれるの?』
顎に左手を当て、真剣な 顔をして、言葉を選びながら 答えてくれる美青年。
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分かっている。 初対面の、名前も何も 知らないような人に 自分の事を、ましてや 恋人との事を話すべき じゃないってことも。
これ以上、周りの優しさに 甘えてはいけないってことも。
でも、微笑む目の前の彼を 見ていると、『この人なら…』 と思ってしまう。 また、淡い期待をしてしまう。
この人なら分かってくれるのでは? 名前も知らない僕を慰めて、 励まして、そして悠くんのこと を怒ってくれるのでは? そして、汚れた、傷物の僕でも、 救ってくれるのでは…?
そんな淡い期待と浅はかな 希望を胸に抱き、僕は彼に 先程見た出来事を打ち明けた。
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顔を見ることができなくて、 俯きながら話していた。
でも、僕の話を何も言わずに 聞いてくれていた彼が、 話し終えた時にふと呟いた 一言に、顔を上げる。
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今にも泣きそうな顔をして、 まるで自分の事のように、 遠いどこかを見つめている彼。
そう言い、少し顔を歪めた。
そして、「まぁでも…」と 続けて_
こちらを向き、眉尻を下げ、 目を細めて微笑んで、 そう言ってくれる。
何故だろうか、その笑顔が 少し悲しそうに見えたのは。
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気づけばまた、頬を 涙が伝っていた。
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優しく微笑んでそう言い、 ポケットからハンカチを 取り出すと、僕の涙を 拭ってくれる彼。
『このセリフが似合う人 (イケメン)って実在するんや…』 と思ったのは内緒。
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その優しさが傷ついた 心に沁みて、人目も気にせず、 声を上げて泣き出してしまう。
小さい子供をあやすような 優しい声でそう言って、 僕の背中をさすってくれる彼。
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そう言って、白いけれど、 大きくて少しゴツゴツ とした手で、僕の頭を 撫でると、ハンカチを 握らせてくれる。
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僕は嗚咽でまともに喋ること ができず、ただ頷いた。
それから、何分が経っただろう。 僕は、涙が枯れるんじゃないか というくらい泣き続けた。
その間、名前も知らない彼は ずっと僕の横にいてくれて、 何も言わず、背中をさすった り、頭を撫でたりしてくれた。
そして、気づけば 雨は止んでいた。
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傘を閉じている、横の彼を 見ると、目を見開いて そう言った後、また微笑んだ。
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両手を握りしめ、その時の 右手の感覚で思い出した。 僕が握りしめている、 僕の涙でびちょびちょに なったハンカチのことだ。
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話を聞いてもらった上、 ハンカチまで貰うなんて流石に… そう思い、『洗って返しますから』 と言い、名前と連絡先だけ でも聞こうとした。
そう言われ、ハンカチを 握りしめた右手が、彼の 大きな両手で覆われる。
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僕は昔から、人の善意を無下に してしまうのでは、と思い、 そう言う優しさを断れないでいる。
本当に、悪いところだ。
そう言って、立ち上がり、 ロングコートを翻して歩き出す。
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声を絞り出し叫ぶ。 先程の泣き声以外で、 こんなに大きな声を出した のはいつぶりだろうか。
驚いたように振り返り、 そう言って手を振って、 去って行った。
『何から何までイケメンやな…』 と思い、去って行くその姿が 見えなくなるまで目で追った。
そしてふと、スマホを取り出し ロック画面を見ると、 17時50分を指していた。
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そう呟いて濡れた鞄を掴み 立ち上がると、先程の 名前も知らない青年とは 反対方向に走り出した_
今回はここまで! また短くてすみません… キリが良かったもので…((
🐇くんが泣き止んだ時、 雨も止んだ。 この日の雨模様は、 🐇くんの心模様を表していた のかもしれませんね☺️
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