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真実を知った俺は、 奥出に謝った。

事は終息に向かおうとしている。

奥出

さあ、約束を守る時が来たわ。あなたの願いは何かしら

拓斗

約束? それはもう話してもらったじゃないか

奥出

今話したことは約束に含まれないわよ。だから、新しい願いを言ってもらわないと

奥出は最初から、 真実を話そうと決めていた。

ということは、 俺との約束など、 最初から意味のないものだったということだ。

拓斗

うーん、もう知りたいことを知れたから満足なんだが、どうしようか

奥出

別に今日中に決めなくてもいいわ。こういうのは急ぐものでもないでしょ?

拓斗

そうだな、じゃあ、お言葉に甘えて、後日にしてもいいか?

奥出は小さく頷いた。

俺の気持ちを伝えてもいいのだろうか。

友人

拓斗、浮かない顔をしているね

拓斗

全てが終わって、なんだか暇になったんだよ

友人

それは本当に暇だからそうなっているのかな? 僕はそうは思わないけど

最後の日から二日が経過した。

俺はまだ願いを決めきれていない。

拓斗

他に何だって言うんだよ。俺は案外、あの一連の出来事を楽しんでいたのかもしれないな

友人

それはいいことじゃないか。大変なことには変わりなかったけど

拓斗

解決したら解決したで、なんか心に穴が開いたような気がするんだよ

俺の感覚がなんだかおかしい。

事件は解決したのに、 心のもやもやが晴れない。

友人

あれから生徒会長とはどうなったんだい?

拓斗

どうなったもこうなったもない、連絡先は交換しているから、たまに連絡がくるぐらいかな

友人

ほう、内容は?

やけに聞いてくるじゃないか。

俺に関わることだから気になるのだろうか。

拓斗

特別なことは何もない。『おはよう』、『いい天気ですね』、『おやすみ』ぐらいだよ

友人

仲良くなった男女の会話とは思えないね。もっと楽しい話をしたらどうだい?

拓斗

確かに仲良くはなったけど、俺たちはそういう関係じゃないんだぞ?

俺が本気で願ったら、 奥出は拒否せず受け入れてくれるだろうか。

友人

拓斗は少し臆病なところがある。自信を持ってもいいはずなんだけどね

拓斗

別に俺はかっこいいわけでもないし、自慢できることもないんだ。ネガティブになっていくのは必然だろ?

友人

それは君が勝手に思っているだけさ。僕はね、君がとても魅力のある男だってことを知っているよ

他人がどれだけ俺のことを褒めようとも、 心のどこかで、 お世辞なのではないかと怯えている。

拓斗

お前から見て、奥出は俺の事どう思ってるかな

友人

もう少し踏み込んだ関係になりたいと思っているんじゃないかな。彼女とゲームをしていて思ったけれど、君の話をすることが多かったから

拓斗

そうなのか? 俺と関わらなければいけない状況だったから、仕方なく俺の話になったとか、そういうのじゃないのか?

俺は何かと理由をつけて、 自分が期待しないように仕向けている。

期待をすれば裏切られる、 その可能性があることを知っている。

それは期待しなかった場合より、 重くのしかかるのだ。

友人

本当に君は心配性だね。そんなに心配なら、彼女と直接話をすればいいのに。話せばわかる相手だってこと、君が一番理解しているだろう?

拓斗

そうだな……。うじうじしていてもしょうがないよな。でも、俺はこういう感覚初めてだから、怖いんだよ。逆にお前は同じ立場に立ったら、勇敢に行動できるのか?

友人

僕は、どうだろうね

またはぐらかす。

友人はいつもこうだ。

俺は基本、 友人と恋愛話をすることはない。

そもそも、 友人が誰かを好きになったというのを、 聞いたことがない。

拓斗

お前に恋愛感情はあるのか?

友人

またそうやって失礼なことを。あるに決まっているじゃないか。でも、安易に話すものでもないだろう?

拓斗

友達なら何でも話せて当然、までとは言わないけど、少しは興味あるぞ

友人が一瞬、 俺から目をそらした。

友人

正直、初恋というものは既に経験済みだよ

拓斗

マジか、益々興味湧いてきた

友人

さすが男だ。そういう話に食いつくのは本能と言うべきだろうね

誰に恋をしていたのか、 あるいは、 現在進行形でしているのか、 全く見当がつかない。

拓斗

で、その初恋っていつのことだよ

友人

君と出会う前から接点はあったんだ。年上の人なんだけどね

拓斗

ほうほう、先輩というわけか

そんなわけで、 俺は友人の初恋話を聞くことになった。

友人が生まれる前から、 隣に住んでいた家族。

その一人娘は、 よく友人の家に遊びに来ていた。

事業の関係で接点があった二つの家庭は、 一人の男の子の誕生を楽しみにしていた。

少女

生まれてきたら、私の本当の弟のように可愛がってあげたいな

その言葉の通り、 少女は友人が生まれてから、 ほぼ毎日会いに来ていた。

友人が物心ついてからも、 その習慣は変わらなかった。

友人

どうして僕に会いに来てくれるの?

少女

それは、本当の弟みたいに大事だからだよ

少女と友人の歳の差は十歳。

友人は少女の背中を常に追いかけ、 少女はそれを常に受け入れ続けた。

憧れる気持ちが、 いつの間にか恋心へ移行していったのだ。

友人

僕の隣にずっといてね

少女

そんなの、当たり前だよ

これが幼い友人の、 初恋だった。

一通り友人から話を聞いたが、 そんな関係の女の子がいるなら、 俺が気づかないはずがないのだが。

友人

満足したかい?

拓斗

ああ、まあ、いい話だと思うけど、一つ疑問があるんだよ

友人

何かな?

俺と友人が出会ったのは小学三年生の時、 その時からそんな話は聞いたことがなかった。

拓斗

俺が知っている限り、お前の隣の家はずっと空き家じゃないか

友人

そりゃあ、君と出会った日に引っ越していったからね

拓斗

ずっと一緒じゃなかったのかよ

急に引っ越しなんて、 どう考えてもおかしい。

友人

娘さん、引っ越しの一週間前に亡くなったんだ。なんてことない、交通事故だったよ

拓斗

そう、だったのか

友人

僕の両親の車が盗難に遭って、その車に轢かれてね

これは確かに、 安易に話せるものではないな。

拓斗

だからお前は、今でも罪悪感を背負って生きているのか

友人

そうかもしれない。直接は僕たちのせいじゃなくても、遺族は僕たちを見ると思い出してしまうから、離れていったんだ。ここから、僕の家族も、親戚も、『優しく』なって、今に至るってわけさ

拓斗

そういうことだったのか

これが全ての原点で、 あの異様な空気は、 抑えきれない悲しみや悔しさから、 生まれたものだったんだ。

友人

周りからすれば、儚い初恋だと思うよ

拓斗

簡単に儚いという言葉で片付けられるものでもないだろ

友人

でも、僕はもうそれでいいと思うんだ。深く考えても、もう彼女は戻ってこないのだから
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