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ヴァネス
（…空気が…変わった？）
メラ
ぅおらっ！
ヴァネス
うおっ！
ヴァネス
（荒々しい振り…！ほんとコイツ、基礎も才能もねえ！）
ヴァネス
ほら来いよ！オラァ！
メラ
んな振り、当たんねーよ！
メラ
メラは…早くアンタの震えて泣いて生きたいって願う歪んだ顔が見たい！
メラ
死ね！死ね！死ね！
ヴァネス
（ほんとにめちゃくちゃな戦い方だ！）
ヴァネス
つーか…生きたいって願う？なんだよそれっ！
ヴァネスは斧をメラにブン投げ、金槌を即座に振る
しかしその金槌を、メラは受け止める
メラ
…へ、えへっ♡
ヴァネス
…っひ……お、おまえ……
ヴァネス
（っなのに強行突破がめちゃくちゃうまい！）
メラ
あ〜。痛いなぁ、痛いなぁ右手
メラ
金槌は痛いよぉ。衝撃、受け止めきれないよ
メラ
うふふ、ふ、ふふ
ヴァネス
ま、待て、待って
メラはくるりと金槌を手に取り、ヴァネスに振り翳す
メラ
はい、おしまい─────
ヴァネス
───っ…！
…
…
ヴァネス
…っ……
ヴァネス
…？
パッと顔を上げるとメラは笑っている
ヴァネス
はっ…？
メラ
ねえ、お話しする？ヴァネスくん。
ヴァネス
……え？
メラ
きみの話、聞いてあげる
メラ
メラねー、相談ってされてみたかったんだ！
メラ
ね、話してよ！
ヴァネスはただ恐怖に催促され、全てを吐き出した
メラ
…ふーん
メラ
ヴァネスのお母さんは優しかったんだね。
ヴァネス
…ああ、そーだよ
メラ
頑張ったねーヴァネスくーん
メラにポンと頭を撫でられ、ヴァネスは自然に視界を潤ませた
ヴァネス
（ば、ばか俺！女の子の前で泣くな！）
ヴァネス
（…でも…この子いい子だな、きっと）
ヴァネス
（何か理由があってこんな戦いしてるんだ…）
ヴァネス
（俺が連れ出してあげればいいんだ！お茶でも誘って…）
ヴァネス
ははっ、なんかありがとな、ほんとだったら今頃俺はアンタに殺され────
そうして顔を上げた瞬間、ヴァネスは口角を引き攣らせた
ヴァネス
うあ゙ぁ！！危ねえ…！な、なんだよ！
メラが金槌を構えてヴァネスを見下ろしていたからだ
メラ
…あは☆お話…ありがとー♡
メラ
でもきみって…メラより幸せだよね？
メラ
だってお母さんは優しいし、教会への恨みはあっても孤独じゃない。
メラ
今だって雇ってもらえてる。だから─────
ヴァネス
うぉ待て待て待て待て！
ヴァネス
お前だってよく分かんないけどアメリア様？に拾われて今幸せなんじゃねーの！？
ヴァネスは必死の思いで斧を拾い、それで攻撃を防ぐ
メラ
…あ、そうだった♡
メラ
うん、今…メラは幸せ
メラ
じゃあいっか…ねえヴァネス、きみ生きたい？
ヴァネス
い、生きたい生きたい！！マジ！！お前の言うことなんでも────
メラ
───なんでも？
メラ
意思弱っ、そこで他人に命乞いするようなやつだからダメなんだよ
メラ
分かる？教会への恨みはあっても…ヴァネスって結局自分のことが大切なんだよ
メラ
今お前の本性が見えたじゃん。お前は自分の"快"の感情に弱いんだ
メラ
復讐のために今いる組織に命を懸けられていたらこうはならない。
ヴァネス
そ、そんな…なぁ、
メラ
つか別にメラ、お前いらないし。
ヴァネス
えっ──────
眼前で、1人の少女が金槌を振り翳す─────。
それがヴァネスが最期に観た光景だった。
テヘル
（…？なんか足音聞こえんな…）
テヘル
（まさかまだ追っ手が───！）
注意散漫！
テヘル
！
テヘル
（気づいてない…？それとも分かってるからの無視か？）
テヘル
（いやでも────）
止まれ、ロペ。
テヘル
（！コイツ、空気が変わっ…）
誰かが…近づいてきてるね
早めに…殺ぉす。
ビリリと痺れるような空気が場を満たす
テヘル
ハッ…やってみろ
テヘルの額から汗が一滴流れ、ぽたりと垂れる
ハァッ！
…
2人が同時に飛びついてくる
テヘル
っ…！
テヘルはくるりと身体を回し、スレスレで回避する
今、耐えたと思ったでしょ。
テヘル
！
テヘル
（あ、ヤバい、応えらんな───）
猛スピードで近づく敵。咄嗟にテヘルは目を閉じた。
ばか！
テヘル
！
大きな破壊音とともにその声が聞こえる
きゃっ！？
もー…
目を閉じていても、テヘルにはその声の主が明らかであった
テヘル
っ…アイク！？お前、なんで───！
テヘル
（だけど足音はたしかこっちから…）
チラリと扉を覗き見る
ちょうどそのとき、その扉の開く音がした
テヘル
！
サミュエル
テヘル─────
瞬間、テヘルはアイザックに胸ぐらを掴まれる
テヘル
！？
アイザック
ばかテヘル！何、敗けそうになってんだよ！！
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