高城寛貴(所長)
一通りの準備を終えて
所長が芹沢さんに問いかける
芹沢大和
芹沢大和
芹沢さんが調べた情報によれば
二人は同じ高校に通っていて
彼女が家に戻らなくなった5月11日の朝
酷く妹を罵倒する兄の姿が目撃されていた
そこから捜索願いが出されるまでの二ヶ月半
兄は何食わぬ顔で学校に通っていたが
彼女のことがニュースで取り上げられて以降は
どこか落ち着かない様子だった
学校で担任から妹のことを訪ねられた際にも
井川静(じん)
最初はそう答えていたが
ニュースで報道されてからは態度が一変し
井川静(じん)
涙ながらにそう呟いていた
しかしそれは、ただ妹を思う兄の姿ではなく
同級生達の目には異様な光景に見えたと言う
元々クラスでも浮いた存在だったあすみさんの兄
その兄の涙ながらの言葉は
どこか嘘臭く芝居じみているようだった
彼女が保護されてからもそれはかわらず
井川静(じん)
嬉しそうに語るその姿もまた
正常のそれとは違うものに見えたと
同級生達は語ってくれたようだ
沢田マリカ
高城寛貴(所長)
芹沢大和
芹沢大和
あすみさんの同級生にも話を聞いたが
彼女が話している姿を見た人は少なく
いつの頃からか言葉を発しなくなったが
誰もそれが失声だとは思っていなかった
彼女の友達が誰かを聞いて回った際にも
女子生徒
ほぼ全ての生徒が同じような証言をしている
でもいじめられていたと言う話はなく
彼女には"話しかけづらい雰囲気"があり
誰も声をかけていなかったと言う話だった
家に戻ったあすみさんが外に出た形跡はなく
彼女が来ていないことを誰も気にしていない様子だったようだ
受験生の兄は普段通りに学校に行っているらしいが
授業が終わるとそそくさと帰宅し
夕方の四時前には家に戻ってしまうことがわかった
その時間に母親が出掛けるようだが
これでは彼女が一人になる時間はゼロに等しい
芹沢大和
沢田マリカ
芹沢大和
沢田マリカ
沢田マリカ
芹沢さんの言葉に驚きを隠せなかった
兄は今も彼女に性的虐待を加えている可能性がある
それなのに……
三村優真
三村優真
三村優真
芹沢大和
三村優真
高城寛貴(所長)
それは芹沢さんが隣人から得た証言だった
ある日の夜、井川家から微かに人の声が聞こえてきた
それは女性の呻き声が聞こえていた時間帯
三日ほど前から聞こえなくなった呻き声の代わりに
微かに若い男性の声が聞こえたと言うのだ
若い男性の声
若い男性の声
若い男性の声
聞こえた声の感じから
隣人は声の主が兄ではないか?と推測していた
更に隣人は言葉の内容から兄への虐待も疑ったが
母親と関わりたくないと思う気持ちから
通報には至らなかったようだ
もし本当に命令されて虐待をしていたのだとしたら
きっと兄も傷ついている
助けたいと思う芹沢さんの気持ちもわかる気がした
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