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わぁぁ…😢😢 最後の表現がなんとも素敵で、感じたことの無い温かい気持ちになりました… 歳を重ねるに連れ、お互いすれ違ったり、表面上では素直になれない弟くんも実はお兄ちゃんの事を1番に思っているんだなと知ると「あぁ、兄弟っていうのは目には見えない糸で繋がっているものなんだな」と感じることができました😌 その糸の代わりというか、兄弟を繋いだものが靴下という事なんですね!
この作品好きだー!! お互いの視点から物語を見られて良かった
工夫がたくさんされていて、とても面白かったです!ものすごく感動しちゃいました!また感動系のお話書いてほしいです!
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
僕が小学6年生、弟が小学4年生
2歳差の兄弟として僕達は育った
好きな食べ物も、趣味も同じで
たった1つ違うのは
僕が病弱だってこと
僕
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
僕
いつの間にか
弟は運動神経抜群になっていた
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
最近、弟は悩んだような顔をする
僕に打ち明けてくれる...筈無いか
いつからだろう
変わってしまったのは
僕
ここ最近、呼吸が苦しくなってる
だけど、それ以上に苦しいのは
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
弟は僕のことを
『お前』と呼ぶようになった
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
初耳だった
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
僕が中学3年生、弟が中学1年生
間に入ったヒビが
苦しくて苦しくてしょうがなかった
そしてその3日後
僕は入院することになった
入院も3週間目
見舞いに来てくれた母さんに
僕はいつものように質問する
僕
母さん
僕
母さん
母さん
母さん
僕
僕
僕
僕
母さん
あの日から、僕と弟の間の溝は
全く埋まらなかった
数日後までは
僕
僕
諦めたくなかった
諦めるつもりなんてなかった
弟(優輝)
僕
僕
僕
弟(優輝)
僕
僕
弟(優輝)
僕
無言でベッドの側に立つ弟
何かを躊躇ってるみたいな顔で
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
声変わりも終わった、低い声で
兄ちゃん、でも、お前、でもなく
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
出てきたのは、マフラーだった
値札が付いたままの
僕
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
値札のことは
黙ってることにした
僕
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
僕
弟(優輝)
弟がたまに見せる
少し苦しそうな表情が、僕は辛い
僕が危篤に陥ったのは
5日後のことだった
身体に重りが巻き付いて
上手く動かせないような
苦しくて、声を出したいのに
喉から漏れるのは細い空気だけ
目を開けると、 白い天井が目に入った
僕
近くから聞こえる声に耳を傾けた
母さん
弟(優輝)
弟(優輝)
弟(優輝)
弟(優輝)
弟(優輝)
母さん
弟(優輝)
弟(優輝)
母さん
僕
声が出ない
弟(優輝)
ただ
少しずつ元通りになっていく視界で
優輝の瞳が濡れて光った
その一週間後
僕
僕
弟(優輝)
僕
僕
弟(優輝)
僕
僕
弟(優輝)
弟の瞳が濡れていたことは
僕
秘密にしておくことにした
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
伏せられたその表情からは
どんな事かよくわからない
最近、また弟のポーカーフェイスが 上手くなったと思う
弟(優輝)
僕
頷いた弟が取り出したのは
弟(優輝)
少し不格好な
僕
靴下だった
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
僕
弟(優輝)
弟(優輝)
弟(優輝)
僕
僕
弟(優輝)
わかるよ
兄だから
喜んでくれてるってわかるよ
僕
僕
それから、3日後のことだった
夜中、急に息が出来なくなって
僕
僕
息を吸っても、肺に溜まらない
ナースコールを押そうとすれば
先に、弟が――
優輝がくれた靴下が目に入った
僕
口元から飛び散った紅いものが
パッと白いシーツに華を咲かす
僕
僕
震える手を伸ばし、靴下を手に取る
手がぶつかって、写真立てが落ちた
僕
だんだんと曖昧になる感覚の中で
強く
強く
強く
優輝がくれた靴下を握った
・ ・ ・
俺
兄ちゃん(涼)
俺
兄ちゃん(涼)
俺
俺
兄ちゃん(涼)
兄ちゃんが小6、俺が小4
2歳差の兄弟
この頃には既に、親から
兄が長く生きられないことを
なんとなく聞かされていた
兄ちゃん(涼)
俺
兄ちゃん(涼)
俺
兄ちゃん(涼)
兄ちゃん(涼)
また、やってしまった と思う事が
成長するにつれ増えていった
俺
兄ちゃん(涼)
俺
俺
最近、 兄ちゃんとどう接すればいいのか
よくわからない
気まずくなっちゃうよな、きっと
いつからだろう
俺が 素直になれなくなったのは
アイツ(涼)
ここ最近、アイツは苦しそうだ
だけど、もっと 苦しませてしまっているのは
俺だ
俺
アイツ(涼)
俺
アイツ(涼)
俺
思ってもない言葉が口から漏れる
嫌な事があると、 兄に当たるようになっていた
アイツ(涼)
俺
俺
アイツ(涼)
口を滑らしてしまった
俺
俺
アイツ(涼)
俺
アイツ(涼)
アイツが中学3年生、俺が中学1年生
俺のせいで生まれたヒビが
どうしようも出来なくて辛かった
そしてその3日後
アイツは入院することになった
俺
母さんが病院から帰ってくると
開口一番に それを訊ねるようになった
母さん
母さん
俺
母さん
俺
母さん
母さん
俺
抑えられない苛立ちは
他でもない、自分に向けた物だ
俺
俺
母さん
俺
母さん
俺
俺
母さん
母さん
俺
母さん
昨日の母さんの言葉を思い返す
俺
手にした袋が鉛みたいだ
無地のマフラーなんて、
そもそも喜んでもらえるのか
俺
ベッドの上の兄に声をかけた
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
無言でベッドの側に立った
兄貴(涼)
少し痩せた頬を見ていられない
俺
俺
兄貴(涼)
ただ単に、呼びたかったから
兄ちゃん、でも、お前、でもなく
俺
俺
俺
兄貴(涼)
俺
丁寧に袋が開けられ 中からマフラーが出てくる
なぜか兄貴は吹き出した
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
俺
俺
俺
照れくさくて
病室から 逃げ出してしまいそうだった
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
俺は知ってるのに
つい本音を言ってしまった
俺
俺
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
兄貴の優しい瞳を見てると
罪悪感に襲われる
5日後のことだった
兄貴が、危篤に陥ったのは
血の気の失せた顔
このまま兄貴が死んじゃうなんて 思いたくなくて
だけど兄貴を見てるとどうしても
最悪の想像が止まらなくて
気が付けば、口を開いていた
俺
母さん
俺
俺
母さん
俺
どこかでわかっていたんだと思う
兄貴がもう長くないことも
だから
俺
俺
俺
勝手に危篤になって
勝手に向こうにいくつもりかよ
そういうつもりだったけど
俺
俺の素直になれない部分が 勝手に一言を付け足していた
母さん
俺
俺
今すぐ帰らないと
堪えきれなくなりそうだった
母さん
ギリギリまで膨れ上がった 目元の水に気付かれないよう
俺
俺は病室を飛び出した
少しずつ滲んでいく視界で
雫が廊下に落ちたのが見えた
その1週間後
眠っている兄貴の顔を見る
俺
俺
俺
袋をギュット握った時
兄貴がゆっくりと目を開けた
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
俺が泣いていたことは
兄貴(涼)
秘密にしておくことにした
兄貴(涼)
俺
俺
兄貴(涼)
俺
俺
兄貴(涼)
俺
不思議そうなその表情からは
何も知らないのがわかった
そしたら...... 俺が言うべきことじゃない
俺
兄貴(涼)
女子にからかわれながらも作った それを取り出す
俺
それを見た兄貴は
兄貴(涼)
前よりも弱々しく笑った
俺
俺
兄貴(涼)
俺
兄貴(涼)
俺
俺
俺
兄貴(涼)
兄貴(涼)
俺
わかるよ
弟だから
兄貴が喜んでくれてるってわかるよ
俺
俺
その3日後だった
夜中に病院から電話が掛かって
兄貴の死を知らされた
母さん
泣いてる母さんを見ていられなくて
俺
母さん
つい、 ぶっきらぼうになってしまった
病室につくと
泊まりがけで 仕事に行っていた父さんが
ゆっくりとこちらを向いた
その瞳は既に、濡れて赤かった
それよりも先に目に入ったのは
くしゃっとなった靴下と
ヒビの入った写真立て
『僕の宝物だね』
兄貴の声が蘇り、一瞬にして
俺の視界は虹色になった
俺
俺
俺
やるせない感情は
沸き上がる度に雫となって落ちる
最後に言いたかったことなんて 数えきれない程あるのに
兄貴はそれを 俺に言わせてくれなかった
俺
返事をしない兄貴に向かって
心の中で伝えようとする
俺
俺
俺
俺
溢れた嗚咽が誰のものなのか
俺は気にする余裕もなく
涙を止めようとするだけで 精一杯だった
あれから2年後
俺は今日から高校生
俺
母さん
俺
兄貴がつけていた日記の1頁を 思い出す
○月△日 今日は優輝から靴下を貰った もし僕が死んだら、棺に入れられるのかな? それは勿体無いな... もしも家族が、優輝が良いのなら あの靴下は――
兄貴はきっと
自分が長くないことも
残された俺達のことも
きっと全部わかっていたのだと...
俺
兄貴の分の返事は無い
でも
写真の隣に置かれた靴下が
風に吹かれて微かに揺れた
Fin