改めて乗れたのは、結局もう1本遅らせたバスだった。
これだけ見送っても、まだロスした時間は1時間半程度なのだから、奇跡なのではないか。
美穂から、田舎は1日に数本しかバスが出ないと、あらかじめ脅されていたから、身構えができていたのかも。
ミホ
いやぁ、ごめんねー。

ミホ
結果的にバスを数本も遅らせることになっちゃった。

リュウセイ
僕としては、ここで美穂とはぐれるほうがよっぽど怖いから、少しくらい予定が狂っても大丈夫だよ。

ミホ
まぁ、そう言ってくれると思ったけどさ。

リュウセイ
確信犯ってやつか……。

ミホ
まぁ、帰ったらしっかり埋め合わせするから。

まだ出発までは時間が多少あるようで、最初こそリュウセイ達しかいなかったはずのバスも、少しずつ埋まっていく。
若い男
運転手さん、雨ひどいけど大丈夫そう?

若い男
これ、ちゃんと隣町の駅前まで行ける?

バスに乗ってくるなり、髪の毛を白に近い金に染めた男が、運転席に向かって問う。
それに対して、運転手は運転席に座ったまま、バスないのマイクをオンにした。
運転手
はい、問題ありませんよ。

運転手
こちらの便は通常通り運行しております。

若い男
そうか、じゃあ大丈夫だな。

会話の流れで説明すべきと考えたのか、運転手は会話の相手を男から車内へと切り替える。
運転手
えー、本日は当バスをご利用いただきありがとうございます。

運転手
現在、豪雨により道は悪くなっておりますが、現状では問題なく、バスは予定通りのルートにて走行する予定になっております。

運転手
なお、この雨ですから、ダイヤに多少の乱れが生じるおそれがございます。

運転手
あらかじめご了承ください。

リュウセイ
――雨、酷くなるみたいだけど、とりあえず普通に運行はしてくれるみたいだね。

ミホ
うん、ただ……あそこの峠、大丈夫かな?

リュウセイ
峠?

ミホ
うん、ほら――ここにくる前にも峠をひとつ越えてきたでしょ?

リュウセイ
あぁ、あの割りかし道が狭くなるところがある。

ミホ
そうそう、あそこって雨が酷いと見通しが悪くなって、よく事故が起きるの。

ミホ
それに、あの辺りは山を削って作った道だから、そもそもの地盤がゆるくて、落石なんかもしょっちゅうなんだよね。

中学生くらいの女の子
あの、それって本当ですか?

ふと、通路を挟んだ反対側の席に座った女の子から声をかけられた。
ミホ
あ、でも実際に落石が直撃したとか、それで誰かが亡くなったって話は聞かないかも。

ミホ
ただ、道路に大きな石が転がっていたりはするみたいだけど。

中学生くらいの女の子
良かったぁ。

中学生くらいの女の子
もし、そんなことが起きたらどうしようかと思った。

ミホ
ふふっ、心配いらないよ。

ミホ
落石が直撃する確率なんて、隕石が降って来て直撃するみたいなものだから、宝くじを当てるより難しいんじゃないかな?

中学生くらいの女の子
そうなんだぁ。

中学生くらいの女の子
凛、アイドルのお仕事をこれからするから、落石で死んじゃったらどうしようと思って。

ミホ
ごめんね、怖がらせちゃったかな?

ミホ
ってか、アイドルやってるの?

中学生くらいの女の子
うん、これから本格的にお仕事するんだ。

ミホ
じゃあ、有名になるまえに握手してもらおうかな?

中学生くらいの女の子
うん、いいよ。
