流星side
次の日から授業が始まる。 編入のため、もうクラスは何組かのグループができていた。 僕は特に紹介されるわけでもなく... コソッとクラスに入っていく。
ガラッ...
静かにドアを開けたつもりが、 初めましての僕をみんなが見てくる。
女子学生
めっちゃ可愛くない?
女子学生
男子学生
誰か話しかけに来るのかな?と思ったが、 みんな陰でこそこそ僕のことを噂するだけ。
まぁ、そんなもんだよね。
いまは私服だからか、誰も僕を男の子なんて思ってない。
そんなことを無視していると、先生がやってきて 授業が始まる。
2年生からとのことで、ある程度授業内容は進んでいた。 勉学は少し得意な僕は予習もし、ある程度はついていける。 そこは持ち前の頭脳に感謝した。
けれど...
先生
早速実習を行います。
準備しておくように。
僕の1番恐れていた、実習が始まろうとしていた。 お菓子屋の息子なのに、全くと言っていいほど お菓子を作ったことがない。 こればかりは本を読んでも、どれだけ勉強しても... 全くと言っていいほど分からない。
ここは思いきって... 誰かに教えて貰うか。
そう思って声をかけようとすると
流星
女子学生
声かけられちゃった!
めっちゃ可愛いっ!
女子学生
編入したってことは...
腕もプロ級って噂だよ。
女子学生
腕もいいなんて...
羨ましすぎる。
女子学生
勉強させて下さい!
流星
う、うん。
やばい。誰も相手にしてくれないどころか 変な噂まで立ってる。
どうしよう... これは夜、特訓をするしかない。
そう思って、学校が終わった後 僕は実習室で1人で明日の練習に取り組んだ。
流星
生クリームの泡立て...?
なんだ。簡単そう。 だって生クリームをシャカシャカ泡立てるだけ。 こんなの混ぜてればできるでしょ。 そう思って、少し安心した気持ちで始めてみると...
カシャカシャカシャ...
流星
カシャカシャカシャ...
流星
もしかして
何か入れるのかな?
甘いから砂糖...?
そう思って目分量で砂糖を入れる。
うーんちょっと泡立った?
カシャカシャカシャ...
流星
さっきまで泡立ってたのに
ボソボソになってる...。
どこで間違えたんだろ?
教科書を見るけれど...全く分からない。
その後何回か繰り返したが、コツが掴めず...
流星
みんなの前で
恥かくの嫌だなぁ...。
と弱音を吐くしかない僕。 目の前のクリームはボソボソだけど...
ペロッと舐めると、甘くて...優しい味がした。
大吾
やってるん?
すると、急に目の前に男の人が現れた。 物音ひとつせず僕の前に。
流星
な、なんですかっ!
大吾
こんなにクリーム
ダメにしちゃって笑
ホンマに
製菓学校の2年生か?笑
流星
あなたに関係ないっ!
大吾
俺の事を見える生徒。
俺がクリームの扱い方
教えてあげるわ。
そう言うと、男性は僕の後ろに周り 手を添えながら教えてくれる。
大吾
種類があるねん。動物性と
植物性、乳脂肪分の割合。
そこは知っとるか?
流星
大吾
乳脂肪分が高いほど
泡立ちやすくて
分離しやすい。だから...
そう言って一緒に泡立て器を持ち、道具の当て方や クリームの見極め、砂糖の量など...細かく教えてくれる。 こんなの教科書には載ってない。 すごく...分かりやすい。
そうしているうちに...
流星
めっちゃ綺麗にできた!
見た目は理想の硬さの、綺麗な生クリーム。
大吾
味もいいんやで?
食べてみると... フワッと溶けて、でも少し弾力もあって。 甘さもすごく丁度いい。 こんなクリーム、僕にも作れたんだ。
流星
ありがとうございます!
えっと...あなたは何年生?
4年生とか?
大吾
んー説明が難しいけど
クリームの妖精的な?
何を言ってるんだこの人は。 不思議な人もいるもんだなぁと思っていた。
流星
明日も、明後日も!
僕の練習に付き合ってて
もらえませんか?
クリームの妖精さん。
大吾
ええよ。可愛いから。
明日も明後日も。
大吾
生クリームを使う
お菓子専門やで?
流星
よろしくお願いします!
この学校には優しい先輩もいるんだなぁ。 そしてなんか、かっこいいし...。
これからも、なんか頑張れそう...。 僕の心にちょっとだけ光が差し込んだ瞬間だった。