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勾留八日目
最高気温31.8度のこの日もまた
私は警察署に向かっていた
昨日よりはわずかに低い気温
それでもうだるような暑さを感じる
沢田マリカ
それでも私は足を止めることなく
警察署へと向かう
今のところ家族の面会もなく
寂しくないのか?と疑問を抱いたが
三村優真
三村優真
被害者のことを話している時とは違い
まるで別人のような冷たい目に
ほんの少し背筋が凍る
三村優真
沢田マリカ
2010年6月22日(火)
彼女を拉致してから六週間
彼女がここに来てから一ヶ月半が経過しようとしていた
相変わらず失声の続く彼女との会話は
三村の用意した筆談ボードで行っていたが
頷いたり首を横に振るだけでも成り立っていた
この頃になると
彼女の方から何かを伝えたり
彼女の方から愛情表現をする回数が増え
時々、一緒に入浴をした際には
お互いの背中を流したり
寝る前にもお互いの背中をマッサージしたり
彼女にとってそれは
やっと訪れた平穏な時間だったのかもしれない
三村優真
三村の言葉に笑顔で頷き
三村に全てをさらけ出す彼女の姿は
一ヶ月半前の震えて泣いていた頃とは別人のようだった
三村優真
「うん」
三村優真
「どうして何度も聞くの?」
三村優真
三村優真
三村優真
三村優真
三村優真
三村優真
「大丈夫だよ」
「私は苦しくないし」
「むしろうれしい」
三村優真
「だってこうしていれば」
「あなたのそばにいられるから」
三村優真
三村は彼女を抱き寄せると
三村優真
三村優真
唇に熱いキスをした
頬
首筋
胸元
腰
太股
そっと触れる唇の感触に
恥ずかしそうに頬を赤らめる彼女
三村優真
三村優真
三村優真
その言葉に反応したのか
彼女の身体は徐々に熱くなり
わずかな振動にも敏感になっていく
もし声を出すことができていたら
彼女はどんな言葉を発したのだろうか?
「あなたのそばにいられるから」
まるで本当の恋人同士のような言葉
家に帰りたくないと言う理由だけでは
きっとこんな言葉は出てこないはず
池長巡査の言うような
ストックホルム症候群の可能性もあり得る
でも私には
それとは違う強い絆のようなものが
そこにある気がしていた