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あの日あの時

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あの日あの時

2 - あつい日。

♥

570

2019年11月30日

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吉岡 鈴

あちー

吉岡 鈴

涼しくなること
言ってよ

吉岡 鈴

涼だけに

一ノ瀬 涼

つまんな

吉岡 鈴

鼻で笑うな!

昼休みの校舎裏。

私は芝生に寝そべり、

涼は座りながら、下敷きで首元を あおいでいた。

その額には、じんわりと汗が 滲み出ている。

一ノ瀬 涼

いいよ、涼しくなる
こと言ってあげる

そう言なり涼は、いきなり厳しい 表情になった。

一ノ瀬 涼

むかーし昔

一ノ瀬 涼

あるところに、老人
夫婦2人がいました

吉岡 鈴

待って待って

吉岡 鈴

怖いやつじゃん絶対!

そう叫んで、すぐさま耳を塞ぎこむ。

一ノ瀬 涼

婆さんが川へ行くと、

一ノ瀬 涼

なんとそこには尻の
形をした桃色の物体が…!

吉岡 鈴

……

一ノ瀬 涼

……

吉岡 鈴

ただの桃太郎
じゃんっ!

ガバッと起き上がって、不服そうに 眉を釣り上げた。

一ノ瀬 涼

涼しくなった?

吉岡 鈴

ならないっ!

吉岡 鈴

あーもう、怖がって
損した

吉岡 鈴

ジュース買ってくる

一ノ瀬 涼

いってらっしゃーい

一ノ瀬 涼

うわっ

首元に何か冷たいものが押し当て られ、思わず声が出た。

吉岡 鈴

あははっ!!

振り返ると、ペットボトルを 持った鈴が

口を大きく開いて笑っていた。

吉岡 鈴

思ったより反応
よかったー

吉岡 鈴

はい、これあげる

そう微笑んで、ボトルを差し出した。

一ノ瀬 涼

……

一ノ瀬 涼

ありがとう

ボトルを受け取る。

笑われたのはムカついたが、

お礼は言わなければ人としてあれ なので言っておいた。

乾いていたのどを、一気に飲んで 潤していく。

一ノ瀬 涼

ぷはーっ

一ノ瀬 涼

うまいね、これ

一ノ瀬 涼

で、何円だった?

吉岡 鈴

私の奢りだよー

一ノ瀬 涼

は!?

吉岡 鈴

あげるって言ったでしょ

一ノ瀬 涼

でも

吉岡 鈴

いいからいいから

そう言うと鈴は、俺の隣に腰をかけた

ふと視線を下げると

鈴の手には何も握られて いなかった。

一ノ瀬 涼

てか、鈴の飲み物は?

一ノ瀬 涼

何で俺の分だけ買って

一ノ瀬 涼

鈴は買ってないの?

吉岡 鈴

私は別にいいかなって
思って

吉岡 鈴

でもたしかに、
のど乾いてきたなー

吉岡 鈴

買いたいけどお金もう
無くなっちゃったし

吉岡 鈴

どうしよー

鈴は大げさに悲しんでみせた。

全てが分かり、目を大きく見開いて 鈴を見たが

なんだか少し気恥ずかしくなって、 ゆっくりと視線を逸らした。

一ノ瀬 涼

……

一ノ瀬 涼

仕返し。

吉岡 鈴

うわ!!

鈴の頬に、まだひんやりと冷たい ペットボトルを押し当てた。

吉岡 鈴

何すんだよー

鈴は怒りながら、頬をさする。

一ノ瀬 涼

そんな回りくどい
ことしないで

一ノ瀬 涼

間接キスしたいなら
したいって言えばいい
のに。

一ノ瀬 涼

はい、これどーぞ

半分ほど飲んでしまったペットボトルを、鈴に差し出す。

鈴は花が咲いたように、キラキラと した笑顔をみせた。

吉岡 鈴

ありがとう

吉岡 鈴

一回恋人同士で
してみたかったんだよ〜

吉岡 鈴

…恋人同士で!

一ノ瀬 涼

強調しなくていいから

鈴はボトルの残りを、一気に 飲み干した。

吉岡 鈴

カーッ

一ノ瀬 涼

おっさんかよ

吉岡 鈴

へへ、

吉岡 鈴

おいしいね、これ

鈴は満足気な表情で、にこにこと 笑った。

一ノ瀬 涼

…うん。

つられて俺も、ふにゃりと笑う。

一ノ瀬 涼

教室、戻ろっか。

夏の太陽は、俺たちをキラキラと 照らし出していた。

教室へと戻る背では

止まない蝉の鳴き声が、青空に 吸い込まれていた。

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