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秘密の時間、午前零時

第1話 - 秘密の時間、午前零時

2018年09月19日

#恋愛

#告白

#中編

月影光

来夢

こんばんは、真咲さん

来夢

午前零時ですよ

真咲

またあなたですか

真咲

今日は何の話を聞かせてくれるんですか？

来夢

今日は、夜空の話です

真咲

夜空の話…？

来夢

ええ、夜空です

来夢

真咲さんは、夜空はお好きですか？

真咲

とても好きです！

真咲

キラキラした星も、綺麗に光る月も、暗い空も、全部好きです！

来夢

そうですか、それはよかった

来夢

先日、夜中に夜空が見たくて近くの川へ出かけたのです

来夢

そしたらとても綺麗な、満天の星を見ることができました

真咲

ホントですか！

真咲

私も見てみたいなぁー…

来夢

真咲さんも、病気が良くなれば夜空を見ることができますよ

来夢

もしよければ真咲さんの病気が治った時に、僕と一緒に夜空を見に行きませんか？

真咲

えっ、いいんですか？

来夢

はい、もちろんです

真咲

わー、ありがとうございます！

来夢

いえいえ

真咲

それで、お話の続きは？

来夢

ええ、それから…

数十分後

真咲

お話屋さん、今日もありがとうございました

来夢

いえいえ、これが僕の仕事ですからね。

真咲

また次のお話し、楽しみにしてますね！

来夢

はい。では真咲さん、おやすみなさい

数日後

来夢

こんばんは、真咲さん

来夢

午前零時ですよ

真咲

お話屋さん…

来夢

どうかされましたか？

真咲

あ、いえ

真咲

なんでもないです…

来夢

僕でよければ、お話聞きますよ？

真咲

あの

真咲

私、好きな人がいるんです

来夢

ほう

真咲

その人、いつも私に優しくしてくれて、面白いことをいっぱい教えてくれて

来夢

とても素敵な方ですね

真咲

でもその人、実は一度しかちゃんと会ったことないし、いつも話してくれるのは、こういうメール機能でしか話してくれなくて…

来夢

それは、とても悲しいですね

真咲

その人と話してると、病気のことも忘れられて凄く楽しいし、どこか病院の外へ出かけてる気分になれるんです。

真咲

だから、その人との話が終われば、また私は病院のベッドに縛り付けられた病人に戻ってしまうんです

来夢

つまり、その方がいればずっといいのに、とでも思ってらっしゃるんですかね？

真咲

はい

真咲

けどその人、絶対に私の気持ちに気付いてくれてないです

来夢

そうでしょうか？

来夢

真咲さんはとてもお綺麗ですし、魅力的な女性だと思います。こんな方がいれば、どんな人でも少しくらい心を動かされると思いますよ？

真咲

やっぱり…

来夢

え？

真咲

いえ、なんでもないです

来夢

今日の話どうしますか？

真咲

今日はお話しを聞いてくださったので、それで充分です

来夢

そうですか

来夢

では、僕はこれで

真咲

あ、ちょっと待って！

来夢

なんですか？

真咲

お話屋さん、この前、病気が治ったら一緒に夜空を見に行ってくれるって言いましたよね？

来夢

はい、それがなにか？

真咲

私、最近病気が良くなってきたんです

来夢

そうなのですか！

真咲

もう一週間くらいすれば、外に出ても大丈夫ってお医者様が言ってました

真咲

だから、一緒に夜空を見に行ってもいいですか？

来夢

もちろんです

来夢

来週の午前零時、あなたを迎えに行きます。

来夢

待っててくださいね

真咲

はい、待ってます

来夢

では、今日はこれで

真咲

おやすみなさいです、お話屋さん

一週間後

真咲

お話屋さん、もうすぐ零時です

来夢

そうですね

真咲

楽しみです

来夢

すぐそちらに行きますので、待っててください

真咲

はい

真咲

あっ

来夢

どうかされましたか？

真咲

お医者様が来た…！

真咲

きっと見回りに来たんだ、寝たフリしてないとバレちゃう！

来夢

えっ、大丈夫ですか？

真咲

平気です、寝たフリしてれば問題ないです！

真咲

そのまま迎え来てくださいね！

来夢

わかりました、すぐ行きます

数分後

来夢

真咲さん、迎えに来ましたよ

来夢

真咲さん？

来夢

あれ、いない…

来夢

真咲さん、真咲さん！

来夢

えっ…

来夢

真咲さんがいなくなった…？

来夢

真咲さん、今どこにいるんですか？！

来夢

真咲さん、真咲さん！！！

真咲

お話屋さん

来夢

真咲さん！

来夢

今どこにいるんですか？！

真咲

あの、お話屋さん

真咲

川へ来てください

来夢

えっ

来夢

川って、どうして…？

真咲

いいから、来てください

来夢

わ、わかりました。すぐ行きます！

数分後

来夢

真咲さん！

真咲

お話屋さん、こっちです

来夢

あっ、いた、

来夢

真咲さん！

真咲

お話屋さん、すみません

来夢

よかった、真咲さん無事みたいですね…

来夢

それにしても、どうして病院抜け出したりなんかしたんですか？

真咲

嘘、だから

来夢

え？

真咲

病院が良くなったなんて、嘘なんです。

真咲

本当は悪化してて、今日手術するんです

来夢

えっ、なんでどうして？！

来夢

そんな時に病院抜け出したりしてはダメですよ、早く戻りましょう！

真咲

一緒に、お話屋さんと夜空が見たかったから！

真咲

どうしても、お話屋さんと夜空を見たかったんです…

来夢

真咲さん…

来夢

でも、どうしてそこまで僕なんかと…

来夢

夜空が見たいなら、僕じゃなくても病院の人とも見れたのに…

真咲

月が、綺麗ですね。

来夢

えっ

来夢

真咲さん？

真咲

もう、やっぱり気付いてくれてない…

来夢

一体なんのことですか？

真咲

お話屋さん

真咲

いえ、来夢さん

真咲

私、あなたのことが好きなんです

来夢

えっ？

来夢

でも、真咲さんには好きな方がいるって…

真咲

もーホンットに気付いてくれないんだから！

真咲

私が好きな人は、あなたなんです！

真咲

紛れもない、あなたです！

来夢

えっ…？！

真咲

わざわざ名前を隠してあなたのことを話したのに、全然気付いてくれなくて…

来夢

で、でもなんで僕を…？

真咲

初めて会った時から好きでした

真咲

その綺麗な目も、髪も、

真咲

優しく微笑む顔も、暖かくて大きな手も

真咲

全部全部、好きなんです。あなたのことが

来夢

そんな風に思っててくださったのですね…

来夢

嬉しいです

真咲

え、ホントですか？

真咲

え、あの、えと…

真咲

へ、返事は…？

来夢

それより、早く病院に戻りましょう

来夢

僕の返事より、あなたの手術が先です。

真咲

えぇ、そんなぁ…

来夢

もし、あなたの手術が成功したら、返事をしてさしあげます。

真咲

え、ホントですか！

来夢

はい。手術が終わったら、連絡してください

真咲

でも多分、動けるまで一週間くらいは掛かりますよ…

来夢

そうですか…

来夢

では

来夢

来週の午前零時、あなたを迎えに行きます。

僕はこの後の結末を知っている。

一週間後、無事真咲さんから手術が成功したことを伝えられ

またいつも通り、

秘密の時間、午前零時に

真咲さんという僕の彼女を

迎えに行くのだ。＿＿＿

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月影光

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